【ワシントン会川晴之】トランプ米大統領は、スティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問を、国家安全保障会議(NSC)のメンバーに加えた。米国家安全保障の最高意思決定会議となるNSCのプリンシパル委員会にも参加資格を与えた。側近を重用する姿勢を明確に打ち出した形だ。28日に署名したNSC改革の大統領令に明記した。
バノン氏は選挙戦後半に陣営の最高責任者を務めるなどトランプ氏が最も信頼を置く人物。トランプ氏が28日にロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相との電話協議に臨んだ際に、オーバルオフィス(大統領執務室)に、国家安全保障問題担当のフリン大統領補佐官などとともに同席していることが確認された。
バノン氏は、トランプ陣営に加わる前は、白人至上主義や反ユダヤ主義などを掲げる極右思想「オルト・ライト」を先導する右翼メディア「ブライトバート」の会長を務めていた。議会共和党のキーマンであるライアン下院議長など党主流派や、報道機関を厳しく批判するなど、過激な言動で物議を醸す人物として知られる。
新設の首席戦略官としてホワイトハウス入りしたが、「政権の政策理念や方針の設定に関わる」ことが示されただけで、具体的な担務は明かされていなかった。トランプ氏は、長女イバンカさんの夫でユダヤ系実業家のジャレッド・クシュナー氏を大統領上級顧問に登用するなど、側近や親族を重要ポストにつけている。
NSCは第二次世界大戦後の1947年に設置された。米国の安全保障に関わる内政、外交、軍事問題を協議する。プリンシパル委員会には、正副大統領のほか、国務、財務、国防の各長官、国家安全保障問題担当大統領補佐官など限られた人物だけが参加資格を持つ。今回の改正で、軍制服組トップの統合参謀本部議長、情報当局トップの国家安全保障長官は定例メンバーではなく、関連案件を審議する場合に出席することになった。