PPAP商標問題から考える、ブロックチェーンが社会にもたらす影響と可能性に関するポエム

先日、知人を通じたクローズドのブロックチェーンの勉強会に参加して、今更聞けないことも含めて聞いてきた。その次の日に腹立たしいニュースを見て、ブロックチェーンの活用に対するアイディアを思いつくことになる...

関係の「商標出願」繰り返す企業、ついに「ペンパイナッポーアッポーペン」も!

ピコ太郎さんの大ヒット曲「Pen-Pineapple-Apple-Pen(PPAP)」で使われるフレーズ「ペンパイナッポーアッポーペン」などが、大阪府内にある無関係の企業によって商標出願されていたことがわかった。

「PPAP商標出願」男性を直撃 「ビジネス」と強調

男性は出願に必要な手数料を支払っておらず、大半が半年後には却下されるといいますが、それまでは「仮押さえ」の状態になります。その間に「商売」になりそうなものを見極め、他社に取引を持ちかけるのだといいます。

「とにかく先に出願した方が、最も早い出願人が勝つんです。新聞やインターネット等のメディアを通じて、この言葉いいなとか、自分がこれから使用するかもしれないなとか、そういうものに限って出願しています。ビジネスモデルが確立して、もっと大きな会社になった時点で有名になりたい」

今の商標のルールは「特許庁に対し、いくつか特殊な手続きを行い出願することで、誰でも権利を押さえることができる」というものです。

これは特許庁に提出することで、「この人が最初に出願した人である」ということを日本国内においては特許庁が保証するという社会のルールで実現されていますが、当然、PPAPのニュースに対して、僕らはこの事態には納得いきません。

でも、そういう社会のルールになっているので仕方ないのです。

そのことを逆手に取って、タレントさんの作品やギャグなどが商標登録されてしまうわけです。

これは「作品の公開」と「権利の出願」が分離されているのが原因で、その時間差を利用して利益をかすめとろうという行為と言えます。

これに制度上の欠陥があるのは明らかであり、当然、僕らにとって自然なのは「作品の公開」と「権利の確保」が同時に行われていることが望ましいに決まっています。

何故、そもそも商標を横取りされるかというと、出願には手間がかかるからです。まだ当たるかどうかわからないネタに対して商標を出願するのは得策ではありません。

それよりも一日も早く作品を発表して、世の中に反響を問うほうが100万倍も重要です。

ところが、それだとネタが当たった瞬間に出願ゴロの人達に負けます。

その後、このような問題は企業スポンサーへの展開などに対する障壁が生まれて、余計な摩擦が起きます。余計な摩擦は、正当な権利保有者が本来得られるべきだった利益を損なうことになります。何よりこのような事態を防ぐために、無駄なお金もかかりますし、かかる人件費も無駄になります。それに対する利益は、「本来得られるはずだった損失を防ぐため」でしかなく、生産的な利益は1円も増えません。

これは間違いなく社会の損失であり、改善すべき重要なイシューです。

今回は日本国内の話ですが、国をまたいだ特許の問題は世界レベルで多数起こっています。出願に手間やお金がかかること、専門知識が必要であることから、知財については、人員リソースも潤沢にある大企業についてはカバーできていますが、ベンチャー企業については後手に周ります。

それは芸人さんと同じで、自分たちのサービスが当たるかがわからないからです。まずはプロダクトを世に問うて、人気が出るかどうかを確認してから、資金の出資を受けて、権利関係を固めていきます。

Huluにあるドラマ「シリコン・バレー」では、起業を夢見る若者が画期的な技術を開発したものの、うっかりライバルである大企業に盗まれてしまい、その大企業と戦うストーリーが描かれていますが、そのようなことが日常的に起きるわけです。

そこでブロックチェーンですよ、と。

方法はシンプル、Youtubeがブロックチェーンを実装して「この人の作品は、このGoogleアカウントを保有している人のコンテンツであることを保証する」わけです。

そこに音楽やギャグであれば、作品をそのまま公開すればいいですし、プロダクトであればデモ作品を公開する。

そして、その段階の動画のスナップショットデータのハッシュとともに作品の署名をしてあげる。

そして商標や基本特許については、世界レベルで、このプロトコルに対して先願権を認めれば良い。

ブロックチェーンは、それ自身が署名した人や日時を保証できるプロトコルで作られています。改ざんはできません。

ブロックチェーン自体は、データのプロトコル上は公開の仕組みで作られていますので、「このアカウントの人が正しく動画を公開した」という証拠は、Googleでなくても、他のサイトで登録された情報も検証することができるようになります。

別にブロックチェーンでなくてもGoogleが権利を保証すればいい、となるかもしれませんが、Googleは言っても一企業ですので、世界レベルで同意できる約束が必要です。ブロックチェーンはそれに耐えうる力を持っています。プロトコル自体はYoutube以外でも展開できるようにしてあればこそ、その正当性が広く使われるわけです。

