東京圏の鉄道混雑率ワースト30(2015年度)

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 毎日の通勤ラッシュは苦痛だ。事故やトラブルで電車に遅れが出れば、余計にイライラが募る。そんな怒りが爆発したトラブルが先日、東急田園都市線で起きた。実は電車の混雑率は減っているが、なかなか実感は湧きづらい。「通勤地獄」をちょっとでも改善する方法はないのだろうか。

 トラブルが起きたのは1月19日午前7時35分。東急田園都市線上り線の溝の口駅(川崎市高津区)で乗り降りの際、乗客同士が「ぶつかった」「ぶつからない」と口論になった。問題の電車は安全確認の後、約3分遅れで同駅を発車したが、別の列車の安全確認や別の駅のホームに人があふれたことで、遅れは増大した。

 ツイッターにはトラブルについて、「鷺沼駅で『乗りまーす』と言いながら、無理やり体当たりしながら乗った客が、溝の口駅で『降りまーす』と言いながら体当たりしながら降りて、喧嘩(けんか)です」などと書き込まれていた。

 体当たりするというマナー違反は論外だが、ちょうど通勤ラッシュ時の発生で、車内の混雑が原因の1つであることがうかがえる。混雑で知られる田園都市線ならではのトラブルかと思いきや、実は同線よりも混雑率の高い路線はある。

 国土交通省は主要区間で継続的に混雑率を調べ、「東京圏における主要区間の混雑率」として公表している。

 それによると、2015年度の混雑率のトップは、東京メトロ東西線(木場〜門前仲町、午前7時50分〜同8時50分)とJR東日本総武線の緩行(錦糸町〜両国、午前7時34分〜同8時34分)で199%。田園都市線(池尻大橋〜渋谷、午前7時50分〜同8時50分)は184%で6位にすぎない。主要区間の平均は164%。

 混雑率の目安は、150%が「肩がふれあう程度で、新聞は楽に読める」、180%が「体がふれあうが、新聞は読める」。200%は「体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める」、250%になると「電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない」となる。

 日本民営鉄道協会のまとめでは、大手私鉄の混雑率は1965年度の238%から152%(2014年度)に減った。

 鉄道各社もハード、ソフト両面で混雑解消に向けて取り組みを行い、例えば、東急電鉄は「バスも!」と題したキャンペーンを実施中。田園都市線の池尻大橋〜渋谷間を含む定期券を持つ乗客を対象に、国道246号を運行する渋谷駅方向の東急バスに追加料金なしで乗車できる。

 東京地下鉄は「東西線早起きキャンペーン」を行い、オフピーク通勤・通学を呼びかけ、JR東日本もピーク時の列車増発などで対応している。

 だが、悲しいかな、混雑そのものはなくならない。

 鉄道アナリストの川島令三氏は「昔は混雑で、次の駅に着いてもドアが開かないようなこともあった。その時代を考えると少なくなっているが、五十歩百歩みたいなもので、実感が得られにくいのではないか」と話す。

 今後については「ホームドアの導入が進むと、停車時間が延びてその分、輸送力が落ちる。安全性は増すが、混雑は増えるという方向になる」と川島氏。

 通勤地獄からさよならするには出世して社長にでもなるしかないか。