いろは伝奇外伝 ブレイブ・サーガ (後編)


 芝居が終わると、観客席から喝采が上がった。惜しみない拍手が役者たちに贈られた。無論トーマスとエミリオも手が痛くなるほどの拍手を続けた。
 舞台の上で恥ずかしそうに観客席に頭を下げる、いろは役の少女。彼女は観客席に外国人がいることに気づいた。
「あ、お兄ちゃん、外国の人がいるよ」
 さっきまで、サスケを演じていた男である。実質のサスケよりは少し若い。
「あ、ホントだ。でもあの人たちセリフの内容分かるのだろうかな」
「うん、でもああして拍手してくれているんだから、私たちの演技の気持ちは通じたのかも!」
 いろは役の少女は外国人二人の客に改めてペコリと頭を下げて、彼らの拍手に答えた。

 トーマスはカンベエに一座の責任者と主なる役者たちに会わせてくれるよう手配を頼んだ。この一座からジパング出身の人物を演じる者を集めようと考えたのだ。あの舞台から、この一座の芝居の実力は容易に推し量れたからである。
 勇者アレルの冒険記には突き詰めると四人のジパング出身の主要人物がいる。『いろは』『ひみこ』『サスケ』、そして『イナホ』である。
 カンベエには同時に通訳も依頼したので、手数料に自分たちの自腹でゴールドを払おうとしたが、カンベエは辞退した。
「いりませんよ、今は仕事中ではないので」
 そしてトーマスの頼みを快く引き受け、カンベエは芝居小屋の奥へと歩いていった。そして一座の責任者は外国からの客に会うことを了承した。
 一座の責任者は五十歳くらいの男だった。あの弁士である。驚いたことに、
「ジパングにようこそ、アリアハンのお方。私はこの一座を預かるトラゾウです」
 トラゾウはアリアハンの言語を容易に話したのである。
「アリアハンの言語を……?」
「あははは、アリアハンのみならず貴国の言葉は世界共通語でございますからね。それに勇者アレルやいろはの記録はすべて貴国の言葉、文字でございます。海に出た後のいろはの足跡を知るには学ぶ必要があったのですよ」
 そのとき、いろはを演じた少女がトーマス、エミリオに茶を出した。
「粗茶ですが」
「あ、おかまいなく」
「……?」
 彼女にはトーマスの言葉が分からなかったようである。だが、そのキョトンとする顔は、まさにいろはを思わせるほどの愛らしさであった。そして、いろはと同じく髪は晴れ渡る空を思わせるほどの鮮やかな青髪であった。
「娘には、まだアリアハンの言葉は教えておりません。あ、紹介します。私の三女阿国です。人は出雲の阿国と娘を呼びます」
「オクニです」
 三つ指をたて、静かに阿国はトーマスとエミリオにかしずいた。
「阿国、団十郎と八雲、絹を呼んできなさい」
「はい、父さん」
 阿国は部屋から出て行った。トラゾウはキセルに火を着けた。
「それで、アリアハンのお方、当一座に何用で?」
「はい、実は」
 
 トーマスは語った。勇者の故郷アリアハンで勇者アレルの冒険記の舞台を開演すること。自分と連れのエミリオはその責任者で、舞台の成功を国王から厳命されていること。だが勇者の冒険記であっても、主役はアレルではなく、いろはであるということを。
 そして、それにはジパングの娘を登用したいと。『ひみこ』『サスケ』『イナホ』を演じる役者も一座から借用したいと、彼は包み隠さずに話した。
「なるほど、そういうことでしたか」
 キセルの灰を煙草台にポンと落とした。
「脚本を今お持ちですか?」
「はい、持っています。エミリオ」
 エミリオの手からトラゾウに脚本が渡された。
「なるほど、いろはが勇者と共にアリアハンを出るまで、のお話ですか。しばらく読ませてもらいますが、よろしいか?」
「かまいません、どうぞ」

