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イギリス・ウェールズの歴史ーカムログ

ウェールズ語ではウェールズの事をカムリ(仲間)と言います。歴史深いウェールズに触れて下されば嬉しいです

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伝家の宝刀より脅しより強いかも ~たたかうカムリ戦士たち 第7話~

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こんばんは。ウェールズの歴史研究家たなかあきらです。

ウェールズの9世紀~11世紀にかけてウェールズ王家が分裂して戦いを繰り広げる様子を、様々な登場人物の人間模様の物語をシリーズで描いています。
今回はこれまでに登場することのなかったタイプのキャラが登場します。
それは、女性キャラです。
この女性キャラが、今後のストーリーのカギを握るかもしれません。

前話:意外な旗揚げで始まった復活への狼煙 ~たたかうカムリ戦士たち 第6話~

これまでのあらすじ 

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※分割していたウェールズ。緑の部分はイングランド

 

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中世のウェールズは、主にグウィネズ(Gwynedd)、デハイバース(Deheubarth)、ポゥイス(Powys)の三国に分かれた内乱や、アングロサクソン族のイングランドウェセックスマーシア)、さらにヴァイキングに攻められた苦しい時代でした。

9世紀にロドリ大王がウェールズを統一して束の間の平和をもたらしましたが、息子たちは対立しました。長男の暴君アナラウドが制し、敗れた次男カデルは息子ハウェルにウェールズの平和を託します。ハウェルは復活の狼煙を上げますが、荒っぽい性格で隣国の略奪を始めてしまいました。

<登場人物>

ウェールズの王室家系図

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カデルの息子ハウェル。意外と乱暴。

 

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ハウェルの弟クラドグ。ちょっとお調子者。

 

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隣国ダヴィッドの王、ラワルヒ。

 

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ラワルヒの娘、エレン。

 

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ウェールズの勢力地図。

ワルの道へ

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ダヴィッド国、ペンブローク城。

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こんばんはー。ラワルヒさん。

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貴様は誰だ、何しにやって来た。

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僕はケレデギオンから来たクラドクっすよ。ほらほら、最近しょっちゅう略奪と放火がそこら中で起きてるでしょ。
あれ、僕らがやってるんすよー。でもちょっと飽きてきてね。
ラワルヒさん、まだ僕ら暴れ回っていいすかねえ。なんなら、大人しくする手もあるんすよ。


なにっ! ただならぬ緊張感に集まってきたラワルヒの部下たちが、剣を手に取りクラドクを取り囲もうとする。

 


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まあまあ、気が早いな。落ち着いて下さいよ。ちょっとハウェル兄貴の伝言聞いてくれます?


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貴様の要求は何だ?


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物分かりいいね、ラワルヒさん。
僕らが黙るには1万ポンドの年貢と、ダヴィドの統治権がいるって兄貴が言ってるんすよ。


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冗談もたいがいにしろ。何とそんな高額、貴様に出せるわけないだろう?

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まあまあ、ラワルヒさん。そう言わずに。
僕も兄貴も、物分かりがよいラワルヒさんが好きなんすよ。
なら、毎日仕事しにきましょうか?
兄貴ももっと奪っていいって、言ってるし。何なら今ここで。

 

クラドグはニヤリと笑い、ゆっくりと腰に手を伸ばした。スーッと静かな音を立て、あたりに緊張感が高まった。


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どお、この剣、綺麗でしょ。我が家に伝わるウェールズの伝家の宝刀なんですよ。兄貴が貸してくれたんす。

 

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ラワルヒの部下たちも剣を構え、クラドクを取り囲んだ。クラドクは、剣の下から上まで視線を沿わせながら、ゆっくりとラワルヒに向き直った。

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今、見せてあげてもいいっすよ。
僕、賢くて物分かりのいいラワルヒさんが好きなんですけどね。


クラドクが伝家の宝刀を構えた。
ピュッと風が吹き込んだ気がした。


ガラガラガラガラ、、、
ヒェ〜〜

 

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数名の部下の着ていた鎧兜だけが切られ、床にドサリと転がった。

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悪いね、ちょっと驚かせてしまったようだね。でも知ってると思うけど、兄貴はこんなもんじゃないっすよ。ハウェル兄貴を呼んで来ようか?


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わ、分かった。お前の言う通りにする。

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さすがラワルヒさん。兄貴が言ってた通りの人だ。仲良くしようね。ここにサインちょうだい。


クラドクは剣を収め、紙を差し出した。

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ども、ども。またくるね。


クラドクはサインされた紙を懐にしまい、向きを変え帰ろうとした。

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し、しまった忘れてた。これで帰ったら兄貴に怒られちまう。

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ま、まだ何かあるんか?

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そうそう、ラワルヒさんには年頃の娘さんがいましたね。

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ワシの娘がどうかしたのか?

 

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騒がしいわね。お父様、何が起こったの?

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ほう、これはこれは噂どおりの美しさで。
ラワルヒさんのこと信用はしてるんすが、このご時世何がどう転ぶかわかりゃしない。念のために人質として預かっていいすか? 

クラドクは剣に手をやりながら、にやりとした。

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わかったわ、人質になりましょう。ただし、条件があるわ。

 

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何すかその条件って言うのは?

 

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お、おい、エレン・・・・・・

 

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お父様、ここは私に任せてください。簡単に彼らの言いなりにはならないわ。
クラドクさん、あなたのお兄さまに会わせてちょうだい。
それからでも遅くはないでしょう。

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ま、まあ〜いいっすよ。
兄貴は何というか分からないすけどね。

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じゃ、行きましょうか。

 

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美しいが、妙な怖さを感じる女だ。
ちょっとビビっちまったぜ。

 

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最後に

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クラドグは乱暴ですね。とっちめてやりたいです。

 

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クラドグは歴史上どんな人物か分からないけど、ハウェルはどう猛だったようだなあ。
戦うのが好きで暴れまわっていたようだよ。

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そんな人物が主人公だなんて・・・ウェールズは纏まるのか不安です。
前のアナラウドみたいになったら、いやだなあ。

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という訳で次回をお楽しみに。先ほど出たアナラウドについては1~5話に出てきますよ。

※歴史上の出来事や人物が登場しておりますが、フィクションでたなかあきらのオリジナルストーリーです。

第一話:
3本の矢はここにも存在した~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第1話~ 

第二話:
絡み合わない結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第2話~ 

第三話:
急流に変貌した結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第3話~ 

第四話:
磁力の反転 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第4話~ 

第五話:

混乱の果ての新たな希望 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第5話~ 

第六話:
意外な旗揚げで始まった復活への狼煙 ~たたかうカムリ戦士たち 第6話~ 

 

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