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トランプが大統領選に勝利したとき、「あれだけいろいろ言ってるが、実際大統領になったらそれまでの発現撤回して案外まともな政策やるんじゃないの??」と言ってる人を散見したが、あの人らは最近のトランプ大統領の行動をどう観てるんだろう。
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24のジャック・バウワー役でお馴染みキーファー・サザーランド主演の「サバイバー 宿命の大統領」と言うドラマがある。
これはホワイトハウスがテロを受け爆破、政府が崩壊し、混乱する中生き残った三流政治家のキーファー・サザーランドが大統領になってしまうというお話。
政府が機能せず各州は勝手な行動をし始め、アラブ系住人を勝手に逮捕したりする。
そこで大統領は怒り、アラブ系住人への逮捕をやめさせようとするが話を聞かない……と言うエピソードがあるんだが、まさか現実世界で真逆に近い出来事が起こるとは。
事実は小説よりも奇なりと言うが、まさにそう。
ちなみにドラマはNETFLIXで配信中。
トランプの発現を見ていると、さんざ煽るだけ煽り、焚き付け、批判してくれば反発し、或いは完全にスルーしてさらに煽る。
そして大勢の批判と少数の熱狂的な支持を確保して……って、ヘイトとカルマを集めまくってクラスチェンジするのは、まるでどこかの髪の毛が寂しいと噂の炎上商法おじさんみたいじゃないですか。
それはともかく、トランプ大統領はひたすら「アメリカファースト」を打ち出してる。
.@realDonaldTrump: "From this day forward it's only going to be 'America First.'" #Inauguration #Trump45 pic.twitter.com/lS6jlxmvaH
— Fox News (@FoxNews) 2017年1月20日
面白いのが、政治家と言うものは仮に空虚なお題目であっても「国民のための」政治を行おうとする。
仮に政治家が「アメリカファースト」を言ったとすればそれは「アメリカ国民のための第一優先」を指す。
ところがトランプという人物の本質は経営者であり、経営者にとっての第一は社員ではなく会社という法人そのもの。
つまりトランプの唱えるアメリカファーストというのは国民を超越した「アメリカという共同体と概念」に対してのプライオリティに思えてならないし、しかしこう考えるといろいろと見える。
この運動の中心には、不可欠な確信があります。国は市民に奉仕するために存在するのだという確信です。
【米政権交代】 「アメリカ第一」 トランプ新大統領の就任演説 全文と和訳 - BBCニュース
演説ではこう言ったが、実際の行動は早速の大統領令で混乱を引き起こしてる。
ではこのトランプの言うところの「市民」とは誰を指すのか。
大統領就任式のとき、舞踏会でダンスを踊っていたアメリカの富裕層上位1%の人々を指すんだろうか。
別にトランプもアホじゃない。
自分のやってることや発現がどう思われているかくらい重々承知した上でやってみせている。
だとすればそれらはたして誰のために、何のためになのか。
これを「アメリカ」と言う国、共同体、概念を中心で見てみると面白い。
人種や宗教による差別的な行動。
これも国を「国民」というミクロなレイヤーで見るなら元々移民の国。
多民族国家アメリカで「移民を排除せよ」などと唱えるのであれば純血のネイティブアメリカン以外は出ていくべき。
しかしこれをマクロなレベルの「アメリカ」と捉えれば、近代国家アメリカという「国」に近年やってくる移民を防げば強い国「アメリカ」は移民に奪われた仕事も戻り、ドラッグ禍も減る……かどうかしらないがトランプあたりは本気で信じていそうな幻想に思える。
ミクロよりマクロ、国民より国、移民よりアメリカ。
国境に壁を建築するという話も、アメリカという国の「政治」で考えればとても外交的に軋轢を生むマズい手に思えるが、アメリカ株式会社のワンマン社長トランプが「経営」のためにやっていると考えればそれほどおかしくもない。
トランプは「アメリカ」の社長に就任し、自社化した。
どこかの企業をTOBするよりよほど安くついたかもしれない。
社長の大胆な発想は、傾きかけた老舗を立て直すための大鉈。
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「ホールインマネー」と言うドキュメンタリー映画がある。
この中で、トランプは地元住民の反対の中、ゴルフ場開発を推し進めていく。
もちろんトランプは自分の金で土地を買っているし合法的。
地元住人の意思なんてどうでもいい。
合法的だし金を払っているんだからその土地は自分のもの。
ゴルフ場を建て、自然を破壊しようが住民感情なんて知ったこっちゃあない。
資本主義社会で金をもち、法的なルールに沿っているんだからこっちのもの。
今回の大統領選の結果が合法な上に民主主義に則っているにも関わらず国民から大きな反発を産んでいるのととてもよく似ている。
ドナルド・トランプという人間は根っからの経営者。
アメリカは経済的にこのままの勢いを保つのかもしれない。
しかし「アメリカファースト」という言葉の指す優先順位はあくまでも共同体アメリカ。
一般的な国民の幸せや生活は果たしてどのくらいの順位にあるのか。
アメリカは民主主義の国であり資本主義の国。
だとすればトランプが体現しようとしている「アメリカファースト」なアメリカというのはきっと平等さのない資本主義社会のかたちをし、持つものがさらに持ち富むべきものがさらに富む社会なのかもしれない。
資本主義というのはそういうもの。
持たざる低所得者の底上げより高所得者のさらなる利益。
ブッシュだってさんざ傀儡として踊り、オバマが手出しできなかった泥濘。
みんなの協力でアメリカは、これまでより強い国になります。
さらに豊かな国になります(でもお前らの生活は知らんけどな)。
トランプの言う「アメリカ」の市民になるには果たして資産がどのくらい必要なんだろう、と考えただけでくらくらする。
ジョージ・ブッシュのときもひどかったが、今回も間違いなく歴史に名を刻む四年間だろう。
ともかく戦争にならなきゃあいいが。
「米中もし戦わば」は面白いので一読の価値アリですが。