トランプ閣僚が「日韓訪問」を最優先した理由

東アジアに差し迫った脅威とは

トランプ大統領と、マティス国防長官(写真右)の関係は必ずしも良好とはいえないようだ(写真: The New York Times/アフロ)

「狂犬」との異名をもつ、ジェームズ・マティス米国防長官が、トランプ政権の閣僚として初めて日本と韓国を訪れている。マティス国防長官にとっては初の海外遠征となるだけに、「行き先」は慎重に選ばれた。不安定なアジア太平洋地域の中でも、米国にとってはキー同盟国である2カ国を選んだ理由――それは、両国に「重要なメッセージ」を届けることにほかならない。

他国同様、日本と韓国の両政府は、ドナルド・トランプ大統領の選挙戦中、あるいは最近の言動に明らかに困惑しており、マティス国防長官の訪問によって両国の安全保障における米国の責任や、この地域の安定と和平における米国の役割を再確認したいと考えているだろう。

同盟関係の「再確認」がミッション

当のマティス国防長官も自らの「役割」は認識しているようだ。先日米議会で開かれた公聴会でも、過去のトランプ大統領による日韓との同盟関係に関する発言とは、明らかに(しかし慎重に)距離を置いているように見えた。

「マティス国防長官は、トランプ大統領より先に日韓との同盟関係を明確にしたいと考えているのだろう」と、戦略国際問題研究所の日本専門家であるマイケル・グリーン氏は話す。今回の訪問を通じて「トランプ大統領とホワイトハウスに対して、同盟国の意味や、この同盟関係によって恩恵を受けている地域がどのように尊重され評価されているのか、そして、同盟による貢献は単純にそこに費やされた金額ではなく、その出費によってもたらされる成果や効果であることを示したいのではないか」。

今回の訪問でマティス国防長官は、日本と韓国に対して同盟の継続を再確認すると同時に、トランプ大統領に対して「現時点では同盟に関して、(ホワイトハウス内での)明確かつ一致した見解はないというメッセージを送ろうとしている」と、グリーン氏は指摘する。

マティス国防長官が同盟体制の再確認を急ぐ背景には、北朝鮮の存在がある。トランプ政権は、北朝鮮が近隣地域や米国、そして世界の和平におけるもっとも差し迫った軍事的脅威であるという見解を共有しているほか、北朝鮮による軍事的挑発に対する警戒感を強めている。

北朝鮮は長らく、米国で新大統領が就任するたびに挑発行動を行ってきた。実際、伝えられるところによると、金正恩総書記は最近、寧辺のプルトニウム生産炉の再稼働を指示している。さらなる弾道ミサイルの発射準備が、おそらく金の父である金正日の誕生日の2月16日や、北朝鮮の建国者で祖父である金日成の誕生日の4月15日など、北朝鮮の祝日に合わせて進められている可能性もある。

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