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憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めた2014年7月の閣議決定は…
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憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めた2014年7月の閣議決定は、どのようになされたのか。
その一端を示す文書が開示された。内閣法制局が作った国会答弁用の「想定問答」だ。
朝日新聞がその存在を報じてから約1年。法制局は国会からの開示要求を「公開すべき文書ではない」と拒み、本紙の情報公開請求にも応じなかった。
本紙の不服申し立てを受けて、法制局が総務省の情報公開・個人情報保護審査会に諮問。この1月、同審査会が開示すべきだと答申した。
情報公開請求に対して法制局は「長官の最終決裁を終えたもののみが行政文書」だとして、国会で使われなかった想定問答は保存義務のある文書には当たらないと主張してきた。
だが公文書管理法は、その目的を、国の活動について「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」と明記する。それを達成するために「意思決定に至る過程」などの検証ができるよう、経緯も含む文書の作成を行政機関の職員に義務づけている。
総務省の審査会が法制局の主張を「到底採用できない」と退けたのは当然であり支持する。
行政機関が恣意(しい)的な判断で文書を保存するか否かを決めてしまえば、政策決定の是非が検証できなくなる。主権者である国民の判断材料は奪われ、民主主義の土台を掘り崩す。
まして、内閣法制局は「法の番人」と呼ばれてきた。政府提出法案に解釈の誤りや矛盾がないか審査する組織だからだ。
その法制局が公文書管理法の解釈を誤り、文書を開示せず、さらに修正を重ねた文書をその都度保管していなかった。
「法の番人」としての権威を傷つけると同時に、ほかの省庁でも同じような事例がないか、懸念せざるをえない。
あの閣議決定は戦後日本の安全保障政策の大転換だった。それに基づく安保関連法は、歴代の内閣法制局長官を含む、多くの憲法専門家から「違憲」だと指摘された。
どのような検討過程をへて閣議決定に至ったのか。国民の歴史的な検証に堪えられるようにしておく責任が、かかわった政府・与党関係者にはある。
今回の開示を機に、すべての行政機関の職員は公文書を適切に管理する意義を自覚してほしい。日本の歴史を正確に残す重い責務を果たすことなのだ。
与野党で修正案をまとめて公文書管理法を制定した国会も、監視を強めるべきだ。
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