巧妙なトリックに騙される!
読者をミスリードへと誘い込み、あっと驚く結末が待ち受ける傑作ミステリー『ハサミ男』。どんでん返しがすごいことで有名な本作は、2013年に他界した推理小説家・殊能将之のデビュー作となっています。1999年、メフィスト賞を受賞。2005年には、映画化もされた作品です。
主人公の「ハサミ男」こと「わたし」は、美しい女子高生を狙い、殺害した後にハサミを首に突き立てるという、残忍な殺人鬼です。すでに被害者は2人。「わたし」は3人目のターゲットとして、頭脳明晰な美少女・樽宮由紀子を選び、殺害のチャンスを狙っていました。ところが、樽宮由紀子を待ち伏せていた「わたし」は、何者かによって殺害された彼女の遺体を発見してしまうのです。
遺体の首には、「ハサミ男」の特徴であるハサミが突き立てられていました。「ハサミ男」の手口を模倣した殺人事件の、第一発見者となってしまった「わたし」。いったい誰が模倣犯として樽宮由紀子を殺したのか。「わたし」は、真犯人を探そうと調査に乗り出します。
主人公の「ハサミ男」こと「わたし」は、美しい女子高生を狙い、殺害した後にハサミを首に突き立てるという、残忍な殺人鬼です。すでに被害者は2人。「わたし」は3人目のターゲットとして、頭脳明晰な美少女・樽宮由紀子を選び、殺害のチャンスを狙っていました。ところが、樽宮由紀子を待ち伏せていた「わたし」は、何者かによって殺害された彼女の遺体を発見してしまうのです。
遺体の首には、「ハサミ男」の特徴であるハサミが突き立てられていました。「ハサミ男」の手口を模倣した殺人事件の、第一発見者となってしまった「わたし」。いったい誰が模倣犯として樽宮由紀子を殺したのか。「わたし」は、真犯人を探そうと調査に乗り出します。
ハサミ男 (講談社文庫)
作者 | 殊能 将之 |
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出版社 | 講談社 |
出版日 | 2002年08月09日 |
事件の真犯人を殺人鬼が追うという斬新なストーリーもさることながら、ハサミ男の視点と、警察側からの視点が交互に繰り返される展開に、先が気になりどんどん引き込まれてしまいます。
できれば、なんの先入観も持たず読み始めていただきたいこの作品。気がつかないうちに、作者の仕掛けた罠にどんどん嵌まり込んでいくことでしょう。すべての真相が明らかになったとき、その衝撃に思わず声を上げたくなってしまいます。読み終えたあと、もう1度最初から読み直して確認したくなるでしょう。圧巻のどんでん返しに魅了される、良質な推理小説になっています。
驚きのラストに心が震える傑作
伏線を張り巡らせた、巧みな構成が光る『名も無き世界のエンドロール』。行成薫のデビュー作で、2012年、小説すばる新人賞を受賞しました。幼なじみの2人の男性の物語を、エンターテインメント性に富んだ豊かな文体で綴った作品です。
幼い頃から人に巧妙なドッキリを仕掛けるのが得意だった「ドッキリスト」のマコトは、いつもキダをターゲットにし、体は大きくてもドッキリに弱いキダは、毎回のように見事に引っかかります。小学校のときから親友同士の2人は、ドッキリを仕掛けたり仕掛けられたりして多くの時間を共に過ごしてきたのでした。
そんな2人も30歳を過ぎ、マコトはワイン輸入会社の社長、キダは何やら怪しい裏稼業に就いています。社長になっても相変わらずのマコトは、「プロポーズ大作戦」なるものを計画したらしく、キダもそれに協力することになり……。
幼い頃から人に巧妙なドッキリを仕掛けるのが得意だった「ドッキリスト」のマコトは、いつもキダをターゲットにし、体は大きくてもドッキリに弱いキダは、毎回のように見事に引っかかります。小学校のときから親友同士の2人は、ドッキリを仕掛けたり仕掛けられたりして多くの時間を共に過ごしてきたのでした。
そんな2人も30歳を過ぎ、マコトはワイン輸入会社の社長、キダは何やら怪しい裏稼業に就いています。社長になっても相変わらずのマコトは、「プロポーズ大作戦」なるものを計画したらしく、キダもそれに協力することになり……。
名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)
作者 | 行成 薫 |
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出版社 | 集英社 |
