先に述べておくが、私はONE OK ROCKというバンドについては殆ど知らない。せいぜいが、ボーカルが森進一と森昌子の息子で、元ジャニーズだということくらいである。そうそう、先日おっかけが海外まで来て最前を占拠するのはやめて欲しい、などということを言っていたのも知っている。その事自体はまあまあ気持ちがわかるが、どうも反応を見る限り彼らのファン層はアイドル的なようで、受け入れられていないご様子である。
閑話休題。ということで、なにも知らないのである。音楽自体は意識して聞いたことはなかったが、YouTubeで少し聞いてみるといくらかは覚えがあったので、まあまあ人口に膾炙しているのであろう、と当たりをつけている。もっとも、当ブログの過去の音楽に関する記事をご覧になってもらえばわかるが、私の好みからは180度違うどころか平面を異とする音楽と言えそうなので、当然好みではない。勿論、彼らが属するというエモコアだとかその辺の音楽は聞かない。おそらく、パンクの源流まで遡れば、共通する音楽を聞いているかもしれない。Clashとか。
そのような私が彼らについての記事を書こうと思ったのは、
の熱量にやられたからである。一つのバンドに二万文字、そうそうできることではないと思う。悲しいかな、筆者の方と私の音楽の好みは180度違う(おそらく、BABYMETALが好きでないことくらいしか共通点は見当たらない)し、結論もネガティブなものになってしまうが、少し書いてみたい。
1.全米で成功できるのか
忘れぬうちに手っ取り早く結論を示しておくと、今のままではおそらく無理、である。理由としては色々ある。私が聞く限り、バンドとしての力量にも相当の原因があるが、まあそれは改善の余地がないこともない。まあかなりの努力が必要と見えるが。もう少し構造的なところに、無理な理由があると思う。
上記事のこの部分が正鵠を射ていると思われるので、引用する。
しかし、ONE OK ROCKがもしこのような成功を手に入れるとしたら、おそらく今の音楽性のままでは厳しいのではないかと思う。それは彼らのロックバンドとしての力量の問題ではなく、前述のように彼らが立脚しているジャンルの問題である。
ロックスターの多くは、まずはカテゴリースターになる。しかし、そこからロックスターに脱却するには条件がある。それはそのカテゴリに勢いがあり、音楽シーンを席巻するような盛り上がりを見せている、ということである。
属するジャンルの問題は、実のところ全米で成功しようと思うとかなり重視すべきファクターである。私の立脚するヘヴィーメタルの例を持ち出させていただくと、80年代はまさにこの世の春を謳歌していた時代であった。LA出身、化粧をしている、ある程度ポップ、というだけで猫も杓子もトップを取れた時代である(というのは言い過ぎで、ある程度のクオリティは必要ではあった。)。その最たるものがPoisonである。いやはや、今から聞くとなかなか悪くない音楽ではあるのだが、しかし「これでも全米ナンバーワン?」という疑問符がつくことは否定できない音楽である。
いいバラードだと思うが、オリジナリティというものは皆無である。このように、勢いのあるジャンルに属していれば、そこまで高くないクオリティであっても、てっぺんを取れる。それをこのPoisonという人たちは示してくれている。
そこで、ONE OK ROCKがその勢いのあるジャンルに属しているかというと、
ONE OK ROCKにおいても、カテゴリースターを経由してロックスターを目指すのが正攻法であると思う。しかし問題は、彼らが立脚するポストハードコア、エモ、ポップパンクが、商業的な勢いがないカテゴリである点だ。このような状況を考えると、ONE OK ROCKがロックスターになるためには3つの選択肢を取る必要がある。
ということらしい。そして、おそらく、二度同じジャンルがトップに来るということはない。プチリヴァイバルだとか、類似の音楽で一番になるということは十分に有り得るが、それは似て非なる何かである。すなわち、彼らが全米を取ろうと思えば、ジャンルを大きく変えるか、あるいはジャンルを超越した存在になるか、である。
しかし、「ジャンルを超越した存在」という道もなかなかに厳しい。同じ音楽性でやる限り、どんなに優れた音楽をやっていても、「過去の音楽」とみなされ、見向きもされない、ということはよくある。Danger DangerやEnuff Znuffなどは、あと5年早ければトップになれた逸材であったが、悲しいかな登場が遅かった。
