相次ぐネット検索削除訴訟 分かれる司法判断
インターネットの検索結果をめぐっては、平成26年10月に国内で初めて削除を命じる仮処分決定が東京地裁で出されて以降、削除を求める仮処分申し立てや訴訟が相次いでいるが、司法判断は分かれていた。
最高裁が1月31日付の決定で削除を認めなかった男性の仮処分申し立てでは、27年12月、さいたま地裁が「ある程度の期間経過後は過去の犯罪を社会から忘れられる権利がある」との初判断を示し、削除を認めた。
これに対し、東京高裁は28年7月、「忘れられる権利は法律で定められたものではない」と指摘。児童買春は子を持つ親にとって重大な関心事で、事件から5年程度しか経過していないことなどから、地裁決定を取り消した。
一方、同様に約5年前に迷惑防止条例違反容疑で逮捕された男性については、横浜地裁川崎支部が28年10月、「逮捕歴の公表に社会的意義はない」として、検索結果の削除を命じた仮処分決定を認可する決定を出した。同支部は決定で、男性が当時と違う場所で一市民として暮らし、事件から5年程度経過していることなどから「今も社会的関心を集める事件ではない」と結論付けた。
また、過去に振り込め詐欺事件で有罪判決を受けた男性が逮捕に関する検索結果の削除を求めた訴訟で、東京地裁は28年10月、表示に「公益性」があると認め、男性の訴えを退ける判決を言い渡した。
男性側は「犯罪は10年以上前のもの」などと主張したが、判決は振り込め詐欺の被害が今も深刻で、男性が組織のリーダー格だったこと、執行猶予を終えてから5年ほどしかたっていないことなどから「公共の関心はいまだ希薄化していない」と判断した。
地裁は男性が申し立てた仮処分の判断では削除を命じていた。