出版日 | 2015年02月20日 |
過去と現在を行きつ戻りつしながら、シーンを目まぐるしく変え、スピーディーに展開されていきます。小学校時代に転校してきた女の子ヨッチや、美人なマコトの彼女リサも物語に加わり、これまでの出来事が少しずつ明らかになっていく過程は、読み応え充分。マコトとキダの狙いがなかなかわからず、読むのをやめられなくなります。
「一日あれば、世界は変わる」たびたび登場するこのセリフが心に残ります。ばらばらに登場するシーンすべてがひとつにつながり、「プロポーズ大作戦」の全容が明らかになったとき、驚愕とともに、あまりの愛の強さを目の当たりにし、切なさに圧倒されることでしょう。軽妙な語りの中にも、様々なことを考えさせられる重みがあり、一気に読ませる力のある作品です。
東野圭吾の大人気ミステリー
1990年に発表された、東野圭吾の初期作品『仮面山荘殺人事件』。ストーリーの面白さや文体の読みやすさ、結末に用意されている大どんでん返しが話題を呼び、男女問わず幅広い世代から今もなお読まれ続けているロングヒットミステリーです。
主人公・樫間高之は映像制作会社の若き経営者。結婚式の4日前に、事故によって婚約者の森崎朋美を亡くしていました。その事故の3カ月後、高之は朋美の父で製薬会社の社長・森崎伸彦から、朋美の追悼も兼ねて、別荘で一緒に過ごさないかと招待されます。森崎家の所有する別荘には、高之の他に、森崎一家と親族、医者や秘書など計8人が集められていました。
事故とはいえ不可解な疑問が残る朋美の死が話題にあがり、一同に不穏な空気が流れる中、なんと別荘内に強盗犯が侵入。8人は軟禁され、外部との連絡を試みるも、ことごとく失敗してしまうのです。そしてついに、刺されて倒れている1人目の犠牲者が発見され……。
主人公・樫間高之は映像制作会社の若き経営者。結婚式の4日前に、事故によって婚約者の森崎朋美を亡くしていました。その事故の3カ月後、高之は朋美の父で製薬会社の社長・森崎伸彦から、朋美の追悼も兼ねて、別荘で一緒に過ごさないかと招待されます。森崎家の所有する別荘には、高之の他に、森崎一家と親族、医者や秘書など計8人が集められていました。
事故とはいえ不可解な疑問が残る朋美の死が話題にあがり、一同に不穏な空気が流れる中、なんと別荘内に強盗犯が侵入。8人は軟禁され、外部との連絡を試みるも、ことごとく失敗してしまうのです。そしてついに、刺されて倒れている1人目の犠牲者が発見され……。
仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)
作者 | 東野 圭吾 |
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出版社 | 講談社 |
出版日 | 1995年03月07日 |
強盗犯とのやりとりにはハラハラする緊迫感があり、しかもメンバーを刺したのは強盗犯ではないという展開に、一気に物語に引き込まれてしまいます。東野圭吾の巧妙なテクニックにすっかり騙されてしまい、予想をはるかに超えるどんでん返しに、清々しささえ感じることでしょう。
300ページ以下の短い作品ですが、いたるところに伏線が張られる、とても濃い内容になっています。一切無駄がない巧みな文章はとても読みやすく、誰でも気軽に楽しむことができる作品です。感の鋭い方は、謎解きに挑戦してみるのも面白いかもしれません。
ミステリー賞総なめ!圧巻の注目作
優れたミステリーであり、至高の恋愛小説でもある、歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』。2003年に発表された本作は、日本推理作家協会賞や本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい!」第1位にも輝くなど、様々なミステリー賞を総なめにした作品です。
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
作者 | 歌野 晶午 |
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出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 情報なし |
