インターネットの検索サイトに自身の逮捕歴などが表示される男性らが、グーグルやヤフーを相手取り、検索結果の削除を求めた5件の請求について、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1月31日付で、いずれも退ける決定を出した。小法廷は、検索結果を提供する社会的な意義と、プライバシーに関する事実を公表されない利益を比較し、「公表されない利益が明らかに優越する場合には削除は認められる」との初判断を示した。
5人の裁判官全員一致の意見で削除を認めない判断が確定した。逮捕歴など公共性のある情報の削除に高いハードルを設ける結果となった。時間が経過した個人情報の削除を認める「忘れられる権利」を新たな権利として認めるかについては言及しなかった。
小法廷はまず「検索結果の提供は、事業者の表現行為の面がある」とし、削除請求の対象となるとの初判断を示した。削除を認めるかどうかは、(1)逮捕歴などプライバシーに関わる事実の性質と内容(2)事実が伝わる範囲と具体的被害の程度(3)当事者の社会的地位や影響力(4)表示される記事などの目的や意義(5)記事掲載時の社会的状況とその後の変化(6)事実を記載する必要性--の6項目を考慮要素として判断すべきだとした。
その上で、2011年に逮捕された男性のケースについて「容疑の児童買春は強い非難の対象で、今も公共の利害に関する事項だ」として削除を認めなかった。他4件のケースについては詳しい理由を示さず、削除を認めなかった。【島田信幸】