子供の頃、雪かきも程々に、雪だるまやかまくら作りに没頭し、父の作ってくれた雪の滑り台をソリで飽きることなく滑り下り、挙句は大地から屋根まで繋がった雪を、防寒着の尻で滑って遊んだのは、もう随分昔のことだ。
そうやって体力の限界まで遊びたおして、まだ何者の足跡もない雪原に後ろ向きに倒れ込み、帰宅する前に休憩をする。
呼吸する度に吐く息が白く昇る。
風のない雪原に、大きな白い雪がゆっくり、柔らかく、静々と舞い落ちる。
雪原の表面と同じ高さにある耳に、雪が落ちて積もる、たとえようのない微かな美しい音がした。
先に地表に到達した仲間に、迎え入れられ触れる刹那の音色だ。
静寂を震わすあの囁きを、また体感できたこの冬。
自分の生きている時間が、いかに幸せであるかと、ふと考える。
北海道の冬は、穏やかな暖かさがあります。
良かったら体感しにいらして下さい。
田舎暮らしには、不便が多いのは本当だ。都会のような娯楽も少ない。冬の北海道ときたら、雪の嵐では車でさえ外出できない時もある。
車は走っているというより、滑って前進しているという感覚さえある。
それでも、面白いことは沢山出来るし、楽しみも結構あるものだ。
子供の頃は、まだ居間には薪ストーブがあった。風呂も薪で温めていた。あの頃はストーブの上で色々な物を焼いたり温めたりして、それはそれで楽しかった。今でも薪ストーブの熱さと匂いは、懐かしさを伴って心まで温めてくれる。
吹雪から逃れて帰宅した時の、あの暖かさは、芯まで冷え切った体を解く魔法だった。
こういう記憶は、きっと生涯の宝物だと、大人になった今は思う。