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トランプ氏と為替 国際協調の土台揺らぐ

 トランプ米大統領が、日米の自動車貿易を不公正と批判したのに続いて、日本の為替政策をやり玉に挙げた。基軸通貨ドルを担う大国の指導者の口先介入は、日米の通商問題にとどまらず、経済政策を巡る国際協調の土台を揺るがしかねない。

     トランプ氏の認識は強引すぎる。

     まず批判が円売り介入を意味しているのなら誤りだ。日本は、東日本大震災後に円が急伸した2011年を最後に介入はしていない。トランプ氏は日本と中国を並べて批判したが、日常的に介入を繰り返している中国と同列に扱うのはおかしい。

     それ以上に問題なのは、日銀の金融緩和を標的にした可能性があることだ。経済を安定させる国内政策としての金融緩和の効果を認めた国際的な合意を無視している。

     ただし、安倍政権の側に問題がないわけではない。アベノミクスは日銀の金融緩和を柱としたデフレ脱却を目指してきた。金融緩和に伴う円安が企業業績を改善し、賃金を増やして消費を活性化させるという狙いだ。しかし、現政権が発足して4年以上経過するのに円安頼みから抜け出せず、好循環も見えてこない。

     菅義偉官房長官は「金融緩和は国内の物価安定目標のためであり、(トランプ氏の)批判は全く当たらない」と主張した。だが、胸を張って反論できるものでもないだろう。

     それでも、トランプ氏の口先介入は、各国の経済政策と国際協調のバランスを崩しかねない。国際的に積み上げてきた共通認識をわきまえない、一方的な批判だ。

     米国も含めた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などは、国内政策と国際協調の整合性を繰り返し議論してきた。G20は通貨安競争の回避を確認している。各国が自国に有利な通貨切り下げに走れば、保護主義に歯止めがかからなくなるためだ。一方、デフレ脱却などを目的とした金融緩和によって結果的に生じる通貨安は許容してきた。各国経済の安定が世界経済の利益につながると判断した。

     リーマン・ショック後の米国も大規模な金融緩和を行った。急速な円高・ドル安が進む局面もあったが、米国経済は復調した。最近の円安・ドル高も米国の景気回復の結果だ。

     しかも、トランプ氏の政策がドル買い圧力を強めている。減税やインフラ投資の方針が米国経済への期待を高めているためだ。日本に矛先を向けるのはお門違いだ。

     「米国第一」を唱えるトランプ氏は保護主義的な政策を前面に押し出している。基軸通貨を持つ国のトップが自らに都合のいい理屈を振りかざせば、市場を動揺させ、世界経済に悪影響を及ぼす。

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