SI業界の真実とは? IT業界には明らかにSI=SEと定義したい人がいる
SIer=システムインテグレーションを行う企業。人ではなく企業。
SE=システムインテグレーションも行う技術者。企業ではなく人。
恐らく調べれば、すぐにこのような定義がヒットすることでしょう。
ですが、この定義は実際の業務内容を表してはいません。
SI業界にいる人たちは、SIer=企業だと分かっていながらも自分たち作業者のことを半ば自虐混じりにSIerと自称します。
なぜなら、SI業界にいる人のほとんどが技術者と呼べるような技術的な業務は行っていないからです。
そして僕もSI業界にいる人も、自分たちと本当のSEは明確に区別されて然るべきだと思っているのです。
SI業界とは?
SI業界とは、特定の企業がトップに君臨するIT業界のうちの一つの業界です。
その企業とは?
別に誰も隠していないので、あっさりと書いてしまいますが…。
業界の人が3社上げろと言われたらだいたい、
NTTデータ
日立グループ(まあ製作所でしょうね)
富士通
を上げるかと思います。
こちらのランキングを見ていただければ早いですね。
出典
IBM、NRI、日本HPあたりも有名どころで、人によっては3社目に選んでくるかもしれません。
はい、ここに載っている企業の案件以外はSIとは関係ないと言っていいです。
当ブログでの定義の話
一応、固定ページで軽く触れてはいるのですが、アクセス数がまったくと言っていいほど伸びないのでもう記事にしてしまおうと思って書きました。
当ブログでは「システムインテグレーションをする人(主にテスト要員)」という意味で、「SI=プログラミングをほとんど行わずにシステムインテグレーション業務を行う人」という語を使っています。
なぜならSEとしての技術的な仕事をさせてもらえず、テスト要員としてしか仕事を与えられない人材が明確に存在していて、かつ彼らの数や現場が特定の案件において圧倒的に多いからです。
彼らの存在を世に知ってもらうためにも、当ブログでは「SI」「SI業界」と明示して話を進めています。
SIの実際の業務について
SI業界は他業種の方々が思っている以上に巨大です。
上記の引用記事のランキングに載っている大企業は、海面から出ている氷山の先端であり、実際に業界に従事する残りの多くの人々は海面の下で頑張っているのです。
これを実際の業務内容に照らし合わせて説明するとこうなります。
NTTデータ
日立製作所
富士通
などの大企業がお客さんから依頼を受ける。
これに応じて大企業はシステムの企画・設計をし、開発していきます。
上記レベルの大企業になると、案件によっては自社や自社グループで完結させてしまいます。
ところが、巨大なプロジェクトになってくると、そうも言っていられない。
なので、協力会社と契約して社員を派遣してもらい、一緒にプロジェクトを進めていくことになります。
プロジェクトにはほんの短い期間ですが、開発(プログラミング)という工程があります。
ここで、詳しくない人はつっこみたくなりますよね。
「なんだ、SIにもプログラミングの工程があるじゃないか」と。
はい、あります。
ただし、このプログラミングができるのは、上記大企業+大企業が認めた中企業+何か間違ってSI業界に身を置いているガチな技術者だけなのです。
そしてこの人たちが業界の中で占める割合は本当に少なく(ていうかそもそも開発期間がプロジェクト全体を見ても短い)、残りのその他大勢の全然プログラミングをやらない(やれない)人々が圧倒的に多く存在しています。
当ブログは後者の名も無き人たちをまとめてSIと呼んじゃおうと言っているわけですね。
で、この残りのその他大勢さんたちが何をやるかと言ったら、「テスト」なのです。
大企業と大企業に認められた一部のSIerが作ったシステムを実際に動かしてみて、バグが発生するかどうか、それをひたすら繰り返してちゃんと動いていた証跡をエクセルに並べるだけの超単純作業。
それを中小のSIerにやってもらいます。
他意はありませんが、彼らは文字どおり「テスト要員」と呼ばれていて、特に技術も必要無いので新人や若手はよくこの「テスト要員」として1ヵ月現場に入り、次の現場、次の現場、と現場を転々と移ってテストを繰り返す場合が多いです。
なぜこの実態を説明せず、SEと大ざっぱに定義してしまうのか?