例えば、中国国内の製品の権利であるとか、ですね。経済発展を遂げた中国はまだ後追いのものが多いですが、遠くないうちに世界の最先端を作る時代が来るでしょう。そうすると彼らは追う立場から追われる立場に変わります。その段階で知財を守ることが重要な問題になるでしょうから。

いずれにせよ利用者は商標や特許の請求項等に書く情報や商品名に該当するものを、プレゼンテーションとして動画で残しておけばいいだけです。

そうなると作品の公開と権利の保証がシームレスに実現できるようになります。

で、ヒットしてから後からゆっくり商標申請をしたらいいわけです。その権利はインターネットを通じて保証されています。仮に権利をめぐる裁判が起きても、その動画の中身に対して妥当性の議論することになるのだと思います。

ビットコインは、マイナーによる多数決で権利が保証されますが、裁判は裁判官や陪審員が多数決的に係争を解決します。最後は人間系で解決できるようにバトンタッチしましょう。

つまりブロックチェーンをうまく使って、社会をインターネットネイティブにしていけばいくほど、世界レベルでオープンな権利保証ができるようになるでしょう。

そうなると、社会の契約行為に対する変革を起こせると思います。

このアイディアで重要なのは、「まだ海のものとも山のものともわからないフェーズにおいても権利を与えることが出来る」ということです。コンピュータで自動でブロックチェーンが発行されているからいいわけです。価値は後からついてくる。

世の中の信用保証の仕組みは、大体はそうなっておらず、「ちゃんと価値を作ってから来い」です。例えば、銀行融資やクレジットカード決済サービスの利用などについては、個人では信用判断できずに、法律や経済状況に対して一定基準を満たした企業になっていなければ、信用を得ることができません。

それは「ちゃんとしてから」じゃないと、その人が信用できるかどうかが判断できないからです。ところが、イノベーションみたいな「新しいもの」の初期段階は、やってる当人達にとっても不透明なフェーズで、権利関係をちゃんとすることに時間をかける余裕はありません。

それがPPAPが商標出願に負けた理由であり、商標に関しては、権利保有の正当性がバックデートできない、というのが、今の社会の問題になっているということでしょう。

マジでくだらないです。

このような社会が実現すると研究者や開発者にとってのルールが変わるでしょう。場合によっては悪いことも多々起きるかもしれません。

でも、PPAPの権利は守られるでしょう。何が良いかは世界で議論して動くでしょうけど、開発者の立場としては、少なくとも、自分の権利は低コストに守れることの方を支持したいと思います。

(と、実現もしていないことに対する、ポエムを書いてしまってすいません)

ブロックチェーンの今後の可能性

ブロックチェーンが第二のインターネットになる、と言われる所以は、その仕組みにありますが、まだ理解するのは難しいです。ブロックチェーンの代表的なアプリケーションであるビットコインに対する不信も少なくないですし、そのポテンシャルも誤解されている面も多々あります。

今のところブロックチェーンは、インターネットで言うなら、イーサネットとかIPのレイヤーの技術が発明されたぐらいの認知なのだと思います。この段階で社会の変革を見据えていたのは、一部の研究者だけです。当時の人達は「インターネットで遊んでいた」と表現するでしょう。つまり不確定なところを、抽象的に理解して、楽しんでいるフェーズが開発フェーズということです。

その後、HTTPプロトコルが作られ、その上で動くモザイクが生まれて、画像が文字がHTMLという言語を使って流通できるようになって、ようやく沢山の人に、この有用性が認知が至るになりました。

要するに人は「無料でエロ画像を見えるようになって、はじめて恩恵を感じる」ということです。

現時点でもビットコインで多少なりとも儲ける人もいるわけですが、そうはいっても、今、売って喜んでいる人達は、昔から持っていた価値があがったという意味での「投機」でしかなく、決して経済を支えるような通貨にはなっていません。

それは一定の価値が固定化された段階で起きる現象であり、その時にブロックチェーンは使っていたとしても、ビットコインであるかどうかは不明です。(というか多分、そうじゃないんだと思います)

ブロックチェーンは、まだIPレイヤー+ちょっとぐらいの認知と言っているのは、インターネットで言うウェブブラウザまでのキャッチーさがまだ納得される形で見つかってないからでしょう。ただ、多分、徐々に社会への認知が進むにあたって、この技術は使えるような気がします。

決して、その中身自体は新しい技術でもないし、基本的な方法論はインターネットで活用されている技術そのものなので、基礎技術の妥当性に文句をつける人はほとんどいません。あとは応用例が、社会的に受け入れるか?というのを実現していくのでしょう。ビットコインは、それに対する一つのアプリケーションとして、ひとまず成功しているようには思っています。

ただ、別にこれだけがブロックチェーンじゃないですし、ビットコインにもたらせた信頼を下地に新しいアイディアも出てくるでしょう。

抽象的な話でメリットも見えない話で恐縮ですが、多分、1990年代とかの研究者も同じような感じだったと思うのですが、まぁそんな感じです。

アイディア一つですごいものが出てきそうな予感だけはあるので、僕も、しっかり勉強していきたいと思っています。