• 0
  • 32,392
  • 5,790
キャラクター基本画像
ゲスト(aa0000)
スターコイン購入 マイページ キャラクター切替
お気に入り

本部

幽かなるハイド・アンド・シーク

大江 幸平

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/01/28 18:47

掲示板

オープニング

●危険な遊び
 黴臭い室内には、背筋を這いずり回るような冷たさが漂っていた。
 蝋燭の炎だけに灯された薄暗い闇の中。小さな影が芋虫のようにうごめている。

「……ふ、ふっ……ふっ……ふっ!」

 それは一人の少年だった。
 両手両足を拘束され、口元にはぐるぐるとテープが巻かれている。
 額から伝う冷汗を拭うことも出来ずに少年はひたすら地面を這う。何処かにあるはずの出口を探して、ただひたすらに。

 ――助けて、誰か、誰でもいい、助けて。

 少年の声にならない心の叫びをかき消すように。
 ひたり、ひたり、と。背後から恐ろしい足音が近づいていた。

「みーつけた」

 愛らしい声が響く。少女特有のフェミニンな甘い色。
 それなのに、少年は全身が粟立つのを抑えきれなかった。
「だめだめ、ちゃんと隠れなきゃ。遊びにならないでしょう?」
 必死に逃げようとする少年の動きを制止するように、少女はその身体に腰掛けた。おもわず顔を上げる。

 そして少年は見た。美しい少女の透き通った碧眼を。
 そこに人らしい感情は見当たらず、代わりに映り込んでいたのは、今にも泣き出しそうな哀れな少年の顔だった。

「……むーっ! むぅ、む―っ!」
「さあ、次は貴方たちの番よ」
 そう言うと、少女は胸に抱いていた可愛らしいクマのぬいぐるみを少年に押し付ける。
「パディ。ジョシュと仲良くね?」
 パディと呼んだぬいぐるみに口づけを落とし、少女はにっこりと笑いかける。

「今度は私が隠れるから、早く見つけてちょうだいね。きっとよ? でないと――」

 どこからか、生暖かい風が吹く。
 蝋燭の炎がゆらりと揺れ、すぅっと静かに消えた。

「――貴方、パディに殺されちゃうかも」

 わずかな希望すら覆い隠してしまった暗闇の中で、パディのつぶらな瞳が、震える少年の姿をじっと見つめていた。

●幽霊屋敷の秘密
「皆さんには、このお屋敷を調査してもらいます」
 H.O.P.E.ロンドン支部。
 ブリーフィングルームに集められた貴方たちに、職員が事の経緯を説明する。

「事の起こりは一ヶ月前。今回の依頼者であるハロッズ・オルメイソン氏が自身の所有する郊外の屋敷を取り壊そうとしたところ、屋敷内の家具や業者が用意した工具が宙を飛び交い、作業員が怪我をする等のポルターガイスト現象が発生したそうです」
 さほど大きくもない二階建ての古びた屋敷の外観が、ホログラム映像となって浮かびあがっている。
「オルメイソン氏はそれからも何度か工事を進めようとしたらしいのですが、ポルターガイスト現象は日に日に激しさを増していったそうで、今は完全に工事もストップしている状態です」

 職員は気怠げに短く息を吐いた。

「……幽霊屋敷自体は、ロンドンでは決して珍しいものではないんですけどね。ただ……今回の場合、少しだけ状況が特殊なんです」

 件の屋敷がある区域。その近所に住む少年『ジョシュア・ウィンストン』が二週間前から行方不明になっている。職員はそう説明して、言葉を続ける。

「少年が完全に消息を絶つことになる日の前日に、彼がオルメイソン氏の屋敷に入っていくところを目撃した方がいるそうです。その日は工事も行われておらず、屋敷内は完全に無人だったそうですが、翌日には多くの関係者が屋敷内に立ち入っています。ですが、少年の姿を見た者は――誰もいません」
 その言葉に、話を聞いていたエージェントの一人が眉をしかめた。
「状況から判断して、我々はこれを『イマーゴ級』従魔の仕業だと結論付けました。もしそれが正しければ、少年が屋敷内の何処かに捕えられている可能性があります」

 貴方のような能力者と英雄たちにとっては、単なる思念体に近い『イマーゴ級』など大した脅威ではないだろう。
 しかし、仮に少年が捕獲されライヴスを吸収されているとすれば、少年の命が危ういのはもちろん従魔の成長を見過ごすことにもなる。

「ただちに現場へ急行し、調査を開始してください。目的はポルターガイスト現象を発生させていると思われる従魔の討伐、それから仮に屋敷内で少年を発見した場合は迅速な対応と保護をお願いします」

 お互いに顔を見合わせたエージェントたちは一斉に立ち上がる。
 同じく、動き出そうとした貴方を呼び止めるように、職員がふと思い出したといった調子で呟いた。

「そういえば……オルメイソン氏にはお孫さんが一人いるらしいんですけど、その子が古いお屋敷をずいぶんと気に入っていたみたいなんです。学校でもろくに友達も作らず、大半の日は一人でお屋敷の中に閉じこもっている……と、愚痴まじりにお訊きしました」

 何かを深く思案するように、その瞳がうつむいた。

「その子が特に大好きだった遊びが――かくれんぼ、だそうですよ。……なんだか、気になりませんか?」

解説

●目標
・屋敷内の調査
・イマーゴ級従魔の討伐
・行方不明になっている少年の発見および保護

●場所
・ロンドン郊外にある古い屋敷。
 構造は二階建て。庭付き。
 一階の内訳は『広間』『居間』『応接間』『食堂』『厨房』『浴室』『書斎』。
 二階の内訳は『寝室A』『寝室B』『子ども部屋』『物置』。
 食堂の横にある裏口からは『庭』へと出ることが出来る。

