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経営状況が悪化するほどに、
我が社の「神」である「社長」の機嫌は
ドンドン悪くなっていきました。
殴る、蹴る、叩く、投げる。

そんな「神の怒り」のせいで、
会社の空気は常にピリピリしていました。

例えば、先輩のオカさんは
「アポが取れなかった」という理由で、
社長に
「オマエ、今日一日イスな?」
と言われて、1時間ほど?イスになっていました。
しかし!
「愛されぽっちゃりボディ」のオカさんに
1日中イスを続ける事なんて出来ません。

何度も途中で崩れてしまい、
逆上した社長にボールのように蹴り飛ばされていました。
あれはヒドイ。

当たり前の話・・かもしれませんが、
オカさんは後日会社を去りました。

いや、オカさんだけではありません。
そんなこんなで15名ほどいた社員は
いつの間にか、7名ほどになっていました。

これもあたり前の話ですが、
人が減れば減るほどに、
会社の空気はドンドン暗くなっていきました。
そんな時、さらにみんなを
「どん底」に追い込むニュースが舞い込んできました。
支店長のトラさんが亡くなったのです。
支店のメンバーから聞いた話によると、トラさんは
「会議室の包丁事件」のあたりから、
「うつ状態」になっていたそうなのです・・・・。

トラさんを追い詰めたのは・・・紛れもなく社長です。
私は支店長だったトラさんとはあまり面識が無かったのですが、
それでもトラさんの死を聞いて酷くショックを受けました。

前の会社から志を共にし、
一緒に独立した社長や部長のショックは・・・
私とは比べ物にならない程大きかった事でしょう。

しかし現場を取り仕切る部長は、
職場では決して弱気な姿は見せませんでした。

ですが社長は・・・・
トラさんが死んだ直後から
会社に姿を見せなくなってしまいました。
社長が会社に来なくなる直前に、
玄関口にあった花瓶を床に叩きつけているのを私は見ました。

社長がどんな気持ちだったのか・・・・
私にはわかりませんが・・・。

私は割れた花瓶を片付けながら
(この会社はもう終わりなんだなぁ・・)
と密かに感じ取っておりました。

しかし・・・・・
意外なことに会社はここから劇的な経営回復を始めます。
スマホバブルが起きたからです。
(スマートフォンが1台売ると7万とか儲かった時代の話です。)
突然出社してきた社長が
「スマホ売るぞ!」と言い出した時は
どうなる事かと思いましたが・・・。

会社の業務と全く関係の無かったスマホを、
みんなで必死になって売り続けました。

そうして・・・・なんやかんやで、
会社の業績はグングン回復していきました。
そして
会社の業績が上がれば上がるほど、
我が社の「神」である「社長」の機嫌は、
ドンドン良くなっていきました。

ニッコニコ・・・・・・。
今までの事が全部ウソだったかのように、
社内の空気も劇的に改善していきました。
少なくとも
社長がむやみに暴力を振るう事はなくなりました。
まぁ・・・そう暴力は・・・。
結局、
会社に蔓延していた暴力の原因は、
「お金がなかった事」ですからね・・・。
お金は良くも悪くも、
人を大きく変える力があるのでしょう。
でも・・じゃあこれで
めでたし、めでたし、何てことはありません。
失ったモノがあまりにも多すぎましたから・・・・。
だいたい1年後
その日、社長の誕生日パーティーが開かれました。
社長の誕生日は
ジン社長のいきつけのオシャレなバーを貸し切って
全社員でお祝いするのが通例です。

そこで社長は
珍しく、みんなへ日頃の感謝のお礼を言っていました。
「ここまでオレについて来てくれた事、本当に感謝している。」
「お前らが一生懸命頑張ってくれたから、
ここまで何とかやってこれた。」
そんなような事を言っていました。
(社長の口からそんな言葉が・・・・。)
みんなビックリして
目を丸くしていました。

その後・・・・社長はしばらく沈黙した後・・・
トラさんの話を始めました。
でもなんて言っていたのか、よくわかりませんでした。
なぜなら話しながら社長が泣きじゃくってしまい
「でもトラが・・トラがいてくれたら」
と「トラがトラが」と繰り返すだけで
何を言っているのか・・全く聞き取れなかったのです。

社長もトラさんの死後・・
責任を感じて相当苦しんだのかもしれません。
他の社員も釣られてグズグズと涙を流します。
でも泣けば許される事でしょうか?
私は泣いている社長の顔を
ジィーっと見つめてしまいました。
なんとなく・・
社長がソレを
「演出」や「計算」でやっているようにも見えたからです。
(本当に?それ本当に悲しんでいるんですか?)
とかそんな風に考えてしまいました。
私の心が汚れていたのかもしれません。

泣いている社長と同僚の姿を見ていると
(自分はこの会社をいつか辞めるだろうなぁ・・・・)
と心のどこかで思ってしまいました。
そういつか・・・・。
前にもお話しましたが、
会社を辞めるのは簡単な事ではありません。
無能な人間がブラック企業から転職しても、
次に待っているのは
また別のブラック企業でしか無いからです。

一度社会のレールから外れて
ブラック企業だらけの「地獄の沼」に墜ちた人間が、
真っ当な会社である「天国」に戻るのは
簡単な事ではありません。

しかし、同じブラック企業でも
この「法人営業を行うブラック企業」には
僅かながら真っ当な道(天国)に戻れる糸口がありました。

例えばそう、
会社を去ったオカさんは自分の顧客に取り入って
真っ当な会社(天国)に戻ることに成功していました。

(こんな会社辞めてやる!)
と思ったオカさんは
自分を雇ってくれそうな顧客の会社に
親切丁寧に通いつめて、
見事に取り入って、
真っ当な就職先を手に入れていたのです。

そんな話をオカさんは辞めた後に、
電話をかけてきて、随分誇らしげに話していました。
(スゴイ)
他の会社には無い、そういうチャンスが
こういう法人営業の会社にはあるのです。
そういう意味でも、この会社は限りなく
「天国に近い会社」だったと私は思います・・。
そう考えていた私も、
色々あってイラン人の社長に誘われて会社を辞める事になります。
まぁもちろん大失敗して路頭に迷う事になるのですが・・。

それはまた、別の機会にお話します。
おしまい。
さいごに
天国に一番近い会社の概要はざっくりこんな感じです。
これでなんとなく「会社の雰囲気だけ」把握して頂ければ幸いです。
またちょっとずつ、
この会社の話をさせて頂ければと思います。
