一方、東アジアの主なライバル空港も拡張に拍車をかけている。利用客数ベースで香港空港が1億1000万人(2020年)、チャンギ空港が1億3000万人(25年)を目指しているのが筆頭だ。中国は上海・浦東空港で1億人(19年)を目指し、黄海圏では北京新空港、大連、青島の各空港の旅客処理能力は合計で1億8000万人に達する。中国は国際線が15年だけで35%増え、30%低い利用料を武器に急速に市場を侵食している。今後、釜山の金海新空港が開港すれば、仁川空港の成長スピードは鈍化する見通しだ。そして、10年余り後、韓国で人口減少が始まればどうなることか。
そんな状況にもかかわらず、韓国の国土交通部(省に相当)と仁川国際空港公社は真剣に考えているふしが見られない。路線が多く、乗り継ぎ率が高い真のハブ空港を目指す上で必須の民営化スケジュールははっきりせず、管制は今も非効率的な国営体制だ。公社と関税庁は第2ターミナルの免税店選定権をめぐり争っているが、免税店は賃料の高騰に耐えかね、撤退を検討しなければならない状況だと悲鳴を上げている。昨年の今ごろには手荷物システムの故障で160便の出発・到着が最大6時間遅れ、1月22日夜には遅れた便に接続する交通手段がなくなり、乗客らが寒さに震えた。「サービス1位空港」という実体を伴わない自慢も揺らいでいる。
ヴァイキングが海に出たのは、愚かな同族間の争いをやめ、共に食べていくためだった。仁川国際空港もそうだった。北東アジアだけでなく、大陸間の乗り継ぎ需要まで吸収する巨大ハブが夢だった。しかし、今そんな夢について語る人はほとんどいない。変わらない需要をめぐって内部で争っているだけだ。「北東アジアのハブ・仁川空港」はこうして夢で終わるのだろうか。