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【新聞に喝!】
生活保護ジャンパー報道に違和感 「単純正義」が新聞を滅ぼす ノンフィクション作家・門田隆将
新聞の普遍的価値観とは何だろうか。報道の使命を記者たちはどう感じているのだろうか。時々、そんなことを考えさせられることがある。
17日付読売夕刊の記事もその一つだった。生活保護受給者の自立支援を担当する神奈川県小田原市の職員が、〈保護なめんな〉〈不正を罰する〉など、受給者を威圧するような文言を英語とローマ字でプリントしたジャンパーを着て各世帯を訪問していた、と報じたのだ。〈生活困窮者を支えようという感覚が欠如している〉〈前代未聞だ〉という専門家の批判も掲載された。小田原市は厳しく責め立てられ、他紙もこれに追随したのである。
だが、この記事に違和感を覚えた読者は少なくなかった。私もその一人だ。本当に職員たちに「生活困窮者を支えようという感覚が欠如」していたのだろうか。いや、むしろ逆ではないか。私は、そう感じたのだ。
生活保護受給者が激増しているのは、周知の通りだ。不正受給に対する厳しい批判があった約20年前(平成8年)、受給は全国で61万3千世帯、支給総額は約1兆5千億円だった。しかし、26年には、161万世帯で支給総額約3兆7千億円と、倍増以上の伸びを示している。