・無類の収集家として知られるオルメイソン家の先代当主が秘蔵していたコレクションの集められた『秘密の図書室』が何処かにあるとされるが、その入口が何処に存在しているのか、本当にその図書室はあるのか、真実を知る者はすでに誰も居ないとされている。

●登場
・『ハロッズ・オルメイソン』
 依頼人。屋敷の持ち主。
 イリーナの父である『ロイド』は実の息子だが、その妻共々、一年前に事故で失っている。
 調査には協力的だが、あまり身内のことについては語りたがらない。
 厳格な人物として知られているが、不幸な境遇にある孫娘に対しては過剰な愛情を注いでいる。

・『イリーナ・オルメイソン』
 屋敷の持ち主であるハロッズの孫。友達のいない孤独な少女。
 気性は大人しいが、常に人を寄せ付けない雰囲気を放ち、自分に敵意を向けてくる相手には容赦しない冷徹な一面がある。
 『パディ』と名付けたクマのぬいぐるみを溺愛している。パディは亡くなった両親から貰った宝物らしい。
 最近まで、屋敷の中でずっと『何か』を探していたようだが、今はその様子はない。
 暇さえあれば屋敷に出入りしているので、屋敷に行きさえすればきっと会うことが出来るだろう。

・『ジョシュア・ウィンストン』
 屋敷の近所に住む少年。二週間前から行方不明になっている。

プレイング

黒金 蛍丸aa2951
人間|16才|男性|命中
イリーナの機嫌を取るために…という言い方は…どうかと思いますが、「かくれんぼ」が好きなようですし、英雄の詩乃がこういうお屋敷で「かくれんぼ」をしてみたいということにしていただいて、「屋敷内」に入れるかどうかを話してみようと思います

捜索範囲は僕は1階、詩乃は2階を探してみることにしましょうか。
水なしでは人は1週間生きれませんし誰かが世話をしている可能性が?
そういえば、ハロッズさんは調査には協力的だそうですし、イリーナさんとかくれんぼをしていることの報告をしながら
「隠れたら簡単に見つかりそうな場所がないか」を聞いてみましょうか。
それと、イリーナさんがどんな子なのかも聞いておきます。

スマホをマナーモードにしておき、茨稀さんからの連絡があった場合、それを「ジョシュア少年発見」の合図とし、仲間に連絡、急行

戦闘をイリーナさんが見たら、大切なぬいぐるみを皆がいじめていると捉えるかもしれません。
ですので、イリーナさんが戦闘を見ないように気を配り、ナイチンゲールさんが彼女を守る行動をフォロー

戦闘に参加した場合パディに憑いた従魔はパニッシュメントで追い払います。
注意としては「ぬいぐるみ」は彼女にとってかけがえのない宝物だと思うので、絶対に傷つけないように気を配りながらの対処をします。

従魔退治後はジョシュア少年の保護、もしも、弱っているようなら携帯品に入れた水筒のスープを注いで渡します。
その後、救急車に連絡

イリーナさんを叱ろうと思います、事情はどうあれ、人一人の命を奪うところだったのですから。
もしかしたら、従魔に友達になってあげる、両親を生き返せることができると心に付け込まれたかもしれないですが…
イリーナさんを叱るだけでなくイリーナさんの理由もきちんと聞こうと思っています。
でも、これだけは言っておかないと…寂しいときは今度は僕と詩乃で遊びに来ます。「また、かくれんぼしましょうね?」
玖渚 湊aa3000
人間|17才|男性|命中
「2週間も行方不明なんて…だ、大丈夫かなその子
『いやー多分きっと…
「い、言うなよ絶対!そうならない為に俺達が行くんだから!

幽霊屋敷に消えた男の子…!
早く見つけてあげなきゃ…!

屋敷内の捜索は他の皆を頼ろうと思う
俺は情報収集に専念!

工事をしていたならその作業計画を立てる為に屋敷の見取り図を使ってたんじゃないかな?
あったらハロッズさんに訊いて手に入れておきたい
見取り図は皆と共有

ポルターガイストの起きた部屋・時刻
発生時にイリーナが何処にいたか
イリーナが探し物をし始めた時期(よく持っていたのに無くなった物が無いか?等)

ポルターガイストの発生が多かった部屋があればそこが怪しいかも
ハロッズさんにはイリーナの事も詳しく訊いておきたい
わかったことがあれば都度皆と共有!
「イリーナさんの事、愛してらっしゃるんですね
「俺もじーちゃんがいて色々面倒見てくれるんです

やっぱり秘密の図書室が怪しいよね
ハロッズさんに先代に仕えていた使用人さんと連絡が取れないか訊いてみる
先代がよく出入りしていた部屋とか
何を収集していたのかとかわからないかな
またイリーナの両親や事故後の彼女の様子も少しずつ伺う
「そういえばどうして取り壊そうとしたんですか?

厨房に最近使われた形跡がないかも調べたい
事件の時系列や人物をノートに整理していく

*ノイル
へらへらしつつも冷徹な一面はあるが
友達である湊の為なら協力は惜しまない

相変わらず湊くんテンパってるけど
オレはいつも通りね

オペレータの言葉が過去形なのが気になる
→イリーナは死んでいるのでは?

