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【芸能・社会】

「人生はキャバレー」突き抜ける明るさ シュールな笑いをまぶしたミュージカル!

2017年2月3日 紙面から

華やかなショーを見せるサリー(長澤まさみ、中央)ら「キット・カット・クラブ」の出演者(引地信彦撮影)

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 66年初演でトニー賞6部門に輝いたミュージカル「キャバレー」は、こんなにも笑える作品であったのか。10年ぶり再演も、前回同様、原作に忠実でありながら、ナンセンスな会話を付け加えた上演台本で、松尾スズキが演出した。

 ナチス台頭前夜の1929年、ベルリンの退廃的で怪しげなキャバレー「キット・カット・クラブ」を舞台に、さまざまな人間模様が描かれる。主筋は店のスター、サリー(長澤まさみ)と米国出身の作家の卵クリフ(小池徹平)の恋バナ。

 これにクリフの下宿先の大家シュナイダー(秋山菜津子)、果物屋のシュルツ(小松和重)、娼婦のコスト(平岩紙)らが絡む。真面目なセリフを言いながら、ラッパ状のスピーカーに頭を突っ込むシュナイダー、何の脈絡もなく体をクネクネさせたりするシュルツは、その動態がほとんど芸といえるおかしさだ。

 が、笑いに気を取られていてはいけない。一幕終盤から様相が変わり、二幕では、きな臭い時代が色濃く映し出され、いや応なしに人生の変更が迫られる。「反対の立場をしっかり表明しないと、それは賛成してるってことと同じ…というか、もうそうなってるのかもな」というクリフのセリフが、現在に通じることにハッとさせられる。それでも、突き抜けた明るさで「人生はキャバレー」と歌い上げる勢ぞろいの場面は圧巻だ。

 美しいプロポーションの長澤に華があり、きまじめさが信条の小池といいコンビ。前回と同じ配役の秋山、小松、平岩、それにドイツ人に見えるドイツ人役の村杉蝉之介は、シリアスとナンセンスの自在な出し入れに磨きがかかり、松尾演出の妙を際立たせた。

 語り部的なエムシーの石丸幹二が、抜群の歌で作品の背骨となり、下品なショー場面も上品に盛り上げた。6役にふんし楽器も操る片岡正二郎が実に芸達者。そして、キャバレーの醍醐味(だいごみ)を味わわせてくれたクラブ・ガール、クラブ・ボーイたち、バンドにも惜しみない拍手を送りたい。 (本庄雅之)

 ※東京公演は終了。3日から大阪など各地で。

 

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