 座長トラゾウの部屋が沈黙に包まれた。その時、阿国が団十郎、八雲、絹を連れてきた。あまり広い部屋ではないので、さすがに八人もいると狭い。
 団十郎は座長が脚本を読み終える間に、一座のことをカンベエを通してトーマスたちに話した。団十郎はトラゾウの長男であり、絹、八雲、阿国もまたトラゾウの娘であること。遠い出雲の国からずっと旅をしてきて、目的地はイナホの出身地のエッゾであり、現在長女の絹はイナホを演じるために戦士らしい体作りに励み、兄の団十郎から剣術の手ほどきを受けていること。
 その談笑をよそに、トラゾウは脚本をじっくりと読んでいた。トーマスにとっては団十郎の話よりもトラゾウの表情のほうが気になった。
「というわけでして……他の役者たちや職人たち合わせれば、ざっと三十人の一座です。前々から国府のムサシノで興行をやるのが夢でして、望みがかない満足しています」
 団十郎の話が終わったころ、トラゾウも脚本を読み終えた。トーマスはゴクリとツバを飲みトラゾウに聞いた。
「ど、どうでしょう」
「あなたが書かれたのですか?」
「ええ、脚本家は本職ではないのですが、どうしても自分で書いてみたくて」
「素晴らしいお話です」
「本当ですか!」
「はい、倅と娘たちをお貸ししましょう」
「ありがとうございます!」

 トーマスはトラゾウの手を握り、何度も頭を下げた。かくして2ヶ月と云う条件付きでトーマスは団十郎、絹、八雲、阿国と云う四人の役者と契約を果たした。2ヶ月以上だと一座の財政があぶないからである。その期間は一座の公演ができない。
 だが、一座は旅の料理屋と云うもう一つの側面も持っていた。しばらくはそちらに精を出すほかない。しかし一座の役者が大国アリアハンでいろはを演じるのである。多少の財政難も、その誇りと名誉に比べようもない。
 トラゾウは一座から離れるわけにもいかないので、カンベエが四人の役者のアリアハン語教師と後見を兼ねて共にアリアハンに行くことになった。これは話を聞いたジパング女王イヨの計らいであった。
 一座の見送りを受けて、四人はかつていろはが海に脱出したサガミの港からアリアハンに向かった。

 船の上でカンベエからアリアハンの言葉を学ぶ四名。なにしろ史実上ではジパングの言葉で話されている言葉もアリアハンの言葉で話さなくてはならない。
 しかし彼らはカンベエが舌を巻くほどにアリアハンの言葉を学んだ。四人たち兄弟はアリアハンにて自分たちが『いろは』『ひみこ』『サスケ』『イナホ』を演じることが決まってから、日常会話もアリアハン語でするように勤めたのだ。彼らも自国の英雄を大国で演じる高揚感があったのだろう。
 また、いろは役は次女の八雲、三女の阿国が演じることが決まった。八雲がいろはの時は阿国がひみこ、阿国がいろはを演じるときは八雲がひみこ。なにしろ主役であるし、公演は何度も行われる。一人でやるには少し体力的にきつい。だから八雲と阿国はひみこといろは、双方のセリフを完全に覚える必要がある。
 二人は稽古も船の上であろうと欠かさない。カンベエのアリアハン語講義の休憩中にも、その寸暇を利用して稽古した。今も甲板でやっている。