自身はイリーナと行動
後ろに立って彼女の様子を見つつ屋敷に関する事を尋ねる
『こんな所に一人で?

自身を嫌なヤツにする事で他の皆に好感を持ちやすくなるようにしたい
『へー、こんなぼろーいお屋敷が?

どうしても見つからない場合の最終手段としては屋敷を壊す等のハッタリをイリーナに持ちかける
『命がかかってるからさ、悪いね
リジー・V・ヒルデブラントaa4420
獣人|14才|女性|攻撃
表向きポルターガイストの調査として
気になる場所→書斎・寝室・庭
「そちらは任せましたわよ、オーリャ
『そっちも任せたよぉ。それじゃあまた後で☆


探索中心
少年がこの屋敷にいるとして、秘密の図書室とやらにいるのなら見つからないのも分かりますが、さて
それにしても、何故急に取り壊しを?ハロッズさんに聞けるかしら

先ずは定番の書斎・寝室を(暖炉や本棚が動いて等
一階か二階かは関係なし。外からと中からで見た広さが違う部屋は隠し部屋がある筈で、隠し扉を開けたら下への階段が~もよくある事
無類の収集家なら相当な数を秘蔵出来る部屋→地上ならば見つけられない筈無い→地下?
業者の証言→大人の視点では見つけにくい場所?
庭は草木に隠れていないか
壁・岩・絵等一見不自然でない所を確認


収集家でポルターガイストねぇ。呪いの人形でも持ってんじゃないのぉ?なーんてねぇ
僕はイリーナと遊びつつしれっと聞き込みやっとくよ
他に遊ぶ人いれば共に
『僕独りなんだよね…君、良かったら僕と遊んでくれないかな?
胸の内は秘め、寂しがっている子に見える様に演じ、彼女へは好意を前面に
本来の感情は人形だからこそ相手に善も悪もなく、故にどちらでも見る。イリーナも、ハロッズも
『折角広いんだしさぁ、かくれんぼでもしようよ!
『イリーナ、どっか見つからない場所ってない?一緒に隠れれる位の広さのさ!

最終手段は秘密の共有…大事な事を自分にだけ話してくれたと好意を感じさせる手法
『イリーナ、君にだけ特別に教えてあげる。…僕がここに来たのは皆とは別の理由なんだ
『…僕はあるものを探してるんだ。死んだ僕の家族に所縁ある物でね、ここに住んでた収集家がどこかに秘蔵してるって聞いて、せめて一目見たくて…イリーナ、君、場所に心当たりない…?
ま、嘘だけど。探し物は聞かれたら適当に

他の人はどうか知らないけど、そのぬいぐるみ可愛いから僕は許してあげる☆
別に彼女の事も嫌いじゃないしねぇ
茨稀aa4720
機械|17才|男性|回避
『じいさんに子供相手、か…
『色っぽいおねーさん相手なら喜んで、って感じなんだけど
「…ファルク、寝言は寝てからにして下さい

事前
可能なら救急車手配
屋敷の見取り図類の入手
→各自携帯し部屋割り等を数字等で分け情報共有提案
蛍丸と連絡先交換必須

調査
ハロッズの知らない外のイリーナの顔を知る
例え友人が居ない彼女でも様子位は学友でも分かると判断
→イリーナの同級生に茨稀が事情聴取
*最近(特にこの2週間)の彼女の様子
*1年前の事故からの彼女と以前とで変わった点
*屋敷に関する噂
*彼女は何か屋敷のことを言っていなかったか
屋敷近所周りの事情通的な主婦達にファルクも上記事項+α聴取
→屋敷付近でのイリーナやジョシュアの様子を知り得る可能有
*ジョシュアは元々、屋敷に興味があったのか
*彼は屋敷内に過去入ったことはあるか
*2週間前、屋敷内に入っていった彼の様子
*屋敷について彼は何か言っていなかったか

屋敷内
事情聴取の上、仲間とは別方向からのアプローチ
共鳴後潜伏使用で屋敷内に侵入
仲間とイリーナの様子を天井裏や物陰から観察
イリーナが屋敷内移動時は潜伏使用の侭で追跡
→ジョシュア監禁が事実なら、露顕の不安払拭に彼の許に行くと推測
→必要時罠師使用

発見時
蛍丸のスマホを一度だけ鳴らし、自身はその場の様子を観察
変わった点や違和感は無いか確認
→監禁状態の人物の傍にぬいぐるみが有るのは怪しい≒従魔と推測
蛍丸に事前準備した部屋の番号等をメール連絡
即時応援要請

戦闘
ぬいぐるみとイリーナ、ジョシュアを引離す
常に動き回り予想外の場所から攻撃
ジョシュア護衛を兼ね、必要時応急処置
*救急救命バッグ使用
*脱水が見られるならば予め水筒に入れて来た食塩水を飲ませる
従魔を追い出す形を取る為、なるべくぬいぐるみには傷を付けない
ジェミニSで混乱を招きつつ攻撃、更なる好機を作る

戦闘後
イリーナの望みを尋ね、実現可能なら尽力


イリーナ達含め名前+さん呼び
アド/称号歓迎
ナイチンゲールaa4840
機械|20才|女性|攻撃
【心情】
独りは寂しいものね

【目的】
依頼解決を通して関係者全員を救う

【準備】
ジョシュアの事後ケア用に吸収の良い飲料やブドウ糖チョコ用意
「昔一度だけ来た」「取り壊しと聞いて見納めに」を口実に屋敷へ
異論なければハロッズさんと口裏合わせ
見取り図も見せて貰い構造把握
他、仲間の提案には柔軟に対応

【行動】
へぇ…素敵な家
壊しちゃうのがもったいないね

>イリーナ
…もしかしてイリーナ?
初めまして、私はナイチンゲール
よかったら案内頼める?

