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【みちのく会社訪問】秋田プロバスケットボールクラブ(秋田市)

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【みちのく会社訪問】
秋田プロバスケットボールクラブ(秋田市)

 ■“ハピネッツピンク”郷土染める

 秋田県で唯一のプロバスケットボールチーム「秋田ノーザンハピネッツ」の試合は、スタンドがイメージカラーのピンクで染まる。子供から高齢者まで世代を超えた熱狂的なファンがロゴマーク入りタオルを掲げ、ウエアを着て声を枯らす。雪に閉ざされる冬の秋田では貴重な屋内娯楽の一つだ。

 ◆「いつか日本一に」

 1月29日、ホームのCNAアリーナ★あきた(秋田市八橋本町)で行われた三遠ネオフェニックス(愛知県豊橋市)との試合には、約2800人のファンが詰めかけた。序盤は優位に運んだ試合だったが終盤で調子が崩れ、64-54で敗退。Bリーグ東地区で最下位と成績は振るわない。「勝つことが全てではない。でもいつか日本一に」。運営会社の秋田プロバスケットボールクラブの水野勇気社長(34)は言う。

 東京出身の水野氏は国際教養大学(AIU)1期生として平成16年に秋田を訪れた。米国留学経験があり、将来的な起業も見据えて「面白そう」と直感で入学。次第に「バスケ王国・秋田」の可能性に魅せられていく。

 秋田には全国47連覇の実績を持つ高校バスケの名門・能代工があり、天皇杯を6度制した旧いすゞ自動車バスケ部の発祥の地だ。一方、少子高齢化で県民は意気消沈気味。「秋田で初のプロチームを作れば秋田を誇りに思い、郷土愛を表現する場所になる」。そう考えて在学中から資金集めを開始、26歳で会社を立ち上げた。

 ◆地域密着型で成長

 試合前には「秋田県民歌」が流れ、会場内には薬を飲むための水を無料で置く。29日の試合終了後には小型無人機「ドローン」で会場周辺の交通量を調査した。ファンの利便性を図るため、得られたデータを臨時バスの発着や駐車場確保の参考にする計画だ。

 シニア層も意識した地域密着の努力が実り、運営会社発足から8年でハピネッツは誰もが認める「郷土のチーム」に成長した。昨年の観客動員数は1試合当たり前年比15%増の3200人で、売上高は約4億円。これを4千人、6億円に引き上げることが目標だ。

 強くなればファンが増え、チケットや物販の収入が増えれば、さらに選手を強化できる。その「好循環」に乗るべく、1月には東海大の中山拓哉選手を、大学の部活動に在籍しながら出場できる「特別指定選手」として招いた。

 目指すはスポーツエンターテインメント。約2時間の試合の前後にアトラクションなどを提供し、チケット代以上の価値を感じてもらい、リピーターを増やす狙いがある。それでも、一番大切なのは「勝つこと」。プロ野球・広島東洋カープなどファンに愛され続けるチームを念頭に、「そうしたチームは必ず優勝経験がある。ハピネッツもそうありたい」と語る。

 事業面は物販の強化を検討中。横浜DeNAベイスターズの球団オリジナルビールが人気を呼んでいることを「参考にしたい」。県外の“潜在的ファン”の掘り起こしも進める。「赴任経験者も含めれば、秋田県出身者は首都圏にも相当数いる。応援団になってほしい」(藤沢志穂子)

                    ◇

 ■企業データ

 秋田市旭北栄町1の5、秋田県社会福祉会館本館4階。「秋田ノーザンハピネッツ」の運営。平成21年1月設立。従業員14人、資本金8千万円。28年6月期の売上高約4億円。ロゴは幸せや楽しさを表現するピンクに、米どころ秋田の稲穂で勝利と豊作への願い、バスケ王国・秋田の誇りを王冠でそれぞれ表現。熱狂的ファン(ブースター)が客席を「クレイジーピンク」に染めることで知られる。

 【取材後記】水野勇気氏はAIU初代学長の故中嶋嶺雄氏の薫陶を受けた。「就職もしないで起業準備をしている僕を本当に心配してくれて、個人で出資もしてもらった」。今のAIUに、水野氏のような起業家が生まれる土壌があるだろうか。「英語を話せる学生向けの就職予備校のよう」とみる向きもある。秋田から勝負をかけて出る、若い個性的な人材にもっと出会いたい。