tofubeatsの考える個性をつくる時間とは?

“ダンスミュージック”や“インターネット”など既存の枠組みを飛び越え、ポップスという大器さえ自らの個性として取り込まんとするtofubeatsさん。DJやライブでリスナーの前に立つ時以外は、トラックメイカーとして神戸の自宅で楽曲制作を続ける日々を送っています。聴いた人の心を揺さぶる楽曲を生み出すtofubeatsさんのプライベートタイムとは、一体どのような時間なのか。また、そこで形成されるtofubeatsさんが考える“個性”とは?

写真:佐々木俊(SIGNO)
スタイリング:鹿野巧真
ヘアー:リョージ イマイズミ(SIGNO)
取材・文:平井莉生

PROFILE

tofubeats

1990年生まれ、神戸在住。トラックメイカー/DJ。学生時代からインターネットで活動を行いジャンルを問わず様々なアーティストのリミックスやプロデュースや楽曲提供を行う。2013年4月にスマッシュヒットした『水星 feat.オノマトペ大臣』を収録したアルバム『lost decade』を自主制作にて発売。同年秋にはワーナーミュージック内レーベルunBORDEから『Don't Stop The Music』でメジャー・デビュー。2014年10月2日(トーフの日)に、豪華ゲストアーティストを招いたメジャー1stフルアルバム『First Album』を発売。同年、12月には森高千里とのコラボ・アルバム『森高豆腐』をリリース。2015年1月にリミックスアルバム『First Album Remixes』を配信リリース、2月には7インチ・レコード『First Album PVC Vol.1、2』、3月には12インチ・レコード『First Album Remixes』と連続発売。2015年4月1日エイプリルフールにメジャー3rd EP『STAKEHOLDER』をリリース。2015年9月16日にはメジャー2ndアルバム『POSITIVE』を発売した。

無自覚な個性を客観視できた
とき、新たな発見がある。

— tofubeatsさんの考える“個性”についてお聞きしたいと思います。以前、何かのインタビューで「自分で作った曲を、時間をおいて改めて聞くことで自分がそのとき何を考えていたのかを知る」と発言されていたのが印象的でした。自分が作った曲を通して、自分の個性を見つめているということでしょうか。

自分が昔作っていた曲を聞くと『あのときこんなことがあったな』って思い出したり、『こんな風に感じていたのかもしれない』って、思いもよらない発見があるんです。曲を作っているときは締め切りもあって、必死に取り組んでいるのですが、その必死に取り組んだ期間を、時間をおいて客観的に見返すことで自分のことがわかるということにあるとき気がつきました。それからは、曲を作り、そしてそれを聞くことを、カウンセリングのようだと思うようになったんです。自分の曲はすべて自分の人生に紐づいていますから。だからこそ、曲がパッケージングされて世の中に出て行くことってすごく面白いことだなと思っています。ラッパーがよく言う「“韻を踏まなくちゃいけない”とルールによって思いもよらない単語が出てくる」みたいな、“音楽のフォーマットにのせる”という制限があることで、自分の深層が明らかになることがあるんですよ。

— そもそも、tofubeatsさんが考える個性とはどのようなものなのでしょうか。

奇抜であることが個性だと思われがちですけれど、普段自分が選択することひとつひとつが個性だと僕は思っています。無意識に選択しているものや、その積み重ねが個性を形成する。音楽についてもそう。音楽の趣味が似たような人って周りにもいると思うんですけれど、似ているだけで全く一緒ということはないですよね。それまでの人生でどんな曲を聞いてきたかという積み重ねが、その人の個性ですから。自分が意識している個性と、無意識の個性と両方あって、実は無意識の部分の方が影響は大きいんじゃないかなと思うんです。

曲を作る時には、
容れ物としての許容を残す。

— 無意識の積み重なりが個性を形成しているというのは、新たな発見でした。個性は、先天的なものだという認識があったのですが。

人が、個性とは先天的に備わっているものだと思うこと自体が、後天的なことの積み重なりなんじゃないでしょうか。音楽をやっていると、自分が無意識に選択してきたことに気づくことができる。でもそれは、絵を描いていても、文章を描いていても、例えばプレゼン資料を作るためにパワーポイントを使っていても、同じだと思うんです。クリエイティブなことはすべて、無自覚の積み重なりで形成された個性の表れなのではないでしょうか。ただ音楽を作る時、自分の個性を入れ込みすぎてしまうと、聞いた人にとってその音楽が“容れ物”として機能しなくなってしまうと思うんです。個性が強すぎるとそのあとに愛好しにくくなる。

— 逆に、自分自身の個性を意識的に強化することはできると思いますか。

たまに僕も「個性を強くするにはどうしたらいいですか」って聞かれることがあるのですが、そのためには『自分の好きなものを理解する』ということに尽きると思っています。「DJってどうしたらうまくなりますか」という質問に関しても答えは同じ。『自分が好きな音楽をたくさん聞いて、自分が好きな音楽を理解する』ということに尽きる。例えば、いっぱいCDを買って“これは好き”、“これは嫌い”っていうのを繰り返して理解できたら、次に自分が曲を作ったり選んだりするときに、選択が早くなりますよね。時が来た時に、自分が間違いなく選択できるように、自分が好きなことを常日頃から意識しておくっていうのが大事だと思います。

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