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「ロザリオが地味だって、バカヤロー!天空の光を地に落として十字架を作るんだよ!!」
午後16時40分、パソコン画面下の電子時計をチラチラと気にしながら、まだギリ大丈夫だと思い、マウスを左クリックする。
パソコンに挿した白いイヤホンからあの曲が聞こえてくる。もうかれこれ8時間以上聞いている。曲を聞いている間は考えながら聞いている、前は聞けば感情を取り乱していたけどあれから毎日聞いているから少しずつ慣れてきて、今では自分の気持ちと記憶を整理するのに使わせてもらっている。
46分かそろそろ終わりだ、母親が帰ってくる。
母のパートの時間が8時から4時半までだから5時には帰ってくる、この時間があの曲を聞ける時間だ。
もう今日は終わりだ、早くパソコンをしまって部屋に戻ろう。
あの曲を知ってから、僕の精神状態はすごく安定している、そう「WWD」のおかげで。
布団の中でうずくまり自分を押し殺そうとした日の夜
僕は見えない恐怖と戦っていた、何かわからない感情が出てきてそれに体を支配されそうになるのに恐怖を覚えたんだ。
なんなんだよ、この気持ちは、なんなんだよ、怖い怖い怖い怖い怖い、、、
その夜は震えながら寝た、泣きそうだったけど泣きたくなかった、泣いたら負けたと思ったから。
朝、目覚ましがなる前に起きていた。布団に包まれた形になってたので自分を押し殺したまま寝たんだと思った、ぼーとする頭の中で昨日の事を考えていた、何なんだろうアレ、、、あの曲、一回しか聞いてないのにすごく残ってる、それにまるで自分の事を言われてるみたいだった。
自分の事を言われてるみたい、この言葉が自分から出てきた時、胸が痛くなった。
ぎゅーーーーと服の上から心臓部分を手で握り潰してまたうずくまってしまった。
そのままの姿勢で、もう苦しませないでくれよ、お願いだから、もう泣きそうな声で心の中でそう言った。
あの曲は誰か歌ってるんだろう、そしてなんの曲なんだろう、しかも女の子達だし、調べてみたい、気になることが沢山あるよ、だって僕の事をこんなにも言ってる曲なんだもん、そういえば歌のタイトルもいまいちよくわかってないし、女の子達は分かってるけどアイドルなのかな?とにかく分からない事だらけだ。
こうやって物事を考えられるのに時間がかかってしまった、時計を見るともう昼前だ、ご飯をまず食べに行こう。
昼ごはんを食べ終わってパソコンの前に座り、Yahooの検索サイトをクリックして、僕が知っている女の子達の情報を打ち込んだ。【でんぱ組】【WWD】これしかないけど、検索の所をクリック、なかなかの検索ヒット数だ。
そこには「ヲタクアイドル」「渾身のノンフィクション作品」「萌えキュンソングを世界にお届け」「ディアステージ」
目で拾うのには多すぎる情報の数々、一旦ウィキペディアに行こう、ウィキペディアを箸休めにクリックをした。
ざっと下まで見てみてメンバーの所があったので見てみると秋葉原を拠点とする6人組女性アイドルグループ、秋葉原ディアステージで従業員でその中で「でんぱ組.inc」を結成、メンバー全員が生粋のヲタクである。
おーー色々と分からない言葉が出てきた!!
