旅行会社大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が、東京都内の複数の店舗で従業員に労使協定の上限を超える残業をさせたとして、東京労働局は31日、労働基準法違反の疑いで法人としての同社と労務管理をしていた複数の幹部社員を近く書類送検する方針を固めた。
厚生労働省が2015年4月に東京と大阪の両労働局に設置した「過重労働撲滅特別対策班」(通称かとく)が昨年夏、同社に対して強制捜査に入った。押収した労務関係資料を分析するなどした結果、都内の複数の店舗で違法に残業をさせた疑いが強まったという。
関係者によると、同社は過去に違法な残業を従業員にさせたとして、複数回の是正勧告を受けているという。是正勧告を受けながらも改善がみられないことから、東京労働局は法人としての同社に加え、労務管理担当の複数の幹部社員も書類送検する方針を固めた。
エイチ・アイ・エスのウェブサイトによると、同社は1980年に設立。グループ全体の従業員は約1万4千人。
労基法は労働時間を1日8時間、週40時間までと規定。これを超えて労働者を働かせるためには残業の上限時間を定めた労使協定(三六協定)を結ぶ必要がある。協定を結ばずに残業させたり、協定した時間を超えて残業させたりした場合は違法となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となる。