安倍晋三首相は3日、トランプ米政権の閣僚として最初に来日したマティス米国防長官と首相官邸で約50分間会談した。日本側によると、両者は日米同盟の強化に取り組むことを確認。マティス氏は沖縄県の尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲だと明言し、これまでの米政府の方針を引き継ぐ姿勢を示した。10日の日米首脳会談でトランプ米大統領が同様の認識を示すかが焦点になる。
会談でマティス氏は「日米安保条約に基づく対日防衛義務、同盟国への拡大抑止提供を含め、米国の同盟上のコミットメント(関与)を再確認する」と表明。トランプ政権になっても、核抑止力による「核の傘」を含め、日本を防衛するため日米安保体制を堅持する考えを示した。
首相は「アジア太平洋における米国の強力なプレゼンスは重要だ。日本は防衛力を強化し、自らが果たしうる役割の拡大を図る」と表明。挑発行為を繰り返す中国や北朝鮮の動向など東アジアの安保環境の変化をふまえ、マティス氏は「日米両国とも防衛力を一層強化する必要性がある」と述べた。
地域情勢では中国が進出を強める東シナ海や南シナ海の情勢に懸念を共有。特に尖閣諸島について、マティス氏は「尖閣諸島は日本の施政の下にある領域であり、日米安保条約5条の適用範囲だ」と言明。中国を念頭に「米国は尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」とけん制した。
尖閣をめぐっては、オバマ前大統領は2014年4月の日米首脳会談後の記者会見で「日本の施政下にある領土、尖閣諸島を含め、日米安保条約第5条の適用対象になる」と述べており、マティス氏の発言はこれを踏襲した形になる。
ただトランプ氏は大統領選中に同盟国との関係見直しに言及している。マティス氏はトランプ氏の信頼が厚いとされるが、日本側は10日の日米首脳会談で、トランプ氏本人からも日米同盟や尖閣防衛についてマティス氏と同様の認識を確認したい考えだ。
トランプ氏が日本側負担を増やさなければ米軍を撤収させると示唆していた在日米軍駐留経費の問題には、マティス氏は今回、言及しなかった。北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて容認できないとの認識で一致し、日米や日米韓の協力を深めることを確認。中国が軍事拠点化の動きを強めている南シナ海問題についても意見交換した。
沖縄県の米軍普天間基地の移設問題については、名護市辺野古への移設が唯一の解決策だとの認識を共有した。
マティス氏は菅義偉官房長官、岸田文雄外相ともそれぞれ会い、4日には稲田朋美防衛相と日米防衛相会談を開く。岸田氏は早期の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の開催を提案し、マティス氏も同意した。