かくれんぼするなら一通り見ておきたい
構造に不審点があれば気に留めつつ
でももう調べ尽くされてそう

>かくれんぼ
物置に隠れる
もし鬼になったらやっぱり物置に
別に大した理由があるわけじゃない
ただ私が子供の頃好きな場所だっただけ
そこは面白い物ばかりで…外の嫌なことを忘れられたから
それにイリーナが例の部屋を知ってるとしたら偶然だと思うの
悪戯で動かした置物が実は仕掛けだったとか
…そう都合よくいかないかな

>秘密の部屋
ジョシュア発見まで注意深く見渡す
発見次第パディとの間に割り込む
→仲間が先行するならイリーナに注視→不審時抱き上げて拘束
交戦は他に任せて子供達を庇う
→状況次第で身を呈すかハイカバーリング
隙があればクロスガード




イリーナがああなのはハロッズさんのせい
ただ可愛がるんじゃなく、きちんと向き合ってあげて
それは同じ傷(=家族を亡くした)を持つ貴方にしかできないから

私にはいなかったから
阪須賀 槇aa4862
獣人|21才|男性|命中
▲準備
発信機と盗聴器と小型カメラ

▲行動
聞き込み調査と隠れんぼ
この世界の常識に疎く、屋敷にも外国にも馴染みが無い
《ホームステイ》という事で、海外の人や文化に触れる事を目的とする

妹が居る記憶がある為、少女に対しては警戒が無い
「か、可愛い、可愛い幼女だぞ弟者!」
『OK兄者、時に黙ってろ』
槇は平和ボケが激しい為、油断が強い
誄は槇の後ろから状況を俯瞰する
発信機を体に付け、仲間にすぐ連絡出来るようにスタンバイ

逆に平和ボケ度を利用し信用を得る行動を取る

▲ハロッズ
『お世話になります』
「はえ~すっごい豪邸……ローン付きミニマム我が家とは大違いだ」
『父者が泣くぞ兄者』
「母者も小さい言ってたし良いだろ」

・それとなくイリーナの話、家族の話を聞く、身の上話混ぜつつ

『可愛いお嬢さんですね』
「俺たちにも妹が居るんです、底抜けに明るいけど」
『お嬢さんはお孫さんですよね?この家には他の方は?』

「家族ですか?うーん、まぁ居ますね。元気ですよ」
『ただ……別世界っぽい、ですけどね…』
「うぐ、まぁ、なぁ…」
『……会いたくても、会えないんですよ、俺たち』
「……ま、その話は時に良いだろ!

▲イリーナ
「どうもお嬢さん、ないすちゅーみーちゅー」
『すっさまじくカタコトだな兄者』
「うるさいよっ
さ、さて……《文化交流》って事でニッポンから色々もってきたんだけど、どう?」
『携帯ゲーム機ねぇ……』
「ともかく、遊ぼっか」

『丁度、お嬢さんくらいの妹が居てね。隠れんぼが好きだったな』
「上手く隠れ過ぎて一日見付からなかったりな!いっちょやる?」

▲隠れんぼ
あちこちにカメラ等々セットしつつ
「流石に、場所は絞ろうか、手加減抜きだと見付けらんないし」
『オススメのエリア、決めて貰って良いかな?』

ライヴス通信機で仲間にそれとなく連絡はしつつ


▲終幕
『何とも言えない、話だな…』
「…なー弟者、俺たちの世界もさ、知らないだけで実は色々あるのかな」
『さーなぁ…』

リプレイ

●始動
 湿った空を厚い雲が覆っている。吹き抜ける風は冷たい。
 件の幽霊屋敷を見上げる一同。
 その外観は確かに古めかしいものだが、実際に近くで見ると老朽化しているような印象はない。
「(……取り壊す、と聞いていたのですけれど。とてもそんな風には見えませんわね)」
 リジー・V・ヒルデブラント(aa4420)が訝しげに目を細める。
「ハロッズさん。早速ですが、屋敷の見取り図を見せて頂けませんか」
 玖渚 湊(aa3000)の提案にハロッズが取り出した見取り図を広げる。
 一同が見取り図を参考にしながら、各自の情報や行動を共有するための準備を整えていると、ハロッズが顔を上げた。
「……イリーナ。ここへは来るなと言っただろう」
 視線の先に立っていたのは、ハロッズの孫であるイリーナだった。
「その人たちは?」
「……私が呼んだ。屋敷の安全確認をしてもらうだけだ」
 少女の碧い瞳は冷たい。わずかながら敵意が見える。
 彼女があまり人を信じていないことは、その目を見ればすぐに解った。
「孫のイリーナです。ご挨拶しなさい」
 ハロッズに促され、イリーナがちょこんとお辞儀する。
「か、可愛い、可愛い幼女だぞ弟者!」
『OK兄者、時に黙ってろ』
 興奮しているのは阪須賀 槇(aa4862)と阪須賀 誄(aa4862hero001)の兄弟。そんな二人を尻目にイリーナへ声をかけたのはナイチンゲール(aa4840)だった。
「初めまして、私はナイチンゲール。よかったら案内頼める?」
「……お屋敷を壊さない?」
「もちろん。そんなことしないよ。壊しちゃうって聞いて、もったいないって思ったくらい」
 その言葉を聞いて微笑んだイリーナに、黒金 蛍丸(aa2951)と詩乃(aa2951hero001)が声をかける。
『は、はじめまして……!』
「イリーナさん、よかったら僕達も一緒にいいかな?」
『じゃあオレもそっちかな。面倒なことは湊くんに任せるね』
 便乗したノイル(aa3000hero001)は、人懐こい笑顔を浮かべながら湊の肩をぽんと叩いた。
 その背後でリジーがオーリャ(aa4420hero002)にこっそりと囁く。
「そちらは任せましたわよ、オーリャ」
『そっちも任せたよぉ。それじゃあまた後で☆』
 そうして、一同は調査班と探索班の二手に分かれることになった。
『じいさんに子供相手、か……』
 屋敷内へと入っていく探索班を見送りながら、ファルク(aa4720hero001)が不満げに呟く。
『色っぽいおねーさん相手なら喜んで、って感じなんだけど』
「……ファルク、寝言は寝てからにして下さい」
 茨稀(aa4720)がイリーナの背中をじっと見つめながら。
「俺たちは俺たちの仕事をしましょう。……気になることは多いですから」
『あぁ、この地域に美人が多いといいけどな』
「……気になるのはそこじゃありませんから」

