米マティス国防長官 きょうから韓国と日本訪問

米マティス国防長官 きょうから韓国と日本訪問
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アメリカのマティス国防長官は2日から韓国と日本を訪問し、トランプ政権として両国との同盟関係を重視する方針を伝えるとともに、北朝鮮への対応などについて意見を交わし、引き続きアジア太平洋地域の安全保障に関与していく姿勢を打ち出すものと見られます。
アメリカのマティス国防長官は2日から韓国を訪問し、3日には日本を訪れて安倍総理大臣を表敬するほか、稲田防衛大臣と会談する予定です。

トランプ政権の閣僚が日本を訪問するのはこれが初めてで、マティス長官としては新政権が両国との同盟関係を重視する方針を伝え、選挙期間中に同盟の見直しを示唆する発言を繰り返していたトランプ大統領への懸念を払拭(ふっしょく)する狙いがあると見られます。

マティス長官の訪問について日米双方の政府関係者は「これまで両国間で積み上げてきた共通認識が変わらないことを確認したい」と話していて、沖縄県の尖閣諸島に日米安全保障条約が適用されるというこれまでのアメリカ政府の立場を再確認するものと見られます。

またアメリカは、北朝鮮がアメリカ本土に届くICBM=大陸間弾道ミサイルの技術開発を進展させていることへの危機感を強めていて、韓国側との会談で最新の迎撃ミサイルシステムTHAADの韓国への配備を進める方針を確認したい考えです。

歴戦の将軍 歴史に造詣

ジェームズ・マティス国防長官は、アメリカ海兵隊の元大将で、現役時代には歴戦の将軍として知られる一方、歴史に造詣(ぞうけい)が深い戦略家とも評されてきました。

マティス氏は1969年、18歳で予備役として海兵隊に入隊して幹部になり、湾岸戦争やアフガニスタンでの戦争、それにイラク戦争などで前線の部隊を率いました。最前線へと兵士を送る指揮官として戦場の厳しさを率直に語り、戦歴の豊富さなどから「狂犬」や「戦う修道士」という異名でも呼ばれましたが、本人は就任後記者団の前で、「狂犬はメディアがつくりだした名前で私は昔からジムと呼ばれていた」と話し、自分にはなじまないという印象を話していました。

また歴史学の学位も持つマティス長官は蔵書が7000冊を越えると言われるなど歴史に深い造詣があることでも知られています。

就任前の議会の公聴会では民主党の元議員から、「思想家であり実行力があり、学識があり戦略家でもある極めてまれな人材だ」と評されるなど、党派を問わず、多くの議員や専門家から、戦略家として高い評価を受けていて、安全保障の分野で政治家や軍人の経験がないトランプ大統領の政策への懸念が高まるなか政権内での役割に期待する声が挙がっています。

同盟を重視

マティス国防長官はアメリカの同盟関係の重要性をたびたび強調し、同盟を重視する姿勢を鮮明にしてきました。議会の公聴会では「強固な同盟国を持つ国は栄えそうでない国は衰退する」と述べたほか、就任直後の職員向けの談話でも「どの国家も友人なしには安全ではいられないという認識のもと同盟関係の強化に取り組む」と強調しています。

一方、安全保障上の課題についてマティス長官は「ロシアや南シナ海で見られる中国のふるまいにより、国際秩序は第2次世界大戦以降、最大の攻撃にさらされている」と述べて、ロシアとともに海洋進出の動きを強める中国を挙げ、南シナ海での人工島の造成などに対し、総合的に戦略を練り直す必要があるという考えを示しています。

さらに北朝鮮の弾道ミサイル開発を「深刻な脅威」と位置づけ、「国際社会で取り組んでいくがわれわれの交渉の姿勢が正しいかどうか見直さなければならない」と述べて、打開策を見いだすため政策を再検討する必要性も指摘しています。

そしてアジア太平洋地域の安全保障について「優先事項の1つだ」としてアメリカとして引き続き関与していく姿勢を明確にしています。

またマティス長官はトランプ大統領が選挙期間中、同盟国にさらなる負担を求める発言を繰り返していたことをめぐっては「公平な負担を求めてきた長い歴史があり、今後も一致点を見いだしていく」と述べるに止めています。
これに関連してアメリカ国防総省の当局者は「大きな変更を打ち出す意図はない」として今回の訪問で同盟関係をめぐる大きな政策変更を迫ることはないという認識を示しています。
そのうえで「何を懸念しているのか聞くのが狙いだ」と述べて、北朝鮮や中国への対応など安全保障上の課題をめぐり意見を交わすことになるという見通しを明らかにしていました。

北朝鮮 談話で米韓をけん制

北朝鮮は1日夜、韓国との窓口機関である祖国平和統一委員会の報道官談話を発表し、韓国に対し、「来月(3月)のアメリカとの合同軍事演習を中止しない限り、核武力を中心とする自衛的国防力と先制攻撃能力を強化し続ける」として、従来から主張している演習の中止を改めて要求しました。
そのうえで、「アメリカに追従して対決の道に進むならば、われわれの忍耐も限界を超えるだろう」と強調しました。

北朝鮮としては、アメリカのマティス国防長官が韓国を訪問する直前に談話を発表し、米韓両国をけん制する狙いがあると見られます。