<県立大生殺害不起訴>このまま風化させぬ
◇学生ら「釈然としない」
浜田市の県立大1年平岡都さん(当時19歳)が2009年11月、広島県北広島町の山中で遺体で見つかった事件は、松江地検が31日、矢野富栄 容疑者(当時33歳)を容疑者死亡で不起訴とし、発生から7年余りを経て終結した。地域の安全活動に取り組んできた学生や住民は「事件をこのまま風化させてはいけない」と、改めて誓った。(立山光一郎、岡信雄)
県立大浜田キャンパスでは31日も平常通り講義が行われ、学生らは平岡さんの死を悼んで設けられた花壇「Garden of Hope(ガーデン・オブ・ホープ)」のあるキャンパス内を行き来していた。
花壇は、平岡さんが果たせなかった「夢」を引き継ごうと造られ、学生や教職員、地元住民が苗の植え替えや除草などの手入れを続けてきた。現在はビオラや葉ボタン、スイセンなどが見頃を迎えている。
県立大のゼミで平岡さんを指導した林秀司教授(53)は「なぜ、こういうことになったのか全てが明らかにならずに終わるのは心情として釈然としない。彼女の命が奪われた事実、命を絶たれた事実だけが重く残る」と話した。
3年河野柊佑 さん(21)も「警察は必死に捜査していたと思うが、先輩には警察の事情聴取を受けた人もいたと聞いた。もっと早く解決できたのではないかという気がする」と語った。
事件後、県立大の学生たちが発足させた「しまね防犯サークルSCOT」は現在、約10人のメンバーが活動を続ける。
副部長を務めてきた4年栗原弘季さん(22)は、毎週末に大学周辺などをパトロールしてきたが、暗い夜道で懐中電灯もつけずに歩く女子学生を見かけたこともあり、事件発生から歳月が流れるにつれ、防犯意識が薄くなっていることを感じていたという。
栗原さんは「事件後に街灯は増えたが、まだ暗くて不安な道もある」と指摘。「これで事件が終わったとしても、安心・安全な街にする取り組みは後輩たちが受け継いでいってほしい」と話していた。
◇安心できる街作る
「容疑者がわかって、疑心暗鬼になることはなくなった。それだけでも良かったと思う」。住民や学生らでつくる「はまだを明るく照らし隊」設立メンバーで龍泉寺(浜田市田町)の住職、笹部一真さん(59)は語った。
同団体は事件発生日に合わせて毎年10月26日、県立大浜田キャンパスの中庭で追悼行事「はまだ灯 」を続けてきた。5回目を迎えた昨年10月、1200個のキャンドルが並べられ、約150人の学生や住民が、平岡さんを思って黙とうした。
笹部さんは「事件が終結しても、どうすれば市民と街の安全・安心を確保できるかを考え、形を変えつつ、できる活動を続けたい」と誓った。「明るく、安心できる街を作ってほしい」。それが犠牲になった平岡さんの願いだと思うからだ。
2017年02月01日
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