主人公・成瀬将虎は自称「何でもやってやろう屋」。いろいろな仕事を転々とし、毎日を精力的に楽しく生きています。探偵事務所で働き半人前にもならずに辞めてしまった過去がありますが、高校の後輩でフィットネス仲間のキヨシには、元私立探偵だと自慢していました。成瀬はそのことがきっかけで、同じフィットネスに通う久高愛子から、身内が巻き込まれた保険金詐欺の調査を依頼されてしまいます。
時を同じくして成瀬は、駅のホームで自殺しようとしていた麻倉さくらを助け、デートを重ねる間柄になっていました。物語は、時間軸や視点をころころと変えながら、保険金詐欺の真相を徐々に明らかにしていくとともに、成瀬とさくらの関係についても描かれていきます。
タイトルの印象とは少し異なり、物語はハードボイルドな一面を覗かせます。登場するヤクザたちの姿は生々しく、悪徳商法の恐ろしさも濃密に描かれているこの作品。悪徳商法に騙されてしまった女性・古谷節子や、離婚してしまった成瀬の友人・安藤史郎も加わり、ばらばらに展開される一見何の関係もない登場人物たちが、見事にひとつの線として繋がる瞬間は興奮してしまいます。
すべてのトリックが明かされた時、秀悦で美しい、このタイトルの意味を知ることができるでしょう。花を咲かせるときだけ注目されがちな桜の木ですが、花を落とし、葉を茂らせ、綺麗に紅葉した桜を見てみたくなる作品です。
切なくも感動的な青春ミステリー
現在と過去、2つの時間軸が同時進行していく『アヒルと鴨とコインロッカー』。伊坂幸太郎のカットバック手法が冴え渡る本作は、2006年に吉川英治文学新人賞を受賞、2007年には映画化もされました。
冒頭、主人公の「僕」こと椎名は、不本意ながらモデルガン片手に、本屋の裏口を見張っています。いったいなんのために……。椎名は2日前の出来事を回想します。大学進学にともない、あるアパートへ引っ越し、初めての1人暮らしをすることになった椎名。引っ越しの片づけをしていると、同じアパートに住む河崎と名乗る男が話しかけてきました。椎名の歓迎会を開いてくれた河崎でしたが、そこで河崎から「一緒に本屋を襲わないか」と誘いを受けたのでした。
そして物語は、現在から2年前へと飛びます。語り部となるのは、ペットショップで働いている「わたし」こと琴美。ブータン人の留学生ドルジと同棲中の琴美は、ドルジによく日本語を教えてあげていました。そんな時、街ではペットを残酷に殺害する事件が多発していて……。
冒頭、主人公の「僕」こと椎名は、不本意ながらモデルガン片手に、本屋の裏口を見張っています。いったいなんのために……。椎名は2日前の出来事を回想します。大学進学にともない、あるアパートへ引っ越し、初めての1人暮らしをすることになった椎名。引っ越しの片づけをしていると、同じアパートに住む河崎と名乗る男が話しかけてきました。椎名の歓迎会を開いてくれた河崎でしたが、そこで河崎から「一緒に本屋を襲わないか」と誘いを受けたのでした。
そして物語は、現在から2年前へと飛びます。語り部となるのは、ペットショップで働いている「わたし」こと琴美。ブータン人の留学生ドルジと同棲中の琴美は、ドルジによく日本語を教えてあげていました。そんな時、街ではペットを残酷に殺害する事件が多発していて……。
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
作者 | 伊坂 幸太郎 |
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出版社 | 東京創元社 |
出版日 | 2006年12月21日 |
河崎は、現在にも2年前にも姿を現します。いったいこの2つの物語を、どうやって繋げてくれるのか、読んでいて先が気になって仕方なくなってしまいます。現在と過去では、明らかに違った空気感が漂っていて、その表現力豊かで巧みな文章力に改めて脱帽させられます。いたるところにユーモアたっぷりの小気味好いセリフが散りばめられ、物語の世界に吸い寄せられるように読み耽ってしまうでしょう。
2つの物語が1つになるとき、鮮やかな構成力に感嘆するとともに、なんとも言えない切ない余韻に包まれるでしょう。登場人物それぞれの人生に想いを馳せ、泣きたくなるようなセンチメンタルな気分になりながらも、どこか爽やかさの漂う、素晴らしい青春ミステリーになっています。
卓越したトリックが冴え渡る!
