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人間の夢に「色」がついたのは、カラーテレビが普及した後だった!
アメリカ心理学会が驚きの報告

世代間で見る色が違う

夢の色がどのように見えるのか、という興味深い実態調査を行ったのがAPA(アメリカ心理学会)。APAは'93年と'09年の2度にわたって、10代から80代までの被験者を対象にこの調査を行ったところ、どちらの結果も、カラーの夢を見ると答えた被験者の割合は、30歳未満が約80%に対し、60代ではわずか20%程度であったという。

つまり、生まれが'49年以前の者と'63年以降の者とでは夢の色に明確な差があると判明したのだ。

 

この差は一体何か。APAは一つの結論として、「世代間における夢の違いは、カラーテレビの普及によるものだ」という驚きの報告をしたのだ。

そもそもなぜ人は夢を見るのか。睡眠時、脳を構成する神経細胞同士をつなげるシナプスにより記憶の取捨選択が行われる。その際に生じる日々の記憶の「断片」が、夢の素になるのだ。

この記憶の断片には、特にテレビの視覚情報が多く含まれることが判明している。なぜなら人の脳が膨大な情報を瞬時に記憶する作業を行う時、時間あたりで最も情報処理量として大きいのがテレビ視聴であるからだという。そしてテレビ視聴によって記憶するのは、“色”も同じ。この色の記憶も、そのまま日々の夢に反映されるというわけなのだ。

世界初のカラーテレビは'54年1月23日に、アメリカ・NBCで本放送された。APAの実験結果と放送開始のタイミングがちょうど合致していたことから、カラーテレビの存在が夢の色をカラーにした可能性があると断定されたのだ。

ちなみに日本でカラーテレビが本放送されたのは'60年9月10日(ただし、本格的にお茶の間に普及したのは東京オリンピックが開催された'64年のこと)。ちょうど今60~70代の世代が、夢をカラーで見るか白黒で見るかの、境目にあるといえる。

いずれ生まれてくる世代はハイビジョンの美しい夢や、3Dの飛び出す夢を見るのだろうか。(栗)

週刊現代』2017年2月11日号より