●誘い
 屋敷内の広間には、どこか冷たい空気が漂っていた。
『すごく綺麗なお屋敷ですね!』
「私がちゃんとお掃除してるもの」
 感心する詩乃にイリーナが少し自慢げに言う。そんな二人を見て蛍丸が柔らかく微笑む。
『いつもこんな所に一人で?』
 ノイルが尋ねると、イリーナの目が伏せられる。
「おじい様は私がここに来るのを嫌がるの。きっとそのせいで私にお友達が出来ないんだと思ってるんだわ」
『お友達、いないんだ?』
「いないわけじゃないわ。ただ、その……」
 ふと、オーリャが淋しげな表情を見せる。
『ねぇ、イリーナ。僕も独りなんだよね……君、良かったら僕と遊んでくれないかな?』
「え? 遊ぶって……なにするの?」
『折角広いんだしさぁ、かくれんぼでもしようよ』
 その言葉に一瞬だけ目を輝かせたイリーナだったが。
「で、でも……いいの? 貴方たち、お仕事に来たんじゃ……」
『いーのいーの。ね? みんなもいいよね?』
 賛同するように他の面々もうなずいた。
『丁度、お嬢さんくらいの妹が居てね。隠れんぼが好きだったな』
「上手く隠れ過ぎて一日見付からなかったりな! いっちょやる?」
 やる気満々の一同に気圧されるように、イリーナは答えた。
「わ、わかった……!」

 ハロッズに通された応接間は、綺羅びやかな装飾で彩られていた。
 腰掛けた湊は常に持ち歩いている分厚いノートを取り出す。
「まずお訊きしたいのは、ポルターガイスト現象についてです」
 ハロッズは神妙な顔で語りだす。
 彼の話によれば、これまでにポルターガイスト現象が発生したのは三度。
 一度目は工事の初日である一ヶ月前。場所は食堂。
 二度目はそれから一週間後。場所は書斎。
 そして三度目。さらに一週間後。場所は――
「この応接間です。その場には私もいました」
「ここですか……?」
「はい。実際に現場を見てもらうべきかと思いましたので」
 湊はメモを取りながら、何かに気付いたように言う。
「つまり、最後にポルターガイスト現象が発生したのは、二週間前……。間違いありませんか?」
「えぇ……その日から工事は中止しておりますので」
 なるほど。湊が静かに呟き、葵色の瞳をハロッズに向ける。
「――ジョシュア・ウィンストン。この名に聞き覚えがありますね……?」

●索と策
 イリーナを巻き込んで始まったかくれんぼの最中だったが、エージェントたちの目的はあくまで屋敷の調査であり、事件の真相究明である。
 というわけで、一同は自由に屋敷内へと散らばっていた。

 厨房を訪れた蛍丸は蛇口を捻ってみる。清潔な水が流れ出た。
 冷蔵庫を覗いてみるも中身は空だった。日常的に利用されているような痕跡はない。
「(水や食事なしで人は生きられない。誰かが少年の世話をしている可能性は高いはずですが……)」
 考え込む蛍丸。その背後から声をかけられる。
『……蛍丸様』
「詩乃? ずいぶんと早かったですね。二階はどうでした?」
『え、えっと……寝室と子ども部屋を見て回ったんですけど、特におかしなところはなかったです!』
「そうですか。……あれ、たしか物置もありましたよね?」
『うー。そ、そのですね。物置はちょっと……入りづらいというか、なんというか……!』
「はい?」

 木箱や家具などが雑然と置かれた狭い物置にて、ナイチンゲールが膝を抱えて丸まっていた。
「……ふぅ。落ち着くなぁ」
 その表情は穏やかだ。それもそのはず。彼女にとって物置は特別な場所だった。
「(……子どもの頃はよくこうしてたっけ。静かだし、一人でいられるし……)」
 ぼんやりと埃っぽい室内を見渡す。
 さすがに歴史のある屋敷と言うべきか。年代物の骨董品やら、高級そうな物品が溢れている。
「(そういえば……物置には面白いものがいっぱいで、外の嫌なことも忘れられたんだよね……)」
 ふと思い立ったように、ナイチンゲールは物置を漁りだす。

