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めんたい子のイタリア狂想曲

イタリアを狂おしく想うめんたい子が、旅やグルメ、カルチャーなどイタリー情報をお届け。

世にも奇妙な3人のイタリア人 ~File2:孤高のミュージシャン~

イタリアってこんな国

めんたい子と名乗らせていただいているのだから

たまには明太子を食べようと思い、

今日の晩御飯は久しぶりに

スーパーで明太子を買って、

ほっかほかの炊き立てごはんにのっけて食べた。

 

 

が、そんなにうまくなかった。

 

 

 

 

 

すごく落ち込んだ。

 

 

 

 

 

さて、そんな落ち込みやすいめんたい子には

大きなコンプレックスがある。

 

 

自分の意見が言えない、というコンプレックスだ。

 

 

 

暗記中心の義務教育や、

他人の顔色を窺いながら話すうちに、

自分で考えることがとても苦手になってしまった。

何か意見を求められると

当たり障りのない回答を探し、

その場をなんとかやりすごす。

 

特にイタリア人と話すときは、

ひときわめんたい子のダメっぷりが際立ち、

落ち込むことが多い。

 

 

イタリア人は、政治の話ひとつにしたって

「こうしたらいい」「これではダメだ」と

自分の考え、疑問、提案をしっかり持っている。

 

「めんたい子はどう思う?日本ではどうなの?」

そう聞かれる度に

「ワタシモソウ思ウヨ~!日本モソンナカンジカナ~!」

とひきつった愛想笑いで返すのが精いっぱいだ。

 

 

めんたい子は安倍政権に対して

何か疑問を持ったことはあっただろうか。

 

 

ない。まず、ない。 

 

あったとしたら

プレミアムフライデーありがとう!!くらいだ。

 

 

とにかくイタリア人の考える姿勢、

そして自分をしっかり持っているその強さには、

学ばされることが多い。

 

 

 

 

めんたい子の知り合いに、

ミュージシャンのマルコ(仮名)がいる。

 

マルコは音楽教師の傍ら、

バンドを組んで地元を中心に活動している、

二刀流だ。

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マルコもまた然り、

常に考えることをやめない。

常にさらなる高みを求めて

もがき苦しみ、己と戦い、究極の芸術を作り出している。

 

 

そんなマルコに、

「どんな音楽をやってるの?

 ジャズ?ロック?ポップス?」

とめんたい子は聞いた。

 

 

 

マルコは言った。

 

 

「俺たちは新しい音楽のジャンルを切り開いてるんだ。

 ジャズでもない、ロックでもない、ポップスでもない。

 そのすべての要素が俺たちのジャンルだ。

 ニュースタイルって言ってもいいかな。」

 

 

 

 

めんたい子は固まった。

 

 

 

「ヘ、ヘェ~…!ニュースタイルゥ?

 ナ、ナンダカ、カッコイイネェ~~!」

 

 

悔しくもまた、意見を言うことができなかった。

 

 

 

マルコとは毎年のように会うのだが、

去年は彼とそのパートナーたちとドライブに出かけた。

 

 

すごく年季の入った車だった。

 

 

カーブをまがるたびに何か車の接合部分から

音が鳴っている気がする。

 

 

でもマルコは気にしない。

 

 

「そんなことより、新曲できたんだ。

 聞いてくれないか?」

 

 

 

地中海に面した絶景が広がるドライブルートで

彼の新曲は流された。

 

それも、めんたい子が今までに経験したことのない

爆音で、だ。

 

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例えるなら東京ドームに5万人収容したときくらいの

コンサートの音量だろうか。

 

 

それを

年季の入った4人乗りの自動車で

めんたい子は聴いている。

 

 

 

 

(必ず、感想を求められる・・・!)

 

 

 

めんたい子の成長の見せ所は迫っていると、

必死に言うべきことを考えた。

 

 

もうひとりの同乗者(イタリア人)は、

「うん、悪くないね。あそこのパートの

 盛り上がりなんかは最高だよね。

 あそこはどんなインスピレーションからきたの?」

と模範解答のような完璧な感想を述べた。

 

 

そろそろめんたい子の番だ・・・

 

 

 

そして、開口一番、こみあげてきたのは、

 

 

 

 

吐き気だった。

 

 

 

海沿いのドライブルートは湾に沿ってうねり、

年季の入った車はガタガタ動き、

東京ドーム5万人分を凝縮した爆音のなかで、

めんたい子は車に酔ってしまった。

 

 

めんたい子は酔いにまかせて

しばしたぬき寝入りをすることにした。

 

 

 

 

どうにかこうにか切り抜け、

ドライブは終了。

 

すると今夜またみんなで

ディナーをすることになってしまった。

 

 

 

マルコとのディナーは、

めんたい子にとって鬼門だ。

 

音楽教師でもあるマルコは、

予想に反さず、教育熱心だ。

マルコとのディナーは、毎回、

夜回り先生ばりの熱を帯びている。

 

その日のテーマは「人生に必要なもの」と「旅」だ。

 

「人が生きていく上で、無くしちゃいけないもの、

 すなわち大事なものってなんだと思う?」

 

 

今宵はクイズ形式だ。

 

 

め「ソウダナ~! ウーン、、、時間!!カナ!?」

 

 

マ「……NO… 違う」

 

(え、違うの…!?時間大事よね!?)

