Jan 31, 2017

インタビュー286

原作者・西尾維新が絶賛! 劇場版『傷物語』は、映像表現の極致。

作家・西尾維新の代表作である〈物語〉シリーズ。『化物語』上下巻(電子版は上中下巻)に続く3巻目(電子版は4巻目)となる『傷物語』第零話「こよみヴァンプ」は、『化物語』の前日譚を描いた作品だ。主人公の阿良々木暦と、〝鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼〟キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの、鮮烈な出会い。その原作小説が三部作の劇場版アニメとなり、このたび完結編の『傷物語 冷血篇』が公開された。これを記念して、〈物語〉シリーズへの思いや創作表現について、語ってもらった。

 

──そもそも『化物語』を書いたきっかけは?

ちょうどいま、OVA化が進んでいるデビュー作『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』から始まる「戯言シリーズ」完結のタイミングで、執筆スケジュールを調整していたら、ぽっかり自由時間ができたんです。そこで、短編を好きなように書いてみた、というのが第一話「ひたぎクラブ」が生まれたきっかけです。

── 着想はどういったところから?

「戯言シリーズ」はたくさんキャラクターを出すことで、ストーリーを広げていく小説でした。だったら次は11人のキャラクターを過剰なほど掘り下げる小説を書きたい、と思ったんです。

── キャラクターの造型はどうやって考えていますか?

特に〈物語〉シリーズは、文字だけでどこまでキャラクターを表現できるのか? を追及していました。その結果、自然とキャラクターが多弁な会話劇になったんです。かけ合いは完全に趣味ですね。

──あとがきにも「100%趣味で書いた」とあります

『化物語』は「西尾維新」の集大成とよく言われました。書いている際も、遊びの多い小説だな、と思ってました。でもこの小説は、これでいいや、と思い切りました。書きたいものを全部書いてしまおうとしてました。

──いま劇場版が公開中の『傷物語』もそうなんですか?

たとえば体育倉庫のシーン、あれこそまさに遊びでしたよね。「趣味」を重んじた結果です。でも、あまりにも本筋に関係なさすぎるのも気がとがめるので、遊びのシーンには、こっそり伏線を紛れ込ませて、趣味性に必然性を設けましたね。

──ああ、なるほど!

「伏線はギャグの中に隠せ」というのはミステリーの手法ですが、「戯言シリーズ」だと、萌えキャラの中に伏線を織り交ぜてあります。ところがそういう書き方をしていたら、アニメ化するとき遊びのシーンがカットできない、という困った事態になりました(笑)。

──アニメを観ていて、ここは映像化が大変だっただろうなと思うシーンもありました

〈物語〉シリーズとは逆に、12カ月連続刊行の企画で書いた『刀語』は、ルールを守ることを徹底しました。そうしなければ、12カ月連続刊行なんてできないから。もし『刀語』を趣味として書いていたらどうなっただろう? と思うこともありますけど、その場合は最後まで書き切れなかったかもしれません。12カ月連続だったから、書き切れた。

──劇場版『傷物語』の見どころを教えてください

僕はもちろん原作を知った上で観たわけですが、原作を読む前に観た人と読んでから観た人とでは受ける印象が意外と違うだろうなと思います。テレビアニメともまた違った、映像表現の極致です。現代のアニメの総力が注がれているのではないでしょうか。尾石達也監督のこだわりが、本当にすごい。

──「吸血鬼の肺活量」で叫ぶシーンがありますよね

それに、頭が吹っ飛んでいるのに叫ぶ、とか。その辺りのディレクションは、今回の冷血篇が一番独特だったと思います。年齢の変化を、あえて一発録音したりとか。あえて最新の技術を使わない、というのも今だからこそのこだわりでしょう。本来求められている水準の、倍以上こだわりぬいているように思います。

──なるほど

振り返れば〈物語〉シリーズ、特に『化物語』と『傷物語』は過剰であることに執心していた小説なので、劇場版を作っていただいたことで、原作者が原点に帰れたように思います。デジタルプロジェクトもそうですけれど、やはり定期的に自作を振り返るタイミングは必要ですね。

──デジタル版、心待ちにしていました

デジタルプロジェクトについて言うと、物理的に自作を振り返りやすくなったというのがあります。でも、振り返ってみて「いまの自分ならこう書く」という段落があっても、誤植は直しますが、それ以外のものは、当時の自分を尊重して、文庫化のときでも、機会があっても直さないようにしてます。

──それもまたこだわりですね

当時しか書けなかったものが絶対あるはずですからね。変えることはできても直すことは不可能でしょうから。

──「電子書籍」はいかがですか?

約百冊の著作をまとめて携帯できるのが助かるわけですけれど、汗牛充棟と言うんでしょうか、本棚を持ち歩くと言う読書人にとっての夢が叶った感じが楽しいですね。テンションが上がります。コミカライズをデジタルで読んでみたら、見開きのシーンのシームレスななめらかさに、これは革命だ! と思いましたね。

──ああ、デジタルコミックの見開きは、本当にいいですよね

デジタルに即した漫画表現があるように、これからに合う小説の書き方、そして読み方もあるのかもしれませんね。デジタルプロジェクトを終えて、学んだことを今後に生かせていければと思いますので、『次なる集大成』を、なにとぞよろしくお願いします。

 

取材・構成・文/鷹野凌

 

 

Profile

 

西尾維新(にしお・いしん)

1981年生まれ。天才が集められた孤島で起きた密室殺人を描くミステリー『クビキリサイクル』(講談社)で、第23回メフィスト賞を受賞してデビュー。同作に始まる「戯言シリーズ」「〈物語〉シリーズ」「忘却探偵シリーズ」など著作多数。


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