東芝が27日、稼ぎ頭の半導体主力商品「フラッシュメモリー」事業の分社化と原子力発電事業の縮小を発表し、巨額損失からの再生にスタートを切った。半導体と原発を柱に据えた再建シナリオを抜本的に見直す。ただ、新たな成長の柱は見えず、コーポレートガバナンス(企業統治)も弱体化。「再生」には暗雲が漂う。(万福博之)
「これを契機に再生に向かって頑張りたい」
綱川智社長は27日の記者会見でこう意気込んだ。分社する半導体新会社の買い手候補には、半導体生産で協業する米ウエスタンデジタル(WD)や複数の欧米ファンドなどが浮上。
中国や韓国の同業からの出資は技術流出懸念から避けるとみられ、現時点では「ファンドが有力」(東芝幹部)という。だが、ファンドは2割未満の出資にうまみを感じるか不透明で、着地点は見えにくい。一方、経営危機の元凶となった原発事業を綱川社長の直轄としリスク管理も強化。「底なし沼」のように損失が発生し続ける事態に歯止めをかける。
東芝は再建計画を練り直すが、不正会計問題発覚後にエアコンなどの白物家電子会社や医療機器子会社といった有望事業を切り売りしてしのいできた結果、巨艦企業の「解体」が進行しており、次の稼ぐ力を見いだすのは難しい。
利益の大半をたたき出す半導体事業にも分社が影を落とす。韓国サムスン電子などとしのぎを削るフラッシュメモリーは競争力保持に年数千億円規模の投資が必要。分社計画は昔からあったが、もともと投資資金を集めやすくするためだった。資金が損失の穴埋めに回れば、競争力強化はおぼつかなくなる。
東芝をめぐっては不正会計問題の発覚で経営陣が刷新された。今回の巨額損失は、米原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が買収した原発建設会社で想定外にコストが膨らんだのが原因。だが、東芝経営陣は、WHの原発建設会社買収から約1年間も巨額損失を把握できず、ガバナンスは弱体化したままだ。再建には暗雲が立ちこめている。
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