 

め「エ~ト、ジャ、金カナ!?アハハ!?」

 

マ「......NO... 違うよ」

 

(いや今の笑うとこなんですけどーーー!)

 

その後も次々とチャレンジャーは現れる。

 

「夢!?」

「NO」

「仲間!?」

「NO」

 

そしてマルコは諦めたかのように答えをいった。

 

 

「欲望だ」

 

 

(ウソーーーーーーーン!)

 

「人は欲がなければ生きていけないんだ」

 

(それ当たり前ヤーン、マズローの欲求5段階説ヤーン)

 

 

 

また、めんたい子が憧れの地中海豪華客船クルーズに

乗船したときのことを嬉々と話していると、

 

 

「俺はクルーズって、嫌いだな。

 旅の醍醐味ってさ、なんだと思う?

 その地に行くまでの移動とか、

 うまくいかなかったときのハプニングとか、

 そういうところじゃないかな?

 クルーズってそういうところが

 全部省略されちゃってるよね。」

 

 

うーん。まぁ確かに言わんとしていることはわかる。

めんたい子も、旅のハプニングを楽しむタイプだし。

 

話が進むと、

いつかめんたい子に会いに、

みんなで日本に行こうという流れになっていた。

 

いつ頃がいいのか?夏はすごく蒸し暑いから、

5月か10月あたりがいいのかな?

東京ってすごいエキゾチックだよね!!

この渋谷の交差点本当にやばいね!!

 

みんな楽しそうに計画を立てていた。

日本に興味を持ってくれて、

めんたい子もうれしかった。

 

 

「日本はね、畳っていうのに布団敷いて寝るんだよ♪」

 

 

めんたい子が調子に乗って放った一言に

マルコは敏感に反応した。

 

マ「どういうことだ?」

 

め「床に布団しいて寝るんだよ~」

 

マ「床・・・だと・・・?」

 

め「あ、日本はね、家の中では靴を脱ぐんだよ!

  みんな裸足で過ごしてるから汚くないよ!」

 

マ「・・・・・・俺は脱がない。」

 

め「・・・へ?」

 

マ「俺は、何が何でも脱ぎたくない!」

 

め「・・・へ?」

 

マ「なんで脱がなきゃいけないんだ?」

 

め「いやいや、これが日本の文化なんだよ!

  日本のルールだよ!」

 

マ「日本人はルールに縛られすぎなんだ!

  だからポポロ・キウーゾ(閉じた民族)なんだよ!!

  俺は自分の好きなようにする!!」

 

 

えええええ ウソーーーーンwwwwww

あなたさっき旅の醍醐味は、

その土地土地に根差す、みたいな感じだったヤーン?

異文化楽しむのがむしろ旅、みたいな感じだったヤーン??

なぜ国民性問題にハッテーーーン???

むしろ日本の靴脱ぐ文化スゴクナーイ?

清潔だし、足も蒸れないヨーン???

 

 

めんたい子は日本の看板も背負っている。

閉じた民族だなんて言われたまんまじゃ終われない。

 

「日本というのは、内と外という考えがあって、

 内というのは神聖なもので穢れてはいけない、

 そんな考えが根本にあっていつの日か、

 外と生活の場を分けるようなしきたりが

 できたんじゃないかと私は思うんだけど!?

 イタリアっていうのは、広場が生活の一部

 だったみたいに外と内の境目がないじゃない、

 だから靴はいてるんじゃないの!?」

 

 

あれ・・・?

 

 

言えてる・・・?

 

 

あたい、意見言えてる?

 

 

 

 

めんたい子は、

事実かどうかはともかく、

自分の頭で考えたことを

まわりの顔も気にせず

しっかりと伝えることができた。

 

 

マルコのまだ腑に落ちない表情を横目に

めんたい子は自分の成長を嚙み締めた。

 

意見を戦わせること、自分の思うことを言うこと、

それはとても解放感に満ちたものだった。

 

マルコはそれを身をもって教えてくれた。

 

 

あれからまだ日本には来ていないが、

我が家に来たときは断固として

靴を脱いでもらうべく、

論破できるよう、備えておきたいと思う。

 

 

これが世にも奇妙な3人のイタリア人の2人目である。

 

 

 

チャオ

 

 

 

↓1人目はコチラ

 

tarako-pasta.hatenablog.com