日銀は30~31日に開いた金融政策決定会合で日本経済の2018年度までの見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。物価変動の影響を差し引いた16年度の実質国内総生産(GDP)の前年度比伸び率(政策委員見通しの中央値)を1.4%増とし、前回リポートで示した10月時点の予想の1.0%増から上方修正した。背景として「海外経済の上振れや為替相場の円安方向への動き」を挙げた。17年度は1.5%増(前回は1.3%増)、18年度は1.1%増(前回は0.9%増)とともに上方修正した。
国内景気については「緩やかな回復基調を続けている」との見方を示した。前回は「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」との表現だった。先行きは「緩やかに拡大に転じていく」との見方を示した。経済成長率の上方修正の理由としては「GDP統計の基準改定に伴うGDPの上方修正」も挙げた。
一方で物価の見通しについては慎重な見解を示した。委員が見通した消費者物価指数(CPI)上昇率の中央値は生鮮食品を除くベースで16年度が前年比0.2%の低下と、前回リポートから0.1%下方修正した。17年度と18年度はそれぞれ前回の見通しを維持した。先行きについては「2%に向けて上昇率を高めていく」との表現を維持した。2%の物価安定目標の達成時期は「18年度頃」と、前回リポートで「17年度中」から変更した見通しを据え置いた。
経済・物価のリスク要因としては米国経済、中国など新興国・資源国経済、英国の欧州連合(EU)離脱問題の順に挙げた。これらを下振れ要因とする一方で「市場や経済主体がそうしたリスクをある程度意識している」と指摘し、上振れにつながる可能性もあるとの見方を新たに示した。
政策委員の16~18年度の大勢見通しは以下の通り。
実質GDP ▼ ◎ △ 消費者物価指数 ▼ ◎ △
16年度 1.4 0 9 0 ▲0.2 0 9 0
(1.0) (▲0.1)
17年度 1.5 4 5 0 1.5 5 4 0
(1.3) (1.5)
18年度 1.1 5 4 0 1.7 5 4 0
(0.9) (1.7)
※実質GDP、消費者物価指数は前年度比%、▲はマイナス。カッコ内は10月時点の見通し。▼は下振れリスクが大きいと判断、◎はリスクが上下にバランスしていると判断、△は上振れリスクが大きいと判断した委員の数。〔日経QUICKニュース(NQN)〕