「『わらわの命が聞けぬか! いろは!』……少し弱いかな?」
「うん、まだ振り向きながら言うクセが取れてないよ八雲姉さん。振り向いてから一喝だから」
「そうね。ではもう一度……『わらわの命が聞けぬか! いろは!』」
 無論、このセリフもちゃんとアリアハン語で言っている。講師のカンベエにも、そろそろ教えることがなくなってきていた。少しは休みなさいと姉妹に言いにきたカンベエだが、あまりの熱心さに何も言えず、微笑んで稽古の様子を眺めていた。
「熱心ですね。あの子たち」
 そのカンベエにトーマスが話しかけた。
「ええ、もう教えることも底をついてきました。まったく彼らときたら真綿が水を吸収するかのようにアリアハン語を体得していって……完全に覚えるまで2.3年かかった私の立場がありませんよ」
 船首の方ではサスケを演じる団十郎が筋肉トレーニングをして、イナホ演じる絹は剣術の修練に汗を流していた。
「もはやアリアハンの言語は心配いりますまい。ところでトーマス殿、他の役者の方はもう集まっているのですか?」
「はい、いろはがアリアハンを旅立つまでが今回の舞台。それゆえロマリアで仲間になったカンダタとマリスは登場しませんが、ホンフゥ役には本物の武闘家を起用しましたし、アレル、ステラは無論のこと、ロカやレイラもいい役者を揃えました。また、マサール役にはパノンと云う者を」
「パノン……確か有名なお笑い芸人では?」
「その通りです。還暦を迎えられ、もうお笑いからは身を引いてレーベの村で隠居生活をしておいででしたが、私が頼みました。人を笑わせるチカラを溢れるほどに持っておられた方です。役者としても一流に相違ないと思いまして」
「それは的中しましたか?」
「はい、本人は『シリアスなジジイなんて演じたことないわい』なんて言っておいででしたが、どうしてどうして。まさにハマり役となるでしょう」
「なるほど、私も一観衆として楽しみな舞台となりそうですね」

 船はそろそろアリアハンに到着する。アリアハンとジパングを結ぶ海路は、いろはの時代と変わってはいない。四人は自分もいろはと同じ海の上にいるのだと思うと感無量だった。本日の筋肉トレーニングを終えた団十郎は感慨深く水平線を眺めていた。その横にはイナホを演じる妹の絹がいた。
「知っているか? 絹。トーマス殿はいろはをジパングのみの英雄ではないと言ったそうだ」
「そうですってね」
「嬉しいじゃないか。世界から見ればジパングはまだ文明が遅れた国だ。反面アリアハンはもっとも発展した国だ。その大国の劇場でオレたちがわが国の英雄を演じられる。しかも主役でよ」
「うん、すごく嬉しかった。だからアリアハンの言葉を学ぶの、少しも辛くなかったわ」
「絹が演じたかったのじゃないか? いろは役は?」
 絹は笑った。
「残念だけれど、ジパング脱出時のいろはは十六歳だもの。二十四歳の私が演じるわけいかないじゃない」
「まあ、そうだな」
「それにイナホを演じるのもジパング女には名誉なことよ。彼女は冒険の資金繰りのために娼婦とまでなり、そして最期は仲間に殺されると云う救われないものだったけれど、演じて分かる。素敵な女性だったんだろうなあ……て」
 その時、絹はハッとしたように気づいた。
「どうした?」
「あんちゃん、アレルブルクってどっちの方角かな?」
「ん? ダーマのさらに北の北だから……こっちから見て……」
 北北西を団十郎は指した。アレルブルクは男装の女戦士イナホの眠る土地である。
「あっちだ」
「そう」
 絹はその方向に合掌した。
「未熟者の役者でございますが……あなたを演じさせていただきます」
 団十郎もそれに倣い、合掌した。そして……

「アリアハンが見えてきたぞ〜!」
 船員の声が甲板に響いた。船室で稽古をしていた八雲、阿国も甲板に出てきた。大きい城の天守閣がそびえ、港もジパングとは比べ物にならないくらい賑わっている。阿国はいろはも同じ光景を見て心を躍らせたに違いないと思い、ジッとしてなどいられなかった。兄と姉のいる船首まで駆けていった。
「お兄ちゃん! 絹姉さん! アリアハンだよ!」
「ああ、きっといろはも今の阿国と同じように、胸を躍らせてこの光景を見たに違いない」
 後からやってきた八雲が港にジパングの文字で書かれた旗を見た。かなり汚い字であるが読むことはできた。五十人以上はいるだろうか。その旗を歓喜して振りながら船の到着を今か今かと待っている様子だった。
「兄さん、あの旗」
「ん……え〜と……きったない字だな……『ようこそいろはさま』だと」
 船首にいる四人の下に、トーマス、エミリオ、そしてカンベエもやってきた。
「どうやら、あなたたちを待っているようですよ。アリアハンの市民たちに少し漏れてしまったようですね。いろは、ひみこ、イナホを演じるためにジパングから青い髪の美人三姉妹がやってくると」
「えっ」
 八雲と阿国は頬を染めた。絹は笑った。
「ちょっとトーマス殿、おだてても何も出ませんよ」
 コホンとカンベエが咳払いをした。
「トーマス殿、こちらの到着をあれほどに待たれたら、三姉妹殿は劇場に辿り着く前に囲まれて前に進めないではありませんか」
「すぐに港の役人に手旗信号を送りまして警護を頼みましたから心配無用です。それよりもそろそろ彼らの目にもこちらが確認できる距離です。お顔を見せてあげては?」
 困る阿国と八雲は兄の団十郎を見た。団十郎は笑って頷いていた。
「八雲、阿国! 軽く手くらい振ってやれ」
 少し照れながら、八雲と阿国は港で旗を振っている一団に手を振った。いっそう旗は激しく振られた。
「おお! なんと美しい!」
「まさに現代のいろは姫だ!」
 港にいた他の者も、その一団の視線の先を見て思わず八雲と阿国、そして絹の美しさに作業そっちのけで見とれた。

