将棋世界最新号50p〜51pに「第三者調査委員会の報告を受けて」という題名で日本将棋連盟常務会名義による文章が掲載された。
まず冒頭で将棋ファン、主催社・協賛社、三浦九段への謝罪の言葉が載っている。
そこから今回の「将棋ソフト不正使用問題」についての経緯報告がされている。
これに関しては特に今までの説明と変わりはない。
次に10/10に行われた、極秘会合から三浦九段が竜王戦挑戦権の失効及び、3ヶ月間の出場停止になった経緯が説明されている。
しかし、ここでの記述の内容には疑問が残る。
まず、10/10に行われた渡辺竜王の希望による極秘会合で具体的に話された内容について詳しく説明がされていない点。
その内容を受け、急遽翌11日に三浦九段に聞き取り調査を行ったと説明されているが、極秘会合の内容がこの記述からではわからないので相変わらず出場停止の核心となった点が不透明なままだ。
次に、「三浦九段本人から「疑われたままでは将棋は指せない。休場したい」との申し出があった(中略)決して休場を強要したわけではありません。」
と書かれているが、実際にはこのような申し出はなかったとの見方が強い。
また直接の処分理由となった“休場届の不提出”については、三浦九段から「竜王戦の辞退及び休場の申し出を
行ったことはない」と説明。実際には連盟理事から「竜王戦は開催されなくなった。それを承知してくれるか」と言われ、
三浦九段と渡辺明竜王はともに同意したこと。理事はその上で連盟にとって大変な損害であるとして三浦九段に
「休場届を出していただきます。それでいいですね」と迫り、三浦九段はその場では了承。しかしその後、
不正をしていないのに休場届を提出すると不正を認めたとも捉えられかねないと思い提出を拒んだが、結局三浦九段には
出場停止処分が下され、開催されないはずの竜王戦は挑戦者を変更して開催される形となったのだという。
(産経新聞)http://www.sankei.com/life/news/161227/lif1612270041-n1.html
この後に、「あくまで休場の意向を示しながら、休場届が提出されなかったことに対する緊急の措置であったことを、改めて強調しておきたいと思います。」と書かれているが、この将棋世界に掲載された文章からは中立な視点から書かれた記述とは到底思えなく、三浦九段が竜王戦挑戦権の失効及び、3ヶ月間の出場停止になった経緯についてはかなり連盟寄りに書かれていると言わざるを得ない。
その後に、「第三者調査委員会からはこの処分については「妥当であった」との報告をいただきましたが、(中略)やむを得ない選択だったという趣旨と受け止めています。」と書かれているが、これも三浦九段側はこの妥当という判断は不当だと表明している。
大前提として、第三者調査委員会というのは連盟が多額の金を出して雇っている弁護士なので、依頼者の連盟を優位に書いてしまうことはある。
報告書については、不正の証拠がないという結論は評価できるが、処分が妥当だというのは依頼者である連盟に寄り添った意見で極めて不当。処分当時に存在していたのは、一部棋士が指摘した一致率や離席だけで、これは疑惑ではなく一部棋士による単なる邪推。
その後の将棋世界の記事では、今回の出場停止について、
疑惑の報道によってタイトル戦が中止になってしまうという事態はあってはならないこと。(中略)苦渋の決断でした。
と記述。
また、電子機器の規定が遅れたことへの反省が書かれている。
そして第三者調査委員会の発足の経緯が書かれ、
その結論として、
12月26日に調査結果がまとめられて、第三者調査委員会による記者会見が開かれました。そこでは、
「三浦九段は不正を行っていないこと」、「常務会が出場停止処分を取ったのは妥当であること」この二つの結論を頂きました。
と連盟側は見解を示している。
その後は将棋世界誌上で本件に関しての報告が遅れたことに対するお詫びがされている。
最後に
今後は、委員会から頂きましたご提言を真摯に受け止め、棋士が疑心暗鬼に陥らず盤面だけに集中できる形を、再度検討してまいります。(中略)棋士一同が今一度襟を正して将棋に向き合うことで、真剣勝負を将棋ファンの方に楽しんでいただけるようにしたいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
という文章で今回の2ページにわたる記事は最後になっている。
本記事を見ての私の見解
本文中でも述べたが、今回の記事はかなり連盟側に寄り添って書かれていると言わざるを得ない。
・10/10の極秘会合の内容の説明不足
・三浦九段が休場したいと言った
・休場届が提出されなかったことに対する緊急の措置
・常務会が出場停止処分を取ったのは妥当と判断
など疑問に残る記述が多い。内容の中立性に欠けていると思う。
連盟側からこのような記事を載せるのであれば、三浦九段(弁護士)側からも同様に2ページを設けて記事を掲載すべきではなかったか。
また、個人的には冒頭の謝罪文の中で今回のソフト不正の疑惑で実際に使われたと仮定された、「技巧」開発者の出村洋介さんへの謝罪の一言が欲しかった。
出村さんは今回の報道で大変落ち込んだそうだ。第4回将棋電王トーナメントバージョンの技巧の公開を中止、また第27回世界コンピュータ将棋選手権への不出場にも今回の報道が一因であるとの見方が強い(仕事が忙しいのもあるようですが)。最悪の場合、もうコンピュータ将棋の開発は辞めてしまうかもしれない。多くのコンピュータ将棋「技巧ファン」は悲しんでいるのである。この事も日本将棋連盟は忘れないでほしい。
※出村さんの件は、ソース不透明な記述でした。
筆者の憶測です。お詫び申し上げます。