韓国、慰安婦合意破棄と市民革命で、日米との同盟断絶か…親中国へ傾斜の末路
とうに破綻していた「慰安婦合意継承」のシナリオ
「キャンドル革命」とその後の政局は、日韓関係にどんな変化をもたらすのか。まず日本側にとって気になる慰安婦合意は、釜山の件が示す通りほぼ絶望的だ。そもそも両首脳が歴史的快挙と胸を張ったこの合意が次期政権に継承されるシナリオは、最初から1つしかなかった。それは朴大統領の後継者を自認する保守派の与党系候補が大統領選で勝つことだ。
文在寅前代表、李在明市長、安哲秀代表を筆頭とする野党系候補はみな、当初から慰安婦合意に反対の立場。また世論調査でも、常に半数強が慰安婦合意に否定的回答をしている。こうした状況を抑えて合意継承を強行するには、朴大統領が安定した支持基盤を維持したまま任期を全うすることが必須条件だ。だが、このシナリオは昨年4月の総選挙で与党が大敗し、朴大統領が求心力を失った時点ですでに破綻していた。
朴大統領の後継者と当初目されていたのは、潘前事務総長だ。同氏は慰安婦合意についても、当初は国連事務総長の立場で歓迎の意思を示していた。だが、大統領選出馬が濃厚になった昨年3月にはもう、「慰安婦問題解決の努力を評価しただけで、合意内容を歓迎したわけではない」と発言を翻したことが報じられている。「キャンドル革命」が吹き荒れるいまはなおさら、朴政権の政策継承は潘氏にとってダメージにしかならない。
流動化する米韓関係と日韓の将来
「キャンドル革命」が日韓関係にもたらすインパクトは、安全保障分野にも及ぶ。文在寅前代表、李在明市長、安哲秀代表ら野党候補はみな、朴政権が締結した日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)に否定的な立場だ。さらに中国との摩擦をもたらしている在韓米軍の迎撃ミサイルシステムTHAAD配備も、見直しに意欲を見せている。
こうした事態をいっそう流動的にしているのが、トランプ米大統領だ。アメリカの外交専門誌「フォーリン・ポリシー」は昨年12月、文在寅前代表と李在明市長がトランプ氏による在韓米軍防衛費分担金の増額に応じないおそれがあるとの分析を示した。野党陣営とその支持者に根強い反米志向が、トランプ大統領の登場で本格化する可能性は高い。
アメリカとの離反は同時に中国への傾斜を意味する。「キャンドル革命」にともなう左派系の台頭で、「大韓民国のリセットとリビルド」が反米親中へと向かっていく公算は大きい。米韓同盟のたがが緩めば、慰安婦問題をはじめとする対日批判はいっそう激しくなるだろう。こうした韓国側の選択で両国の将来がどのように明暗を分けるのか、これから徐々に明らかになる。
(文=高月靖/ジャーナリスト)