 姉妹が上陸すると、早くも熱狂的ファンになったものたちに囲まれかけたが、港の警備役人に阻止された。だが警護の者たちも姉妹の美しさに呆けてしまう。
「やれやれ、サスケ役のオレは完全に無視か」
 団十郎は苦笑いだが、自分の妹の三人がこうまで「美しい」と言われ、まんざらでもないようだ。

 劇場に行くまでの間、市民たちは姉妹に振り向き、時に立ち止まり、その一行を見た。劇場に到着すると他の役者やスタッフに熱烈な歓迎を受け、そして、その日から稽古に励んだ。
 姉妹はアリアハンの言語を母国語のように話せるほどの上達を示し、他の役者も『見栄えが美しいだけの女たち』と云う印象を持ったものは皆無であった。

 そして開演初日、アリアハン王国劇場は超満員となった。立ち見の客も所狭しだった。
 舞台の脇から、その満員ぶりの客席を見て、そして控え室に戻ってきた準主役のアレルを演じる若者ランドが部屋に入るなり言った。
「みんなすごいぜ、立ち見もいるよ!」
「海外からも見に来ているというじゃない」
 と、ステラ役のクリス。
「う〜緊張してきた。ちょっと便所」
 ホンフゥ役のリーはいそいそとトイレへと向かった。
「まったく最近の若い者は情けないのう。もちっと開演までデンと構えておれんのか?」
 とマサール役のパノンは立ち上がり、いそいそと部屋から出て行く。
「パノンさん、どちらに?」
 サスケ役の団十郎が尋ねると、しかめっ顔してパノンは答えた。
「便所じゃ」
 パノンが部屋から出て行くとランドは吹き出した。
「五度目だぜ、確か。クックククク……」
 若き日の賢者マサールを演じるベゼルと云う若者は落ち着き払い本を読んでいるが、ページは進んでいなかった。騎士団長ロカを演じるイワンは鏡に向かい、鼻毛を抜いているが、もう抜く鼻毛がない。いずれの共演者も緊張していた。

 そして主役いろは役の阿国とひみこ役の八雲は舞台衣装に目をキラキラさせていた。こんな綺麗な巫女装束を着たことなんて一度もない。ビシッとのりが効き、装飾品も豪華そのもの。まさに一国の女王と、その宰相に相応しいものだった。
 絹も青い長髪を結い、兜と鎧、剣を装備した男装の女戦士へとなっていた。顔つきもそれにつられたか、凛々しいものとなっていた。
「では、あんちゃん、八雲、阿国始めましょう」
「おう」
「「はい、姉さん」」
 四人は輪になって並び、腰を下ろして、地に手を着けた。読んでもいない本から目を外したベゼルは絹に尋ねた。
「絹さん、それは?」
「これは我が国に伝わる芝居前に行う儀式です」
「儀式ですか?」
 指先をハンカチで拭きながらイワンが言った。
「ええ、大地の神様にお願いするのです。お芝居が無事に終わりますよう、お客さんに楽しんでもらえるように。特に今回のお芝居のように戦闘の場面があるときは誰もケガなどをしないようにと、お祈りするのです」
「それはいい、私もご一緒してよろしいですか?」
 本を閉じてベゼルもその場で腰を下ろして地を手につけた。
「私も!」
「オレも!」
 トイレから帰ってきたリーやパノンもすぐに倣った。
「では、阿国、主役のあなたが」
「はい、姉さん」
 両の手を地に付けて、阿国は祈った。
「大地の神様、私たちは本日つつしんで勇者アレルとその仲間たちの冒険記を演じます。かの偉人たちに恥ずかしくなく演じるほど、私たちは稽古に励んで参りました。なにとぞ見守りくださいませ」
 阿国は合掌し、そして再び両の手を地に付けた。他の者もそれに倣った。そしてアレル役のランドが言った。
「あれ? 不思議に緊張がほぐれてきたよ」
「本当ね」
 ステラ役のクリスは苦笑した。

