ちなみに、日本の国防予算の規模そのものはストックホルム国際平和研究所(スウェーデン)が公表した国際比較(2015年)では第8位である。しかしGDP比はきわめて低い。
下の表はストックホルム国際平和研究所のデータより作成した国防支出トップ15カ国のデータである。表から明らかなように、GDP額が高い割に国防支出が低いのが日本とドイツだ。結果として両国は国防支出のGDP比がそれぞれ1%と1.2%と15カ国中最低レベルになっている。
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トランプの言う「同盟力強化」とは
トランプ政権はオバマ政権下でGDP比3.5%以下にまで落ち込んでしまったアメリカの国防費を、かつてのレベルである4.0%以上に引き上げるという方針を打ち出している。この程度の額にしなければ、選挙期間中より公約してきた海軍力再建は不可能である。そして、アメリカ自身の国防費を増額する以上、NATO諸国や同盟諸国に対しても経済規模相応の国防費増額を要求することは必至である。
アメリカが国防費を増加させて戦力増強に努めるのと歩調を合わせ、同盟諸国も国防費を増加させ戦力アップを図ることで、アメリカと同盟諸国の総合戦力は大増強が目論める。これこそ、トランプ大統領が打ち出している同盟の強化の実体的意味である。
「同盟を強化する」と首脳同士が誓い合っても、自動的に同盟国全体の戦力すなわち同盟力がアップするわけではない。また、どちらか一方が国防費を増額し戦力強化に励んでも、他方がそのような努力を欠けば、それは同盟戦力の強化とは見なせない。それぞれの同盟国が経済規模や戦略環境に応じて、相応の国防費を計上して戦力アップを図ることにより、同盟力が強化されるのだ。