骨多孔症の臨床試験への募集を行っている江東慶煕大病院の関係者は「高齢者の場合は基本的な試験内容を説明すると、決まって『交通費は幾らか』『いつ通帳に振り込まれるのか』と聞いてくる」という。
昨年10月にアトピー皮膚炎の医薬品臨床試験に参加したオ・ハンソルさん(65)は計30万ウォン(約2万9000円)を手当として受け取った。オさんは「練炭を買おうと思って応募したところ、運良く選ばれた。昨年ビルの警備員を解雇されて生計を立てていくのが大変だったが、今後はさらに臨床試験のバイトに応募してみるつもり」と話す。
製薬業界は「高齢層を対象とした医薬品市場が毎年拡大しているだけに、高齢者の試験対象者は今後も必要だ」との立場を示している。臨床試験は、新薬開発過程で薬についての効能や副作用などを確認する目的で進められる。臨床試験を行わなくては新薬が承認されないため、国内の製薬会社は食品医薬品安全処(省庁、食薬処)が指定した病院に臨床試験を依頼している。
しかし、国内の臨床試験に対する認識は決していいとは言えない。副作用が発生する恐れがあるためだ。食薬処によると、臨床試験の最中に薬物により副作用が生じたという問い合わせは2011年からの3年間で計476件寄せられている。臨床試験は、短期間にまとまった資金が手に入るが、危ないといった意味で「高収益生体実験バイト」と呼ばれることもある。
高齢者を対象とした臨床試験が増えたことで、副作用を最低限に収めなければならないと指摘する声も上がっている。高齢者の応募者の中には、臨床試験の目的や内容を正確に理解せずに応募する人もいるためだ。
昨年7月、「共に民主党」のパク・チョン議員は、臨床試験の募集広告を出す場合、試験の目的や方法、予測される副作用などをあらかじめ知らせるよう義務付ける内容の薬事法改正案を発議した。建国大病院臨床薬理学科のキム・テウン教授は「身体機能が低下している高齢者は、副作用の生じる恐れが若者よりも高まっている可能性があるため、臨床試験の際には気を付けなければならない」と警笛を鳴らす。