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次回、第28回「受難」で、貿易商・呂宋助左衛門役で
登場する松本幸四郎さん。収録直後に、お話をうかがいました!

 

違う作品で同じ役を演じるということ

1978年の大河ドラマ『黄金の日日』で呂宋助左衛門(るそん すけざえもん)を演じてから、38年の時を経て、『真田丸』で再び同じ役を演じさせていただくことになりました。『黄金の日日』は、三谷幸喜さんが劇作家を志すきっかけとなった作品だというお話はご本人から伺っていましたが、まさかこのようなことになるとは。当時ご覧になっていた学生さんが、今、大河ドラマの脚本をお書きになっている。こんな嬉しいことはありません。私としては「お声をかけていただいて、本当にありがとうございました」と、感謝しています。

撮影中は、私の両肩に『黄金の日日』の出演者がいらっしゃったような気がします。亡くなられた方、役者を辞めてしまわれた方、スターとなられた方…。いっぱいいらっしゃるけれども、今回はその方々を背負って出演させていただきました。

舞台に立たせていただくにしても、テレビに出演させていただくにしても、年齢だとか時間だとかを、私はあまり考えたりしません。「今」がとっても楽しくてね。思い出になってしまうのが、嫌なんです。でも、いい思い出を持って「今」を生きるって、素晴らしいことじゃないですか。自分の境遇や立場、そして、時代などはもちろん変わっていますが、「これ」と思った信念は変わらないもの、おいそれと変わってはいけないものだと思っています。私にとって呂宋助左衛門は、まさにそんな存在です。再び助左衛門を生きることができ、本当に「今」を強く感じました。「役者冥利」というのでしょうか。同じ役を、違うドラマで演じることができる機会に恵まれた「今」が、人間としても、役者としても、とても幸せだと思っています。

撮影中は、私の両肩に『黄金の日日』の出演者がいらっしゃったような気がします。亡くなられた方、役者を辞めてしまわれた方、スターとなられた方…。いっぱいいらっしゃるけれども、今回はその方々を背負って出演させていただきました。

2作に共通する視点

呂宋助左衛門は、ルソン(現在のフィリピン)に渡海してただ同然の壺(つぼ)を持ち帰り、豊臣秀吉らに高値で売りつけて富を得た、堺の豪商です。それまでの大河ドラマでは歴史上の英雄が描かれていたので、堺の一商人が主人公になった『黄金の日日』は、とても画期的でした。大河ドラマが、初めて歴史ドラマから人間ドラマになった作品なのではないでしょうか。この作品以降、テレビはもちろん、歌舞伎や舞台の世界も影響を受けて、ずいぶんと変わりました。

歴史というのは、簡単に言ってしまうと勝者の歴史です。言葉は良くありませんが、歴史に名を残した英雄であっても立派な人物ばかりではなく、その中には、ただこの国をいじくり回しただけの人と、本当にこの国を支え続けた人がいたと思います。それが歴史の中では、すべて勝者、英雄となっている。そんな中で、そうはさせまいと英雄たちと渡り合ったのが助左衛門ですよね。『黄金の日日』では、時の流れの「真実」を、アウトローのような一商人である助左衛門の視点で語りました。秀吉など、よく知られた人物は出てきますが、あの作品では、必ずしも今まで描かれた「定型」にはなっていません。

庶民だって歴史と戦っているんですよ。偉い大将は立派で当たり前でしょう? そうじゃない人間にも品格が備わっているんです。「弱い者の味方」の一商人が、権力者の太閤・秀吉と対抗する。それは人間として最高のことなのではないでしょうか。『星の王子さま』でも言っているように、「本当に大事なことは目に見えない」のです。歴史には残らないけれど、日本をずっと支えてきた人々がいる。『真田丸』も、ちゃんとそういう視点で描かれていますね。こういうドラマが、広がっていってくれると嬉しいなあ。

“助左(すけざ)”の想いを凝縮

脚本にすると2ページほどの登場シーンですが、『黄金の日日』がこの1シーンに凝縮されていればいいと思っています。ディレクターの方も『黄金の日日』を意識して撮ってくださったようで、きっと面白く素敵な形で助左衛門がよみがえり、当時を知る視聴者の方は、より楽しく放送を見ていただけると思います。

『真田丸』でも呂宋助左衛門は変わりません。登場シーンでは、船子たちが働いているところに助左が帰ってくるところが描かれます。船子に慕われ、信頼されている助左として、38年を越え、自分の中ですっと役に入っていけました。ただ衣裳に関しては、さすがに当時のものは残っていなかったようで(笑)、当時の生き残りである衣裳担当の熊谷さんが、同じような衣裳を再現してくれました。

脚本にすると2ページほどの登場シーンですが、『黄金の日日』がこの1シーンに凝縮されていればいいと思っています。ディレクターの方も『黄金の日日』を意識して撮ってくださったようで、きっと面白く素敵な形で助左衛門がよみがえり、当時を知る視聴者の方は、より楽しく放送を見ていただけると思います。

もっと助左を演じたかったかと問われれば…、正直、そういう時期はもう過ぎました。年齢的にもキャリア的にも(笑)。100のセリフをしゃべったから心に届くかといえばそうではなく、たとえたった一言、たった1シーンだったとしても、大事なものはいつまでもお客様の心に残ります。三谷さんは『真田丸』で、そういう描き方をしてくださいました。出るシーンは少ないですけれども、助左の想いが込められていた。そこには、三谷さんの想いも込められていたように感じました。

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