 紙の匂いが充満する書斎。
 リジーは壁や本棚に何か仕掛けがないか、丹念に各所を調べていた。
「隠し部屋は定番ですものね……」
 だが、整理整頓された書斎にあったのは貴重な文献の山だけだ。
 特におかしなところも見受けられない。
「……残念ですわ。これはこれで興味深いですけれど」

「ねぇ、オーリャは人形なの?」
『そうだよ。可愛いデショ?』
『あ、自分で言っちゃうんだね』
 居間の隅っこにて。
 イリーナを挟むようにしてオーリャとノイルが身を潜めていた。
「人形なのに、どうして喋れるの?」
『どうしてって言われてもねぇ。そういうものだからさ』
「……私のぬいぐるみも喋れるようになるかしら」
『君のぬいぐるみ、たしかパディって言うんでしょ?』
「どうして知ってるの」
『おじい様に訊いたんだよ。今はどこにいるの? オレも会ってみたいな』
「今は……その、ちょっと……お留守番してるのよ」
 その目が伏せられる。少女が何かを隠していることが二人にはすぐ解った。
『ふーん。じゃあパディは一人ぼっちなんだ。かわいそうだね』
「一人じゃないわ。兄弟もいるもの」
 兄弟。その言葉が気にかかった。
『そうなんだ。僕も姉様と兄様がいるよ!』
「オーリャの姉様と兄様も喋る人形なの?」
『あははっ、違うよ』
 イリーナはオーリャに心を許し始めている。そう推察したノイルは一計を案じることにした。
『それにしても古いお屋敷だよね。幽霊が出るっていうのも納得だよ』
「幽霊なんていないわ。それに、古くたって……素敵な場所だもの」
『へー、こんなぼろーいお屋敷が?』
 キッとノイルを睨みつけるイリーナ。
 あえて馬鹿にするような口調で言ったのだが、少女はそれに気付かない。
『オレだったら頼まれてもこんなとこ住みたくないけどなあ』
「……貴方にはわからないわ! もういい、オーリャ行きましょ」
 イリーナに手を引かれ着いていくオーリャだったが、その目はノイルに向けられていた。
 視線を合わせたノイルが――静かに微笑んだ。

●約束
「可哀想な子よね。早くにご両親を亡くして……」
「ハロッズさんも悪い人じゃないんだけどね……」
「そういえば前までは暗い顔しか見なかったけど……最近は楽しそうだったわね」
「お兄さん、少し家に寄っていかない? 上等なワインがあるの。旦那が隠してたものなんだけど」
 その誘いを丁寧に断り、礼を言うとファルクはその場から離れた。
『……あぁ、疲れた。お喋りなおねーさま達だったぜ』
 先程までファルクが話していたのは屋敷の近所に住む奥様方だ。
 屋敷やイリーナについての情報収集を行っていたのだ。
「ファルク……成果はありましたか?」
『わかったのは、ここいらにゃ欲求不満の奥様方ばっかりってことくらいだ』
「……はぁ」
『そっちも芳しくなかった感じか?』
「イリーナさんについてはあまり……。ただ、ジョシュアさんのことは少しだけ」
 彼は優しい少年でイリーナのことをずっと気にかけていたようだ。
 そのせいか以前にも何度か屋敷を訪れていたらしい。
 恐らくは失踪当日もイリーナに誘われて屋敷へ行ったのではないか。
『なるほど。やっぱり怪しいのは嬢ちゃんか』
「……直接イリーナさんを監視しましょう。尻尾をつかめるかも」
『虎の尾を踏まなきゃいいけどな』
 ファルクが皮肉げに笑った。

「……行方不明の少年がこの屋敷に監禁されている、と?」
 湊は静かにうなずいた。
「最後にポルターガイスト現象が発生したとき、イリーナさんはどちらに?」
「……イリーナを疑っているのですか?」
「もしも本当に少年が捕えられているとしたらすごく危険な状態だと思います。……今はとにかく、多くの情報が必要です」
 信じられないといった顔をするハロッズだったが、その言葉を聞いて思い直したようだ。
「……アレはずっと工事に反対していました。あの日も来るなと言い聞かせたのですが、結局は屋敷に……」
「そもそも、どうしてお屋敷を取り壊すことに?」
「それは……なにしろ古い建物ですので……」
「何度も修繕を重ねているように見えましたけど」
 息をつまらせるハロッズ。やがて静かに息を吐くと、観念したかのように呟いた。
「……わかりました。もう、すべて、お話しましょう」
 そして、ハロッズは語りだした。
 もともとこの屋敷には、ハロッズの息子一家が暮らしていたこと。
 突然の事故で夫妻が亡くなり自分がイリーナを引き取ったものの、幼い孫との接し方がわからず、心の距離が開いてしまったこと。
 イリーナが今だに両親との想い出が詰まった場所であるこの屋敷に執着しており、外の世界に目を向けようとしなかったこと。
 両親への未練を完全に捨てさせるために。この屋敷を取り壊すと決めたこと。
「老人の愚かな考えだったのでしょう。結果的に……あの子はまた大切なものが奪われてしまうという恐怖に囚われてしまっている」
「イリーナさんの事、愛してらっしゃるんですね」
「妻にも先立たれました。イリーナは……私にとっても、唯一の家族です」
「俺もじーちゃんがいて色々面倒見てくれるんです。だから……わかります。イリーナさんにもハロッズさんの気持ちは伝わっているはずです」
「そうだといいのですが……」

