分かってる分かってる。
早く入らないと明日に響くんだってことは。
分かってる分かってる。
お風呂からは結局、逃げられない運命なんだってことは。
分かってる分かってる。
私の多毛剛毛スーパーロング、洗うのに30分、乾かすのに30分かかるんだってことは。
……でも、髪短いと寝癖がつくし、結えないし、なにより頻繁に美容院に行かなきゃならなくなるので切りたくない〈黙れ、イイワケ人間よ〉。
ハッ……!!
いつの間にかテレビの画面がレインボーに……
……残るのはただただ、後悔のみ……
某人気ドラマの吉高由里子さんバリに頭をかきむしりたくなる夜明け。
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
【現代語訳】
あれよあれよという間に、時は過ぎてしまうものであるなあ。
焼肉の匂いが染み込んだみだれ髪をなびかせ、Yahooニュースを読みふけっているうちに。
ああっ女神さまっ……〈懐〉!
一生お風呂に入らなくても清潔さが保てる特殊能力を私にくださいっ!
〈ただし、気分によって入りたいときは入る自由もあるってことで、ひとつよろしく〉
〈あと、いくら食べても太らず、病気にもならない体をください〉
〈あと、何もしなくても月200万入ってきますように〉
〈あと、小顔になりたい〉
……んもう、しずかちゃんの女子力に白旗。
イヤ、誤解を恐れて〈恐れるんかい〉申し上げますが、ちゃんと毎日入りますよ?
よっぽどのことがない限りはね〈その「よっぽどのこと」が休みの前日に頻発したりしてね〉★
これでも一応、社会人の端くれ。
清潔感がなにより重要ですから、いくら嫌いだからといって、決して入浴頻度が減るわけではないのですが。
たださ、なんかさ、心持ちの問題というか。
喝!みたいな。
押忍!みたいな。
気合い!みたいな。
なんだかんだで結局は入るものの、入るまでがとにかく長すぎるんです。
アレコレ理由を付けて、「入浴」という行為を延ばし延ばしにしたがるんです。
まぁ延ばし延ばしとはいえ、せいぜい数時間程度ではありますけど。
とりあえず、入る前のプレッシャーがスゴイ。
なんなんでしょう、私は頭がカタイのでしょうか……
なんかね、「今日は疲れているから、軽く汚れを落としてとりあえず寝よう」って、ラフなノリで考えることができないんですよね。
長い髪をしっかりと洗い〈辛〉
→トリートメントをじっくり浸透させ〈憂〉
→蒸しタオルに包んで〈鬱〉
→その間に体をくまなく洗う〈煩〉
→トリートメントを流したら〈嫌〉
→優しく丁寧に洗顔し〈倦〉
→お風呂場を掃除したら〈怠〉
→完璧にスキンケアをして〈困〉
→ボディークリームをバッチリ塗り〈難〉
→時間をかけて髪を乾かし〈悩〉
→ヘアオイルを馴染ませる〈疲〉
辛憂鬱煩嫌倦怠困難悩疲……
これは中途半端な「女子力信仰」に囚われた哀れなアラサーを呼び覚ます呪文である。
あわれな あらさーふびじんが あらわれた
てってれー!
ここまでザッと2時間半。
ひどいときだと3時間。
〈ひどいとき=入ったはいいが、今度は出ることすら面倒になって無意味に長湯……いや当然湯船には浸からないので、長シャワー……を挟んでしまったとき。のぼせて酸欠寸前〉
〈女子力高い系の長風呂とは似て非なるもの〉
午前様で帰宅して翌日も仕事のときなんか、絶望以外の何者でもない。
ったく、いつ寝るんだよッ!? という。
……こんな調子だからお風呂が億劫になるのは分かっちゃいるんだ、分かっちゃいるんだけど!
もうほとんど仕事ですよね。
業務です。
義務です。
「お風呂で最高のリラックスタイムを❤︎ 」とかなんとかのたまうオサレ女性誌、ちょっと出てこいや!!
「お風呂あがりの至福のひととき。丁寧に化粧水を入れ込んで『あげると』」by美容特集ページ
……自分の肌に対して「あげる」って一体なんやねーん!!!
というかね、うーん。
女性誌もあながち間違っちゃいないんですよね。
エイっと入れば思った以上にスッキリするし、いい香りに包まれたまま床に就くのは何気にテンション上がるもの。
ただ、やるなら完璧にやりたい、中途半端じゃ意味がない。
70点で妥協するなら、0点の方がマシだーーッ!! という危険極まりないこの思考回路、いい加減どうにかしたいで候。
……これに加えてお子さんがいらっしゃる方は、私なんか比べ物にならないくらい大変なんだろうなぁ……
肌が荒れようが髪がビタビタだろうが、自分のことはすべて後回し……まったくもって頭が上がりません。