故郷には、本当に何もなかった。
遊ぶ場所は友達の家か、外か、イトーヨーカドーか、くらいしか選択肢がなかった。
それは別にいいんだ。自然に囲まれて、それなりに楽しかったから。
しかし、田舎特有の性質なのか、周りにいる子の多くは早熟で、恋愛至上主義だった。
早い子は小学校高学年から、普通の子でも中学生のころには付き合っている人がいるという状態だった。
女子は、ちょっと顔がタイプとか、足が速い等という理由でバンバン告白していた(今でも、あの積極性はすごいと思う)。
部活の帰りに待ち合わせして、男女で手をつないで帰るのがステイタスだったようだ。
友達同士で話す内容は、ほぼ恋愛か、巷で流行っている音楽の話、雑誌に載っているおしゃれの話だった。
私は本が好きだった。星が好きだった。この世界の不思議に興味があった。
でも、そういうことを話すと茶化されてしまったから、ずっと一人で胸の中にしまっておくことにした。
誰かと付き合うこと自体が怖かった。
中学のころは、そのことで散々からかわれた。付き合ったことないって言うとすごく驚かれた。
高校になってちょっと垢抜けたせいか、告白されるようになった。
彼氏がいたことがないのが恥ずかしくて、いい人だなと思った何人かと付き合った。そうして、「過去にいた彼氏の数」を増やしていった。
高校三年生の頃、付き合っているうちに好きになった人にセックスしたいと言われた。
私は拒めなかった。
理由は二つある。
一つは、その人に嫌われたくなかったから。
大学進学のためで上京し、東京で暮らすようになってからすごく驚いたのは、
周りにいる人々の多くが、付き合った経験がない、あるいは付き合った経験があってもおそらくセックスはしていないということだ。
そして、中学生の頃に強烈に共有したいと願っていた事柄を話せる人がたくさんいることも、
誰とも付き合わなくても、別に変ではないということも。
見栄のために人と付き合い、処女を捨てたことが今では人生の汚点になっている。
私がこのような恋愛遍歴になってしまったのは、育った環境によるところが大きいだろう。
しかし、もし私がその中でも「人は人、自分は自分だ」と強い意志を持ちつづけることができたなら
後々恥ずかしい思いをすることはなかっただろうとも思う。