直木賞作家道尾秀介による『ラットマン』。心理学の実験で使用される「ラットマン」の絵は、同じ絵なのに動物と並べられればねずみに、人の顔と並べられれば男性の顔に見えるといいます。本作は、人間の先入観をテーマに描かれたミステリーで、登場人物たちの思い込みによって二転三転する展開に、読者はどんどん巻き込まれていくことになります。
主人公・姫川亮は30歳のサラリーマン。高校時代から同級生たちとアマチュアバンドを組んでおり、現在でも練習の為、時折練習スタジオに集まっています。姫川の恋人でバンドのドラムを担当していた小野木ひかりは、2年前にバンドを抜け、今ではひかりの妹・桂が代わりにバンドへ参加していました。
高校時代からひかりと交際している姫川でしたが、桂がバンドに参加してからというもの、桂の屈託のない明るさに心を惹かれているのです。そんなある日、ひかりが練習スタジオの倉庫で死亡。事故なのか殺人なのか。自身の過去に姉の死というトラウマを抱える姫川には犯行動機があり……。
主人公・姫川亮は30歳のサラリーマン。高校時代から同級生たちとアマチュアバンドを組んでおり、現在でも練習の為、時折練習スタジオに集まっています。姫川の恋人でバンドのドラムを担当していた小野木ひかりは、2年前にバンドを抜け、今ではひかりの妹・桂が代わりにバンドへ参加していました。
高校時代からひかりと交際している姫川でしたが、桂がバンドに参加してからというもの、桂の屈託のない明るさに心を惹かれているのです。そんなある日、ひかりが練習スタジオの倉庫で死亡。事故なのか殺人なのか。自身の過去に姉の死というトラウマを抱える姫川には犯行動機があり……。
ラットマン (光文社文庫)
作者 | 道尾 秀介 |
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出版社 | 光文社 |
出版日 | 2010年07月08日 |
姫川の抱えるショッキングなトラウマには、心が痛みます。作品全体には、暗く湿った雰囲気が漂い、ひかりの死の真相とともに、姫川の姉の死の真相を追う展開は、登場人物たちの思い込みによりどんどん複雑化していくのです。
ですが、読んでいて大いに振り回される感覚は、なんとも言えず魅力的。終盤畳み掛けるように訪れる、どんでん返しの連続はさすがの一言です。道尾秀介が仕掛ける、洗練された数々のトリックに舌を巻くことでしょう。わかっていても騙されてしまう、その快感を経験してみてはいかがでしょう。
筒井康隆の傑作メタ・ミステリー
SF作家としても知られる、巨匠・筒井康隆による本格メタ・ミステリー『ロートレック荘事件』。1990年に発表され、叙述トリックの先駆けとも言われている本作は、大掛かりな仕掛けが随所に施された、傑作中編小説です。
「おれ」と重樹が8歳の時の夏、別荘での事故により、重樹は下半身に障害を抱えてしまいます。その別荘は、父の知り合いの実業家・木内文麿に買い取られ、「ロートレック荘」と呼ばれていました。木内はフランスの画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの絵をコレクションしており、別荘には作品がいくつも飾られているのです。
夏の終わり、重樹はロートレック荘に向かう車に揺られています。別荘には他にも、将来有望株の青年たちや3人の美女が、華やかなバカンスを楽しもうと集まっていました。ですがその矢先、銃声が鳴り響き、1人の美女が遺体となって発見され……。
「おれ」と重樹が8歳の時の夏、別荘での事故により、重樹は下半身に障害を抱えてしまいます。その別荘は、父の知り合いの実業家・木内文麿に買い取られ、「ロートレック荘」と呼ばれていました。木内はフランスの画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの絵をコレクションしており、別荘には作品がいくつも飾られているのです。