分からないままだが調べる事優先でマウスを動かす。
電波ソングやアキバ系アイドルやA-POPなど聞き慣れない言葉の数々!!それでも読み進める。
古川未鈴、相沢梨紗、成瀬瑛美、夢眠ねむ、最上もが、藤咲彩音これがあの曲を歌ってるメンバーの名前か、まだ顔と名前が一致してないけど、それと「でんぱ組.inc」の「.inc」この部分の読み方「インク」何だって事もわかった。
次にWWDについて調べてみた。
「world.wide.dempa」(ワールドワイドデンパ)これの頭文字を取ってWWDなのか。
メンバーの実体験を元に作詞したドキュメンタリーソング。メンバーそれぞれが自身の過去と向き合う必要に駆られた為にこの曲が作られた。CDに入っている歌詞カードの最後には「この歌詞は実体験をもとに構成しています」と記載がある。
こうウィキペディアに書いてあった。他のサイトも見てみたら同じ様な事が書いてあった。
ドキュメンタリーソング、実体験、このアイドルさん達は僕と同じ様な事をしてきたんだ。
YouTubeのサイトに行き、「WWD」を聞いた。
静まり返ったサーカス小屋の中一台のアナログテレビ、テレビから砂嵐が起こり開幕を迎える、始まりの音はワクワク感を更に増幅させる。
出番を待つアイドル達は世界の言葉を言いながら舞台に立つ、スポットライトに一人づつ照らされながら自分の過去を歌い踊った。
サーカスの中は色鮮やかに光、彼女達の色に染め上がった。アイドル達の色はサーカス内を駆けまわり僕を煽る、音は更に早くなり鼓動が高まる。
一瞬、アイドル達が遠い存在に感じた、その時すぐに爆発が起きた、爆発は目の前にまで広がり更に音は激しく色は輝きを増していった、熱くなったサーカス内は僕に声を求めた、アイドル達が叫び、僕も叫んだ。
一つになった僕達は一緒になって踊って弾け飛んだ。
弾け飛んだ光は中央に集まり、白と青の光が交差して黄色と緑の光が足元を照らしながら赤と紫の光が前に歩き始めた。
赤色の光と紫色の光はお互いの存在に気が付かないみたいにポツンと光っているだけだった、銃声が聞こえお互いの存在を知らせ2つの光は回りながら一つになった。
小さく光っている青色の光がゆらゆらと踊っていた、その光を見ていた白色の光がそっと2つに別れ消えていった、青色の光はやがて大きく輝いていった、白色の光は自分の居場所を見つけた様で一つになり、青色の光と一緒になって一つになった。
緑色の光は暗さを持って歩いていた、黄色い光はそれを見つけて手を差し伸べた、緑色の光の暗さは黄色い光の明かりで小さくなった、2つの光は手を繋いで一つになった。
赤色、白色、緑色、黄色、紫色、青色の6つの光は中心に集まり一つになって輝き放った。
輝き放った光の後には虹色の線が出来てサーカス内は光り輝いたアイドル達と虹色の線で埋め尽くされた。
虹色の光はアイドル達を包み込み、アイドル達の光は更に輝きを増していった。
光りが輝きを生み、輝きが熱を生み出してサーカス内は大爆発した!!
光と熱が更に鼓動を高め加速していく、アイドル達は歌い踊った、自分達の光の輝きを世界に見せるように。僕は胸を熱くして叫んだ、そんなアイドル達に負けないように手に自分の輝きを持って振り上げた。
「生きる場所なんてどこにもなかったんだ
今は夢の為に強く放て!
でんぱパトス!!!!
自分じゃない誰かの為に歌え!
でんぱビックバン!!!!!!」
輝き放った光はアイドル達の周りに集まり静かに動きを止めた、アイドル達は横一列に並び頭を下げサーカスの明かりが消えた。
静寂が戻ったサーカスにはアナログテレビがあり電源が落とされた。
またあの時と同じ胸の中が熱い、ただ苦しんではいない、淀みのない真っ直ぐな目でパソコン画面を見つめていた。心臓の音が聞こえてくる、鳥肌立って自分の体を波打たせている。
この人達は本当に強い人だなって思ったのが率直な感想だった、僕と同じ様な過去を持ってるのにこんなにも力強く歌って、人に元気を与えられるんだ、人って言うけど間違いなく僕は元気をもらってる。
まだ誰か誰がよく分かってないけど、すごく知りたいって思う、よし調べよう。
そう思って文字を打とうする時、玄関が開き母親が帰ってきた、急いで時計を見てみると、やば!!!もう五時過ぎていた!!
急いでパソコンの電源を消して片付け始めた、母親は気にする様子もなく家に入って行ってなにか言っている、とにかく早く片付けて部屋に入ろう、素早くパソコンを元の場所に戻して自分の部屋に入ろうとした時、ひっさしぶりに母親と目が合った、別に特に無いのだが、前と違ってなんて言うか落ち着いて見れたって言うか、うんあんま上手く言葉にできないけど、とにかく落ち着いて見れたでいいや、
部屋の中に入ってもまだ胸の中が熱かった。
その日の夜、ご飯は部屋で食べる為、家族が寝静まるのを待ってる部屋の中で、僕の頭の中はでんぱ組.incのWWDが思い出し思い出し流れていた。
いじめられ部屋に引きこもっていた、ゲーセンだけが私の居場所だった。この歌詞を歌っている赤の人、本当にこの歌詞通りなんだよね、もしそうだったら少し羨ましいかも、だって外に出れてるんだから。
この曲自体羨ましいと思っている、自分の暗い過去を歌にしている、僕なら言えないよ恥ずかしいし何より言いたいくない出来る事なら隠してたい。でもそれを歌にして歌っている、自分の過去を言えてるんだ。
それと歌すべてが暗い歌じゃないのもまた羨ましい、未来進行形。曲の終わりに連れ明るくなってる。自分の過去を味方にしている。思った言葉をただ単に単語にして言った。
僕もこうなりたいよ。
その夜はいつの間にか寝ていた。
次の日の朝、腹が減って起きてしまい、どうしても我慢できなくて仕事に行く前の母親と父親と一緒になって朝ごはんを食べてしまった。
父親は何も言っては来なかったが内心嬉しそうな表情を見せてきた。母親は久しぶりの家族三人での食事に心躍らさせて笑いながらご飯を食べていた。
朝ごはん中に母親から話しかけられたが基本的に無視していたが母親の気分は悪くならずに、会話を楽しんでるんじゃなく、食卓に家族三人が一緒になって食事をしているこの風景が嬉しいのかもしれないと、そんなハッピーな事を考えながらご飯を食べ部屋の中に戻っていった。
その15分後、母親、父親二人が仕事に行き家の中が誰もいなくなったのを確認してパソコンをテーブルに持って行ってでんぱ組.incの事を調べた。
赤の子が未鈴ちゃんって言うか、緑がねむきゅん、黄色がえいたそ、白がりさちー、紫がもがちゃん、青の子が藤咲彩音ことピンキー、よし一応メンバーが誰と誰だがわかったぞ!
