トランプ米大統領は31日、「他国は通貨安に依存している。中国はやっているし、日本が何年もやってきたことだ」と米製薬業界幹部との会合で述べ、ドル高をけん制した。発言を受けてニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が1円以上も急伸、一時1ドル=112円08銭まで上昇した。1日の東京外国為替市場でも約2カ月ぶりの円高・ドル安水準となる1ドル=112円台後半をつけた。
円高は東京株式市場の重しとなり、売りが先行。1日の日経平均株価は1週間ぶりに1万9000円台を割り込んだ。午前10時現在は、前日終値比12円41銭安の1万9028円93銭。
トランプ氏は会合で「他国は通貨供給量や通貨安などで米国を出し抜いている。対処していかないといけないことがたくさんある。我々は通貨安について無知だから非常に悪いことになっている」とも述べた。トランプ氏が通貨供給量に言及したことは、市場に大量のお金を流す金融緩和を続ける日欧の中央銀行をけん制することにもつながり、金融政策への干渉になりかねない。
一方、米国家通商会議(NTC)のピーター・ナバロ委員長は31日掲載の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「ドイツは大幅に過小評価されたユーロによって欧州連合(EU)や米国を食い物にしている」と述べ、ユーロ安がドイツの交易条件を有利にしていると批判した。トランプ政権が露骨にドル安を志向すれば、外為市場のかく乱材料になる恐れがある。【片平知宏、ワシントン清水憲司】