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韓国大不況で財閥企業も「日本企業の強み」を学び始めた

香月義嗣 [株式会社リブ・コンサルティング韓国オフィス日本企業支援部部長]
2017年1月31日
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10年遅れている
韓国人の営業スタイル

 「営業力」は、日本企業の最大の強みとなるはずだ。韓国は先述のように数年前まで成長率5%台の成長期を経験してきた。当時の営業スタイルは顧客と夜遅くまで飲み明かし、信頼関係を築いて売上を上げる「信頼関係に基づいた営業」が王道であった。

 そのため、飲み・カラオケ・ビリヤードに時間を使い、明け方まで顧客と飲み明かしたことに誇りを持ち、何本の焼酎を空けたかを翌日自慢し合うような営業マンばかりだった。

 しかし、韓国が低成長時代に入るにつれて、信頼関係だけでは成果が出なくなり、現在では「顧客にどのような価値ある提案をできるか」といった提案営業へとシフトし始めた。ここでもやはり、低成長期に培われた日本企業の提案営業力に注目が集まっている。

 実際に、ある韓国大手メーカーは現在、キーエンスのコンサルティング営業を手本として「顧客が気づいていない問題を発見し提案する」スキルを高めようと改善活動を進めている。筆者は日韓両国で70社以上の企業をコンサルティングしてきたが、客観的に見て、現在の一般的な韓国企業の営業スタイルは「日本企業の10年遅れ」だと断言できる。それだけ現在の日本の営業は、グローバルで見ると洗練されているのだ。

 以上3つが日本企業の持っている「組織作りの強み」である。これらは、韓国企業から見た際の日本企業の優位性として記したものの、実際は韓国に限らずアジア諸国の企業にとっても「組織作り」を進化させる方向を示すキーワードとなるだろう。

 失われた20年と呼ばれた低成長期への対応に苦心してきた日本企業。世界に先駆けて課題が発生することを悲観視するだけでなく、課題先進国として取り組んだ経験を前向きに捉え、「経営資産に換える」という発想を持っておきたい。

 海外でコンサルティング支援を続けていると、日本企業の「組織作り」には「経営資産」となるだけのポテンシャルがあることを肌で感じる。これらの「資産」が、日本企業のグローバル展開における「強み」として今後活かされることを切に願う。

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香月義嗣

香月義嗣 [株式会社リブ・コンサルティング韓国オフィス日本企業支援部部長]

日韓70社のコンサルティング支援、約1万人への講演実績を持つ経営コンサルタント。サムスン・LGなど韓国大手財閥や在韓日系企業に対して営業力向上・人材育成を中心としたコンサルティングを実施。韓国における唯一人の日本人コンサルタントとして活躍。著書に、「日本企業が韓国企業に勝つ4つの方法」(中経出版、2013年2月)や「営業組織の生産性向上」(韓国能率協会コンサルティング共著、韓国にて出版)がある。
1980年生まれ、東京大学工学部卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。国際公認経営コンサルティング協議会認定マスター・マネジメント・コンサルタント。


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