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視点・トランプ時代/4 日米安保 極論を排してしぶとく=論説委員・佐藤千矢子

 「米国第一」を掲げるトランプ米大統領の就任を受けて、安倍晋三首相が外交・安全保障で前のめりな発言を重ねている。

     首相は、施政方針演説で日米同盟は基軸で、「不変の原則」だと語った。参院本会議の代表質問では、日本も防衛力を強化し、自らが果たしうる役割の拡大を図っていくと踏み込んだ。衆院予算委員会では、自衛隊が相手国のミサイル基地などを攻撃する敵基地攻撃能力について、検討する考えを示した。

     米軍をアジア太平洋地域に引き留めるため、米国に追随しているように見えるが、日本の防衛政策の自主性を高めることを意識しているようでもある。

     戦後の日本は、吉田茂元首相の親米・軽武装路線と、鳩山一郎、岸信介両元首相に代表される自主外交・自主防衛路線のはざまで、悩みながら自衛隊の役割を拡大してきた。トランプ氏の登場は、日本に対米追随か自主かという、古くて新しい課題を突きつける可能性がある。

     トランプ政権の外交・安全保障政策は不透明だが、少しずつ見えてきたこともある。

     マティス国防長官は、最初の外国訪問先に韓国、日本を選び、アジアの同盟国を重視する姿勢を示した。

     上院の公聴会では、米軍の軍事力を強化し、それを背景に「力による平和」を目指すことや、同盟諸国との関係を重視し、「応分の負担」をこれまで以上に求める考えを示した。応分の負担には、財政面だけでなく軍事的貢献も含まれるのだろう。

     2月に予定される日米防衛相会談と日米首脳会談を控え、国内では、在日米軍駐留経費の負担増を求められた場合、どう対応するかという議論が熱を帯びている。駐留経費ではなく、防衛費を国内総生産(GDP)比1%以内の現状から増額する方向で検討すべきだという声も出ている。

     だが、ここは前のめりになるべきではない。まず、在日米軍の駐留が、いかに米国の国益になっているかを丁寧に説明することから始める必要がある。

     米国の要求に唯々諾々と応じるようでは際限がなくなる。自主防衛も現実的な選択肢とは言えない。極論に走ることなく、手ごわい交渉相手には、しぶとく当たりたい。

     日米安保体制は基軸だが、同盟強化一辺倒では、激変する国際秩序に対応できないだろう。中国との緊張緩和の外交努力にも力を入れる必要がある。

     そのうえで、豪州や韓国など米国の同盟国と協調しながら、現実的な外交・安全保障政策を追求していくべきだろう。

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