 その頃。オーリャはイリーナの機嫌を取るために談笑を続けていた。
 すっかり心を許したのか、イリーナの表情は明るい。そこでオーリャは核心を突いてみることにした。
『イリーナ、君にだけ特別に教えてあげる。……僕がここに来たのは皆とは別の理由なんだ』
「別の……?」
『……僕はあるものを探してるんだ。死んだ僕の家族に所縁ある物でね、ここに住んでた収集家がどこかに秘蔵してるって聞いて、せめて一目見たくて……イリーナ、心当たりない?』
 その言葉にイリーナは俯いた。明らかな迷いが見て取れた。
 だが、やがて決心したように。顔を上げる。
「一つだけ、条件があるの」
『条件?』
「パディには双子の兄弟がいるの。偽物じゃなく本当の兄弟よ。でもおじい様に隠されてしまって……まだ見つかっていないの」
『その子が帰ってきたら、見せてくれるわけ?』
「そうね。約束するわ」
『ああ、うん。約束ネ』
 おかしいな。また探し物が増えた、と。オーリャは内心で苦笑した。

●四つの目
「こんなもんでいいかな~っと」
『ノリノリだな兄者』
「幼女を合法的に盗撮できるぜヒャッホーとか思ってないぞ!」
『その顔で言われても説得力皆無だな』
 槇は楽しそうに自分で持ち込んだ小型カメラを設置していた。
 二人が今居るのは食堂だが、すでに数カ所で同じことをしている。
「そういや、ここって幽霊屋敷なんだよな? 変なの写っちゃったらどうしよう」
『動画サイトにでも投稿すりゃいいんじゃないか』
「やらせ乙って感じで叩かれそうだな……」
 その背後で。バタリ、と。何かが倒れる音がした。
「ん?」
 振り返る槇。もちろんそこには誰もいない。
『今、なんか音が……』
 ガタガタ。ガタガタッ。
「お、おいィ!?」
『悪ふざけはやめろ兄者』
「オレじゃねえって!」
 ピタリ、と。音が止んだ。
 そして、二人は見た。
 すぅっと空中を浮遊する、刃物。その切っ先は――二人に向けられている。
『「ぎゃああああああ!?」』

 屋敷内に響き渡る悲鳴。
 騒ぎを聞きつけた面々が集まってくる。
「何事ですか……!?」
 蛍丸と詩乃が見たのは絶叫しながら走り回る槇と誄の姿だった。
「出た! 出た!」
『洒落になってないだろjk』
「二人共、落ち着いてください。何があったんですか……?」
 湊が事情を聞き出す。その背後を小さな影が駆け抜けていった。

「……バレて、ないわよね」
 庭の片隅でしゃがみこんでいるのは、イリーナだった。
 何かを隠すように、せっせと煉瓦を動かしている。
「……よし」
 騒動に乗じて作業を終えた少女は、その場から素早く立ち去っていった。

 ――それを見ていた、二つの影が動く。

『……アタリ、かね』
「……恐らくは」

 それからすぐに、蛍丸のスマホが一度だけ鳴った。

●秘密
 庭の探索は一斉に始まっていた。
 それぞれが屋敷の外壁に沿うようにして歩き、草木を掻き分けて目を凝らす。

 ふと立ち止まったのはリジーだ。位置的には書斎の裏側に当たる場所。
 土台部分の煉瓦だけ色が微妙に違うところがある。触ると明らかに新しい。
「これは……」
 そこへ聞き慣れた明るい声が。
『姉様だ!』
「なに、してるの」
 尋ねたのはオーリャではなく隣にいたイリーナだった。
 その不安そうな表情。やはり、と思う。
「……地下室への入口は、ここですのね?」
「っ!?」
 驚くイリーナの背後から、茨稀とファルクが姿を現す。
『覗き見なんて趣味じゃねえけどな。さっきお嬢ちゃんが何か隠してたの、見ちまったぜ』
「……ど、どうして」
「入口は今まで誰にも見つけられなかった。それは例えば大人の視点では見つけにくい場所にあったから……。そして、収集した品を秘蔵しておくのに十分な場所は屋敷内にありませんでしたわ。つまり秘密の図書室は――地下に存在している。違いまして?」
 リジーの推理に言葉を失うイリーナだったが、やがて観念したように認めた。
「……そうよ。そこが私の秘密基地。今まで誰にもバレなかったのに」
『イリーナ、見せてくれるよね?』
「だ、だめよ。約束したでしょ」
「約束?」
「……あれ、みんな集まって何してるの」
 やって来たのはナイチンゲールだった。何かを腕に抱えている。
「物置の天井裏でこんなの見つけたんだ。可愛いからイリーナが喜ぶかなって」
 それはパディそっくりのぬいぐるみ。
 そう――ハロッズが隠してしまったパディの双子だった。
『約束は守らないとねぇ』
 呆然とするイリーナにオーリャが笑いかけた。

