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【野口裕之の軍事情勢】
トランプ政権は軍事衝突覚悟で、中国海上軍事基地封鎖「南シナ海版キューバ危機」に踏み切れるか
米国は南シナ海の「当事国」
大西洋はじめ、太平洋・インド洋における米軍のプレゼンスは「絶対的」で、いかなる国家をも「圧倒」している。『米国の利益』に直結する『米国の海』だからだ。けれども、「絶対的」「圧倒」なる表現を使えぬのが、東シナ海や南シナ海、地中海。大国や敵対国を含む地域国家に囲まれる狭い海域で、米国の影響力は限定される。
だが、東シナ海や南シナ海などの安全を脅かす中国の軍事行動を封じなければ、世界の海を支配してない証拠を、世界に周知してしまう。米国は自らが「当事国」だと世界に宣言し、中国の領域拡張の野望を引き裂かないと、唯一の超大国としての存在感は薄まるのだ。トランプ氏は、かかる戦略性を理解できているかは別として、海軍長官を指名した25日、「艦隊を拡充して近代化し、米海軍力の覇権を今後何十年も確実にしていく」と表明した。
逆に、「地域の覇権国」の地位を得たい中国は、米国による南シナ海介入をいやがる。現に「米国は南シナ海をめぐる争いの『当事者』ではない」「南シナ海の領域紛争は『当事国』同士で解決する」と言い続けている。
そもそも、南シナ海の情勢激変は米国経済にも深刻な影響を与える。南シナ海では、世界の貿易量の4分の1が通過し、年間5兆ドル分の貿易額が移動するが、うち1兆ドルが米国に向かう。南シナ海の通航の自由を中国が奪えば、トランプ氏が「公約」で強調した「平均経済成長率3・5%」は夢物語で終わる。計算高いトランプ氏が、安全保障戦略と経済・貿易戦略を連動させるのなら、「当事国」としての自覚を持つべきだ。
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