 その時、控え室のドアが開いた。劇場支配人のトーマスだった。
「時間だ!」
 ランドが阿国を笑って見つめた。ランドの言いたいことが分かった阿国は言った。
「さあ皆さん! まいりましょう! たくさんのお客さんが待っています!」
「「「おおッッ!」」」

 初のいろはが主人公の勇者アレルの冒険記は大絶賛された。『八雲、阿国以上のいろは、ひみこ無し』と言われるほど姉妹にとりハマり役であり、同時に『絹以上のイナホ無し』とも言われ、絹にとってもイナホはハマり役だったのである。無論、団十郎も同等の評価を受けた。
 その後、四人は再びジパングに帰り、旅の一座に戻った。大国で、そして大観衆の前で演じたとしても兄妹たちは決しておごらず、故郷ジパングで旅を続けた。しかし、年に一度はアリアハンに招かれいろはを演じた。アリアハンの市民たちはそれを心待ちにしていた。

 いろはを演じるに適さない年齢になった阿国は、その後に独自の舞台を編み出した。一座から一本立ちして阿国一座を旗揚げし『かぶき踊り』と云うものを披露したのである。それまでのジパングの女性の踊りは、いろはがサマンオサで踊ったように、物静かなものであったが、阿国は派手な色使いの着物の男装姿で踊ったのである。
 いろはを演じて絶賛されるほどの美女の阿国が踊るに最初は異様な光景だったが、それ以上に阿国の色っぽさが際立った。その異様さも次第に庶民のあいだでは流行しはじめ、人気を博してゆくことになり、彼女の踊りはすぐに大衆に受け入れられた。それは後に一つの文化となり後年のジパングで『歌舞伎』として伝えられていくのである。

 阿国は亡くなるとはジパングの国府ムサシノにある『いろは廟』に埋葬された。いろは廟にいろはの遺骨も遺髪もないが、ジパングの人々は、ここにいろはの魂があると信じている。
 阿国は、かつて演じた僧侶いろはのすぐ近くで眠ることになるのである。後々までもいろはと阿国の墓前に花が絶えることはない。


いろは伝奇外伝 ブレイブ・サーガ 完


あとがき
 『いろは伝奇』を書き終える直前あたりから、後にいろはやアレルを演じる若者のエピソードを書いてみたいと思い、今回こうしてアップしてみました。
 私は時代劇は大好きでして、特に信長、秀吉、家康の天下人三人衆が時代劇スペシャルなどになると誰が信長を? 秀吉を? なんて真っ先に考えてしまいます。誰が演じるかというのは、結構時代劇ファンには重要なことでございます。そういう気質ですので、こういう『その後』みたいのも書きたかったのですよ。

 ちなみに言うと、次回作のダイのお話にも、私はこの『外伝』に近い下りを書いています。バーン討伐後に役者になったキャラがいるのです。それを書いているうちに「いろはにも……」と思い、ダイの執筆をいったんやめて、今回のお話を書きました。
 気持ちが少し切り替わりましたので、ダイの小説の進行も、返って早くなったりするかもね。とにかく最後までこの外伝を読んでくれた人に感謝です。

越路遼介