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米英首脳会談 損得の「特別な関係」か

 トランプ米大統領が、英国のメイ首相と会談した。トランプ氏が大統領就任後、初めて迎えた外国首脳である。

     両首脳は会談で、米英間の「特別な関係」を確認したという。

     もともとは両国間の歴史的に深いつながりを指して、第二次世界大戦の直後に、当時のチャーチル英首相が演説で使った表現だ。

     しかし、今回は別の意味合いも込められていたのではないか。

     欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国は、今後のEUとの貿易交渉などで孤立しないために、伝統的な同盟国である米国を味方につけておく必要があった。

     一方、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱するなど、多国間協調の枠組みを拒否して「米国第一」路線に踏み出したトランプ政権には、2国間交渉を軸に外交を進めていく方針を国際社会に示す狙いがあったろう。

     いわば、国際協調よりも自国第一の道を選択した米英の思惑が一致した、新しい「特別な関係」だ。

     気がかりなのは、両首脳がどこまで考え方を共有できたのかということだ。

     メイ首相は訪米中の演説で、米英が「自由と民主主義」の理念を掲げて世界をけん引していくと訴えた。また首脳会談後の記者会見でメイ氏は、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)を「100%」支えていくことを確認したと強調した。

     だがトランプ氏は会見で、共通の価値観や安全保障観には触れず、米国民の利益ばかりに力点を置いた印象がぬぐえない。

     ロシアとの関係でも、ウクライナ問題での合意が履行されない限りは対露制裁を続けると明言したメイ氏に対し、トランプ氏は「素晴らしい関係が築ければ良いことだ」と、今後の対露交渉に含みを残した。

     英国内でも、拷問を容認するかのような発言など人権軽視や女性・人種差別が批判されているトランプ氏に、すり寄るべきではないとの意見も強かった。メイ氏はどこまで踏み込んで「忠告」したのだろうか。

     トランプ氏は、英国のEU離脱を改めて支持するとともに、貿易交渉では意見調整が複雑なEUを相手にするよりも、英国だけと交渉する方が進めやすいという考えを示した。同じ理由から日本にも、2国間の貿易交渉を迫ってくるのだろう。

     メイ氏が強調したように米英が価値観を共有し、世界の秩序作りに責任あるリーダーシップを発揮するのであれば歓迎したい。しかし、損得だけで結びつく「特別な関係」にとどまるのであれば、国際社会の信頼を得ることはできないだろう。

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