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『真田丸』は、どんなドラマになるのか?
制作統括・屋敷陽太郎が、物語の航路を示します!

 

何者でもなかった人が、比類なきリーダーへ

『真田丸』は戦国の世を生き延びた真田家を、堺雅人さん演じる信繁の目を通して描く物語です。真田丸は大坂城に実在した砦(とりで)の名ですが、三谷幸喜さんのアイデアで、真田家を一艘(いっそう)の舟に見立ててもいます。
『新選組!』(2004年)でご一緒した脚本の三谷幸喜さんとは、またいつか一緒にやりたいね、戦国時代ならば真田だね、という話をしていました。三谷さんは群像劇が得意です。三谷さんが描く、家族の群像劇が見たい。そう固まったのは、確か2011年頃だったと思います。

僕も30年ほど前に放送された『真田太平記』(1985年)の面白さに魅せられた一人です。他にも真田をやりたがっていた制作者は数多くいたと思います。運良く僕たちのチームの企画が会議を勝ち抜き、2016年度の大河ドラマを手がけることになりました。集まったスタッフは、『新選組!』のメンバーも多く、さながら大坂の陣に集まった牢人たち、という気がしないでもありません。もちろん全てが当時のメンバーというわけではなく、キャストを含め、新しいドラマを作ろうという人たちが集結しています。

このドラマは真田信繁が主人公。彼は亡くなる前の1年間以外、ほとんど表舞台に出ることなく過ごした人物です。しかし『真田丸』では、無名の頃から、泣き、笑い、悩み苦しむ等身大の信繁を描いていきます。後の世に、講談などで「幸村」として名が知れ渡ることになったのには、何かしら理由があるのでしょう。資料は少ないとはいえ、最期の瞬間は素晴らしいリーダーだったと思います。信繁が成長し、立派なリーダーとなる姿を、はじめから英雄としてではなく、もっと低い、身近な視点から、1年かけて見ていただくことになります。

このドラマは真田信繁が主人公。彼は亡くなる前の1年間以外、ほとんど表舞台に出ることなく過ごした人物です。しかし『真田丸』では、無名の頃から、泣き、笑い、悩み苦しむ等身大の信繁を描いていきます。後の世に、講談などで「幸村」として名が知れ渡ることになったのには、何かしら理由があるのでしょう。資料は少ないとはいえ、最期の瞬間は素晴らしいリーダーだったと思います。信繁が成長し、立派なリーダーとなる姿を、はじめから英雄としてではなく、もっと低い、身近な視点から、1年かけて見ていただくことになります。

誰もが必死に生き、生き延びようと

戦国時代といえば、天下を取る、取らない、といった英雄の話か。そう連想される方は多いかもしれません。
準備段階である歴史学者に教えていただいたのですが、「天下を取る」だとか、そもそも「天下」という意識は、当時はなかったようなのです。どうしても僕たちは、戦国時代は皆が天下取りを目指し、そのトーナメント戦に勝ち残ったのが、信長、秀吉、家康だ!と思いがちです。しかし、そういう意識は後世での人々の「後付け」なんだそうです。
周囲を徳川や上杉、北条といった大勢力に囲まれていた真田は、現代に置き換えてみると、零細企業の一家といったところ。毎日、食べられるか? 生き残ることができるか? ということを考えていたわけで、トップになろうなんて夢にも思っていなかった。

また、秀吉が年老いた母親を家康の下へ人質に出したから「ひどい人だ」と思うことも、当時の常識から判断すれば、僕たちの感性の方が「違う」ことになります。真田もまた、生き残るために母、娘、妻を人質に出しています。他家のように、親子兄弟で殺し合いはしませんでしたが、皆、同じように、生き残るために必死だった。そういう時代だったのです。現代との相違も飲み込みながら、ドラマでは今も昔も変わらない感情をもとに、できるだけ低い目線から描いていきたいと考えています。
関ヶ原の戦いの後、信繁が14年の蟄居(ちっきょ)期間を経て、大坂城へ出向いた理由ですが、よく言われているように、亡き秀吉への「忠誠心」や「恩義に報いる」ためだけだったとは、僕自身は思えません。むしろ「恩義のために死にに行く」という考え方は、個人的に嫌だなと感じてしまいます。多分、そのあたりは三谷さんも同じ。信繁は悲壮な覚悟で向かったわけではない。そう思うスタッフが集まって『真田丸』を作っています。

大河ドラマは役者の芝居合戦!

父・昌幸には草刈正雄さん。草刈さんには何があっても出演していただきたいと思っていました。30年前の『真田太平記』では幸村(信繁)役を演じ、今回は丹波哲郎さんが演じていた昌幸役。僕は今から、堺さんと大泉さんに「30年後に昌幸をやってください」と、お願いしているんですよ(笑)。

主演の堺雅人さんは、企画当初から自然に名が上がっていました。次に決まったのが、兄・信幸役の大泉洋さん。物語上でのさまざまな兄弟のパターンを検証し、今の構図が決まった時、三谷さんの筆が動き出しました。

父・昌幸には草刈正雄さん。草刈さんには何があっても出演していただきたいと思っていました。30年前の『真田太平記』では幸村(信繁)役を演じ、今回は丹波哲郎さんが演じていた昌幸役。僕は今から、堺さんと大泉さんに「30年後に昌幸をやってください」と、お願いしているんですよ(笑)。

草笛光子さん(とり役)、高畑淳子さん(薫役)、木村佳乃さん(松役)といった真田の女性陣は、皆、明るく元気。他にも声優、舞台などで大活躍しているものの、テレビドラマは初となる高木渉さん(松の夫・小山田茂誠役)や栗原英雄さん(昌幸の弟・信尹役)をはじめとした、異分野のキャストがもたらしてくれる、少し違った空気感も時代劇ならではだと思います。

そうそうたる役者が揃った大河ドラマというのは、役者の芝居合戦だと思っています。家により、家族や家臣の個性もさまざま。真田をはじめ、徳川、上杉、北条、豊臣など、家同士の芝居合戦も見応えあると思います。
現代の大河ドラマでは、「忠臣蔵」における松の廊下のシーンのような大事件(※)を、「今回はどう描かれる?」というように楽しみに見てくださる方は少なくなってきた気がします。それよりも今は、「歴史上有名な事件だから」ではなく「歴史的に小さな事件でも、登場人物にとって大切なシーンだから」描くことが大切だと思っています。45分1回が、1年分50回繋がったとき、大きな物語となる。これから1年間、毎回楽しんで、満足していただけるよう、僕らは力を尽くしていきます。

※ 江戸時代中期に赤穂藩藩主・浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が、儀式典礼職にある旗本・吉良上野介(きらこうずけのすけ)を、江戸城内松の廊下で斬りつけた事件。のちに赤穂藩の四十七士が吉良邸へ討ち入りする事件の発端となる。

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