JR北海道が直面する「老朽施設の修繕費」問題

経営改善へ「鉄道ユニバーサル利用料」を

廃止が決定している夕張支線を走るディーゼルカー(写真:kazuotokumitu / PIXTA)

「できれば残してほしいけどね」。筆者がJR北海道の不採算路線の現状を視察するために訪れた、石勝線夕張支線の夕張駅舎内に入居する喫茶店「和(なごみ)」で、常連客の男性は鉄道についてこうつぶやいた。これから札幌へ向かうと話すと、男性は「俺たちが札幌へ行くときは車か高速バスだね。速くて安いから」と続けた。

「自分たちは乗らないけど、通学生や高齢者、障がい者などのために残してほしい」。公共交通の存続が問題となる場面で多く聞かれる声である。そうした声に対して、北海道旅客鉄道(JR北海道)の西野史尚副社長・鉄道事業本部長は「乗らないけど残してほしいではなく、私たちも乗るから是非残してほしいと言ってほしい」と訴える。

若者の流出と過疎化が乗客減に拍車

筆者は新千歳空港に降り立ったその足で、千歳線千歳駅始発の普通夕張行き(列車番号:2629D)に南千歳駅から乗車した。同駅を10時43分に発車したキハ40形ディーゼルカー1両の列車の車内は10人ほどしか乗車しておらず、ほぼ全員が鉄道ファンとみられる旅客であった。新夕張駅からテレビの取材班が、そして北海道夕張高校最寄り駅の南清水沢駅からは高校生が大勢乗車し、ようやく車内は活気づいた。

夕張支線は廃止が決まっているが、通学の足の確保が気になるところである。夕張市まちづくり企画室は「通学に支障が出ないよう、代替交通の充実に万全を期したい」とする。一方、夕張駅まで残り時間がわずかとなった車内では、高校生たちが進路の話に花を咲かせており、男子生徒の一人は札幌市内の専門学校へ進学すると言う。地域鉄道にとって、高校生は重要な顧客だが、少子化、若年層の大都市圏への流出、そして過疎化が鉄道の乗車人員減少に拍車をかけている。

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