そうすると彼らに残された道はジャンルを変えることである。上記ブログにはエレクトロパンクへの転向が示唆されているが、そのようなことを考えるべきかもしれない。ただここにも問題があって、エレクトロパンクというのは全米ナンバーワンになったアルバムもある、ある程度浸透してきている音楽であるということで、急がないと間に合わなくなる、つまりONE OK ROCKが取り組み、大体的に売り出す頃には空きられている可能性があるという可能性を忘れてはいけない。Fall Out Boyが取り組みだしたのはもう4年も前ということだから、かなり急がないといけないのではないか。ちなみにその判断基準の一つは、オリジナリティのないものがヒットしたかどうかである。そういうものがヒットしだすと、もうそのジャンルは危ない。その例は上記のPoisonである。
ということで、自分たちで新しい音楽ジャンルを作り出すくらいの気概を持たないと、難しいのではないかと思う。そして、その道は相当難しい。なぜなら、彼らのこれまでの音楽を聞く限り、新しい何かを創造できているとは到底思えず、既存のものをブラッシュアップしていく手法を取っていると考えられるからである。
2.言語の壁
そうすると、アイドル売りに近い売り方で狙っていくしかない。そんな彼らの前にそびえ立つのが、言語の壁、もっと精密にいえば発音の壁である。彼らの音楽を聞く限り、英語の発音はかなり悪いと言わざるをえない。しかし、この点については説得的な論を展開できないので、幾つか例を示しておくに止める。
まず、LOUDNESS。二井原実の英語の発音は、正直言って最悪である。それにもかかわらず一定の成功を収めた彼らは、ある時点で二井原を解雇し、アメリカ人のマイクヴァセーラをボーカルとした。が、実はチャートアクションはそこまで変わらない。しかし、プロデューサーのマイクノーマンは相当発音にこだわっていたようである。
Scorpions。クラウス・マイネの発音はお世辞にもよいとはいえないが、全米ナンバーワンヒットが2曲。
イングヴェイマルムスティーン。彼がチャート的に成功を収めたのは、アメリカ人であるジョー・リン・ターナーがボーカルであった時期である。もっとも、それは音楽性によるところが大きい。
3.ルックスの壁
さらに、ルックスの問題もある。彼らの写真を見る限り、日本人としてはそこそこのルックスがある様に見えるし、だからこそアイドル的な人気があるのだろうが、それがアメリカでも通用するか?という問題。
正直言って、彼らの音楽だと「音楽だけ」で売れるのは相当厳しそうであるから、ルックスの助けを借りる必要がありそうである。しかし、ここに立ちはだかるのが人種の壁である。仕方がないことだが彼らはアジア人、ルックスで売っていくのは相当厳しいと言わざるをえない。少なくともアジア系で、ルックスで売った歌手というのは全く思いつかない。それにボーカル氏の身長は168cmとのこと。元ジャニーズだからさもありなん、と思うが、かなり低いと言わざるをえない。この時点でシリアスに取り上げてもらうのは相当厳しいのではないかと思う。
後は年齢。One Directionのデビューは各メンバーが10代のときである。ジャスティン・ビーバーにしても、10代でデビュー。ボーカルは28歳ということだから、もう厳しい年齢なのではないか。三十路超えのアイドルが許されるのは日本だけ。
4.結論
以上から、ONE OK ROCKが全米でトップを取るのは相当難しいと言わざるをえない。主観的な話になるので室の問題には触れなかったが、そちらでも大きな問題を抱えていると思える(この点元の記事と対立する。また、模倣の問題にしても、問題は真に模倣したかではなく、「模倣した」と思われてしまうかどうかである。Kingdom Comeの問題を持ち出すまでもなく。)。まあ、そこはまだまだ改善の余地があろうから(時間はないが)、理由にはしない。
正直言って、海外進出を夢見るのではなく、日本でのさらなる成功を目指していくほうが障害収入的にはよいのではないかと思える。ほら、ちょうど目の上のたんこぶであるジャニーズの勢いも衰え始めていることだし。
もっとも、彼らが諦めることは良しとしないことはわかるから、努力してほしい。ただ、このまま同じことをしていてはダメだ、ということである。向こうの市場では存在しないも同じなのだし、二年ほど活動を止めて、音楽を磨いていったほうがいいと思うが如何か。