それとWWD以外にも何曲か曲が合った。
「キラキラチューン」「ノットボッチ、、夏」
「冬へと走りだすお」「futurediver」
「くちづけきボンヌ」「でんぱれーどJAPAN」
ざっと見るだけでもこんなにも!!
他にも見てみるとライブ映像も沢山合った、ツアーライブの映像やテレビでのライブ映像などがアップされていた。
大学教授になって講義している映像も合った、これがでんぱ組.incの歌声以外の声を初めて聞いた映像だった。
YouTube以外にものでんぱ組.incを調べると公式サイトがあった、前も見たっけか?そんな事を思いながらクリックすると、今後のスケジュールやグッズ販売や公式ファンクラブサイトも中にあった、一応ファンクラブを見てみると入会金を支払わないと見られないみたいだ、入会方法はコンビニ支払いからカード払い、僕にはまだまだ先の話だ、、。
サイトの下の方を見てみるとメンバーのブログもあり見てみる事に、おーー結構長い事ブログしてるんだな三年間ぐらいしてる!!あれ、でもえいちゃんあんまり更新してないね(笑)
ブログも一通り見終わって、時計を見ると昼前になっていた、昼過ぎまででんぱ組.incの曲でも聞いてようとYouTubeのライブ映像を上から下まで見ていた。
見ながらこんなも自分がアイドルを好きになっているのが不思議だった、まだ好きって言う感覚じゃ無いけどすごく興味がある。ヲタクともまだ違うよね(笑)そんな自覚ないし(笑)
ライブ映像は思ったより沢山あって、過去のから最新の間ですべてを見ていたら、母親の帰ってくる時間ギリギリにまでなってしまった。
部屋に戻り、今日見た映像を思い出して笑っていた、久しぶりに笑っていた。
それからほぼ毎日でんぱ組.incの事をパソコンで調べて曲を聞いてライブ映像を見てブロクを読んでいた。
母親が休みだったり父親が休みだったりしててパソコンが使えない日はどんなにヤキモキしていたことか、それだけでんぱ組.incは僕の生活の一部になっていた。
そんなある日、スマホを持ってない僕がメンバーの最新情報を知る為には、公式サイトとブロクしかなかった為、毎日の様にブロク更新を待ちわびていた、ツイッターなどは言葉は知っていたけどイマイチよく分からない。
公式サイトを開いて下の方にスクロールするとメンバー全員のブロクがある、見てみるとなんと更新されていたのだ!しかも全員!!大興奮の中、ブロク内容を読んでいると写真集の発売決定のお知らせだった。
でんぱ組.incにはいつもお世話になっているのにグッズは一つもない、あんなに曲を聞いているのにCDもない。
そろそろ一つぐらいは欲しいな、そんな事を思っていた。
その日の夜、でんぱ組.incを知って結構経つ、曲もいいし、メンバーにも大分詳しくなった、みんな可愛い。それにパソコンは母親が帰ってくる時間まで使える帰ってきたら使えない、寂しい。でもなにか一つグッズがあれば寂しくない。そろそろいいんじゃないかな一つ位何か買っても、そう自分に言い聞かせて、グッズがほしいという思いを心に忍ばせた。
夜風が部屋の中を通っていて心地がいい、布団の中に入り眠りるまでの時間、何買おうかなと考えていた、そういえば僕ってお金って持ってたっけか??
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