夏の終わり、重樹はロートレック荘に向かう車に揺られています。別荘には他にも、将来有望株の青年たちや3人の美女が、華やかなバカンスを楽しもうと集まっていました。ですがその矢先、銃声が鳴り響き、1人の美女が遺体となって発見され……。
ロートレック荘事件 (新潮文庫)
作者 | 筒井 康隆 |
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出版社 | 新潮社 |
出版日 | 1995年01月30日 |
この作品では、短いながらも、練りに練った叙述トリックがいたるところに施され、一語一句たりとも軽く読み飛ばすことができません。読んでいてもやもやとした違和感を覚えるにもかかわらず、その正体がいっこうにつかめず、1人また1人と犠牲者を出しながら物語は進んでいきます。
終盤での種明かしでは、霧が晴れるような気分を味わえることでしょう。鮮やかなトリックとともに、人間の持つ優越感や残酷さを痛いほど抉り出し、深く考えさせられる、筒井康隆渾身の一作になっています。
語り継がれる綾辻行人の鮮烈デビュー作品
1987年に発表された、綾辻行人のデビュー作『十角館の殺人』。日本のミステリー界に多大な影響を与え、本格推理小説の人気を高めたと言われるこの作品は、以降多くの読者たちから賞賛される不朽の名作となっています。
ある大学の推理小説研究会のメンバー7人が、「角島」という無人の孤島へとやってきました。島にある「十角館」と呼ばれる建物では、半年前に建築家の中村青司が殺人事件に巻き込まれ焼死するという凄惨な出来事が起こっており、それに興味を示した彼らはこの島で一週間を過ごすという計画を立てたのです。
一方その頃本島では、元推理小説研究会の会員だった男のもとへ、奇妙な手紙が届けられていました。差出人の名前は中村青司。すでに死んでいるはずの人物からの手紙を不審に思った男は、友人とともに半年前の島での事件を調べていくことになります。
ある大学の推理小説研究会のメンバー7人が、「角島」という無人の孤島へとやってきました。島にある「十角館」と呼ばれる建物では、半年前に建築家の中村青司が殺人事件に巻き込まれ焼死するという凄惨な出来事が起こっており、それに興味を示した彼らはこの島で一週間を過ごすという計画を立てたのです。
一方その頃本島では、元推理小説研究会の会員だった男のもとへ、奇妙な手紙が届けられていました。差出人の名前は中村青司。すでに死んでいるはずの人物からの手紙を不審に思った男は、友人とともに半年前の島での事件を調べていくことになります。
十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
作者 | 綾辻 行人 |
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出版社 | 講談社 |
出版日 | 2007年10月16日 |
孤島で巻き起こる出来事と、本島での調査内容が交互に描かれていきます。逃げることのできない孤島でメンバーが1人ずつ殺されていくスリリングな恐怖と、半年前の事件について明かされていくサスペンスに満ちた謎解きを、代わる代わる体験することになり、ハラハラドキドキしながら、どんどん物語に引き込まれてしまいます。
そして訪れる驚愕の一行。本作は、たった一行、たった一言のセリフで、すべてが繋がり、それまでの世界がひっくり返る大どんでん返しが待っています。そのあまりのインパクトの大きさに思わず絶句し、綺麗に騙される快感を堪能できることでしょう。ミステリーが好きな方だったら必ず楽しめる、おすすめの作品です。
じわじわ後を引く傑作ミステリー
2004年に発表され、そのどんでん返しが高く評価された、乾くるみの『イニシエーション・ラブ』。恋愛小説が最後の最後で突如ミステリーに変貌するという、衝撃の展開が話題になったベストセラー小説です。