いくつか理由はあると思います。
・SI業界以外にとっては正直どうでもいい
・そもそも実態も定義もどうでもいい
・SI業界の中でも大企業には技術者が多いから定義しなくていい
この3つ目がくせ者で、テスト要員として招集される中小企業の人材が点々と散らばっているのに対し、声の大きい大企業には人材がまとまって存在しているのです。
大企業の社員は自分たちの現場から外に出る必要なんてありません。
だからそもそも、大企業にいる人は「テスト要員」としてしか必要とされない人材がこの業界にいるなどという悲しい事実に気づいていない可能性があるわけです。
ここでSI(テスト要員)=SEとなってしまうパターンが2つ発生します。
・大企業にいて下に気づいていないパターン
・気づいてはいるが、SI=SEにしておかないと不都合が生じるパターン
この記事のタイトルは後者の場合について話を進めています。
SIをSEとしておけば都合がいい
勘のいい人は気づいていると思いますが、SI(テスト要員)といういくらでも替えが利く人材を集めなければいけない中小企業にとっては、SI=SEなら大変都合がいいんですよね。
だって考えてもみてください。
あなたが就活生だったとして、
業務内容:デバッグ作業
と書かれてあるゲームソフト製作会社に就職したいと思いますか?
でも実際の業務内容はその通りなんですよ。
なのに「SE・PG」と書いてあるわけで、そういう求人を見つけた就活生が「システムエンジニアになろう!なれる!SE!」と思って就職した結果、あまりにもSEとかけ離れた業務内容に憤慨・絶望することになるんです。
僕だって業務のほとんどが「デバッグ作業になります」って書かれてあれば絶対に応募なんてしませんでした。
むしろゲームのデバッグ作業だったらまだ楽しかった可能性もあります。
何のデバッグをするかといえば、ゲーム性も絵的な華やかさもない本当にただのシステムのデバッグです。
「ボタンを押して想定通りの画面に遷移するか」
「ボタンを押して想定通りの文言が表示されるか」
「ボタンを押して……」
これを環境変えたりモジュール追加したりして延々とチェックしていくのがSIのお仕事です。
僕は想像できませんよ。
就活生が喜色満面に「この仕事がやりたいです!」と言って門戸を叩く姿を。
だからただでさえ人材が少ない業界にあって、中小企業は少しでも応募が増えるようにしたいわけですよね。
「SE・PG」なんて書いちゃって。
SI業界はブラックなの?
どういう視点から語るかにもよりますが、上記に書いたようにブラックです。
ただ、就業時間という観点から言えば必ずしもそうとは言えません。
どことは言いませんが、大企業の中には定時退勤日(週に一回)や残業ゼロウィークみたいな信じられないイベントがあります。
定時退勤日は定時で帰らなければいけないので、時間になったら音楽が流れ始めます。(ウー、ウー)
社員は帰り支度をしなければいけません。
仕事を続けていると、セキュリティ系の部署の人たち(特定回避)がやってきて「定時退勤ですー帰って下さいー」と急かしてきます。
夢のような現場ですね。
しかしですね。
これは大企業だけなのです。
たとえその大企業と契約し、大企業の一員として扱われている中小企業の人材だったとしても、大企業の社員ではないので定時退勤日に定時で上がることはできません。(現場によっては定時で上がれるところもあるのかもしれませんが…僕は知りません)
周りのチームの人たちが楽しそうに帰るのを、画面を凝視して見ないふりをしながらやり過ごすしかないのです。
なので、就業時間という視点で絞れば、プロジェクトの進捗状況にもよりますが、一部の大企業の中にはホワイト企業も存在します。
ただしそれは本当に一握りで、大多数が主に就業時間という観点でブラックです。
もちろんSI業界の大企業だからと言ってオススメするわけではありませんけどね。
以上、業界の上と下で話が噛み合わなくなってしまう定義のお話でした。