 黴臭い室内。その地下室には、冷たい空気が漂っていた。
 ぼんやりとした灯りの中、立ち並ぶ本棚の隙間に影が揺れる。
 地下への入口を開いてくれたイリーナと待機班を地上に残し、他の面々は秘密の図書室へと足を踏み入れていた。
「……ライヴスの気配ですね」
 蛍丸の視線が、ある一点に向けられた。
 壁を背にして少年がぐったりと横たわっている。
「居ました! 保護を!」
 その声に慌てて駆け寄ったナイチンゲールが憔悴した少年を保護する。
 次の瞬間――茨稀が声をあげる。
「従魔……!」
 地面に置かれた一つのぬいぐるみ。その愛らしい瞳から、不気味な気配が漏れている。
 能力者たちは確信を得る。従魔はそのぬいぐるみに憑依している。
「任せてください……パディは、傷つけない……!」
『蛍丸様……!』
 共鳴の光。白髪が靡き、紅い輝きを放つ左眼が対象を捉える。
 ――パニッシュメント!
 ライヴスの光が放たれる。それはパディに憑依した従魔だけを――正確に捉えていた。

 地下室の暗闇が切り裂かれ、やがて光が収まった頃。
 そこには、不気味な気配だけを失った無傷のパディがちょこんと座っていた。

●その名は
 事前に手配していた救急車でジョシュアは搬送されていった。命に別状はない、とのことだ。
 体力は尽きかけていたものの、吸収されたライヴスが微量だったのは幸運と呼ぶ他ないだろう。
「……イリーナ」
 沈痛な面持ちで孫を見下ろすハロッズ。何を言うべきか、彼は迷っていた。
 そんな二人の様子を見かねて、蛍丸と詩乃が近づいてきた。イリーナにパディを手渡す。
「パディは無事ですよ。大切な友達なんですよね?」
「……うん。ありがとう」
 ぎゅっとパディを抱きしめるイリーナの顔を覗き込むように。
「どうして、こんなことをしたんですか?」
「……ジョシュは、この子の代わりだったの。おじい様が……パディから取り上げてしまったから……かわいそうで」
 胸に抱いていたもう一体のぬいぐるみを見せる。
「だって一人は寂しいもの。それは……私がよくわかってるから」
「……優しいんですね。でも、事情はどうあれ貴方は一人の命を奪うところでした。それがどんなに恐ろしいことか、イリーナさんならわかりますよね?」
「……ごめん、なさい」
 詩乃が優しくイリーナの頭を撫でる。蛍丸は微笑んで。
「寂しいときは、僕と詩乃で遊びに来ますから。また、かくれんぼしましょうね?」
 そのやり取りを眺めていたハロッズにナイチンゲールが言う。
「ただ可愛がるんじゃなく、きちんと向き合ってあげて。……それは同じ傷を持つ、貴方にしかできないから」
 私にはいなかったから。ナイチンゲールは心の中でそっと呟いた。
「……仰る通りです」
 ハロッズがイリーナに近づいて、頭を下げる。
「イリーナ、私を許してくれ。私は間違いばかり犯してしまった」
「……ううん、違うの。私が……私がおじい様を……」
「この屋敷は私にとっても大切な場所だ。取り壊したところで、忘れられるはずもない」
「じゃあ、もう……お屋敷は壊さない?」
「あぁ、ちゃんと守っていくよ。想い出と共に。……手伝ってくれるか?」
「……うんっ」
「まずはジョシュアくんとご家族に謝らなければな……」
 これから二人は互いにあらゆる罪を償うことになるだろう。
 しかしそれは、今まですれ違い続けた二人にとって必要なことに違いない。
『何とも言えない、話だな……』
「……なー弟者、俺たちの世界もさ、知らないだけで実は色々あるのかな」
『さーなぁ……』

「……オーリャ」
『んん? どしたの?』
 こっそりと近寄ってきたイリーナにオーリャが微笑む。
「あのね、お願いがあるんだけど……もし、もしよかったら、なんだけど」
『なになに?』
「この子、まだ名前がないの。ママが名前をつけるはずだったんだけど……その前に、いなくなっちゃって……そのままつけられなくて」
 イリーナが持ち上げたのはパディの双子だ。つぶらな瞳がオーリャを見上げている。
「だからね、この子に――オーリャ……ってつけていい?」
『ええっ? そりゃまたなんで』
「だって、そしたら……この子も喋れるようになるかもしれないでしょ?」
『あははっ、なるほどねぇ。もちろんいいよ! 僕は可愛いしね! 可愛いは正義!』
「ほんとっ!?」
『でも、そんな名前つけちゃったらさ……』
 オーリャが楽しそうに笑った。

『――その子、呪いの人形になっちゃうかもね☆』

結果

シナリオ成功度 成功
面白かった! 6 現在のあなたのポイント:0
※投票1回につき1ポイントを消費します。
ポイントがないため投票できません

このリプレイが面白かったと感じた人は投票してみましょう!
投票1回につき1ポイントを消費しますが、「1回投票する毎に【通貨】1000をプレゼント!」
あなたの投票がマスターの活力につながります。

MVP一覧

  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420

重体一覧

参加者

  • 絆の紡ぎ手
    黒金 蛍丸aa2951
    人間|16才|男性|命中
  • 撫子
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 市井のジャーナリスト
    玖渚 湊aa3000
    人間|17才|男性|命中
  • ウマい、ウマすぎる……ッ
    ノイルaa3000hero001
    英雄|26才|男性|ジャ
  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420
    獣人|14才|女性|攻撃
  • エージェント
    オーリャaa4420hero002
    英雄|11才|?|ソフィ
  • エージェント
    茨稀aa4720
    機械|17才|男性|回避
  • エージェント
    ファルクaa4720hero001
    英雄|27才|男性|シャド
  • エージェント
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃



  • エージェント
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • エージェント
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|18才|男性|ジャ
前に戻る
ページトップへ戻る