静岡大学4年生の鈴木夕樹は、人数合わせのために誘われた初めての合コンで、ショートカットの可愛らしい女の子・成岡繭子に一目惚れしてしまいます。冴えない自分とは縁がないと諦めていた夕樹でしたが、偶然にも再会し電話番号をゲット。その後も交流を深め、付き合い始めることになりました。繭子は「夕樹」が「タキ」とも読めると言い、「たっくん」と呼び始めます。
静岡大学4年生の鈴木夕樹は、人数合わせのために誘われた初めての合コンで、ショートカットの可愛らしい女の子・成岡繭子に一目惚れしてしまいます。冴えない自分とは縁がないと諦めていた夕樹でしたが、偶然にも再会し電話番号をゲット。その後も交流を深め、付き合い始めることになりました。繭子は「夕樹」が「タキ」とも読めると言い、「たっくん」と呼び始めます。
イニシエーション・ラブ (文春文庫)
作者 | 乾 くるみ |
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出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 2007年04月10日 |
慶徳ギフト静岡に就職した「たっくん」は、東京本社へ派遣されることになり、繭子と離れ引っ越さなければいけなくなりました。毎週のように静岡へ帰り、繭子との愛を確かめ合っていた「たっくん」でしたが、東京本社の女性社員・石丸美弥子からアプローチを受け、徐々に気持ちが傾いていくのを抑えられず……。
頭の中で、ゆっくり物語の全容が見え出し、作品のあちこちに張り巡らされた仕掛けに気づいたとき、じわじわと背筋が寒くなる思いがします。
これまでに体験したことのない読後感を味わうことができ、改めて読み直さずにはいられないこの作品。まだ読んだことのない方は、ぜひ一読してみてはいかがでしょうか。
驚愕の種明かしに茫然自失!
トリックを駆使した驚愕のどんでん返しを見せる作品として、多くの読者たちから最高峰と絶賛される『殺戮にいたる病』。我孫子武丸によって描かれたこの衝撃作は、目を背けたくなるような残虐な行為を繰り返す、サイコ・キラーが登場します。
殺戮にいたる病 (講談社文庫)
作者 | 我孫子 武丸 |
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出版社 | 講談社 |
出版日 | 1996年11月14日 |
猟奇的な行為を繰り返し、何人もの女性を殺害してきた男・蒲生稔が逮捕されました。警察を呼んだのは、事件を独自に調査してきた元警部の樋口。現場には、自分の息子が殺人犯なのではないか、と疑い続けてきた蒲生雅子の姿もあります。
憔悴する樋口、泣き崩れる雅子、そしてただひとり、犯人の稔だけが平然としている異常な状況。いったいこれまでに何があったのか。物語は過去へと遡り、殺人鬼・蒲生稔が起こした残虐な殺人事件の数々が、克明に綴られていくことになります。
作品内で描かれる、あまりにも細かいリアルな殺害描写に、衝撃を受ける方も多いのではないでしょうか。しばらく頭から離れなくなるほど鮮明に描かれているため、苦手な方は注意が必要かもしれません。終盤は、手に汗握る緊張の連続。スピード感あふれる怒涛の展開に、読む手が止まらなくなってしまいます。
残酷な描写を読むのはつらいですが、作者が物語の中に仕掛ける緻密なトリックは一級品。真実を知ったとき、そのあまりの鮮やかさと、訪れる衝撃に、呆然としてしまうことでしょう。これまで読んできた物語が、まったく違う別の物語へと変わってしまう感覚に、言葉を失います。歪んだ愛がもたらす壮絶な結末。ぜひその目で確かめていただければと思います。
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