ここ数年、ロシアは平和の脅威とされてきたが、米国でドナルド・トランプ大統領が誕生したことで、米露関係改善の可能性が囁かれるようになってきている。
そのことは、ウラジーミル・プーチン露大統領にとって新しい悩みをもたらし得るが、トランプ問題以外にも、2017年の初めから、ロシアの話題が連日メディアを賑わしている。
2016年12月15、16日のプーチン露大統領の訪日、そして日露間の経済関係を中心とした関係深化の趨勢は、年が変わっても続いている。1月11、12日には世耕弘成経済産業相兼ロシア経済分野協力担当相が訪露し、ロシア政府要人と会談して安倍晋三首相が提案した8項目の経済協力プランの具体化を目指した。
日本が目指してきた北方領土問題における進展がなかったことから、プーチン訪日は失敗だったとされることが多いが、失敗にさせないために、日本のロシア重視外交は続くはずだ。
なぜなら、確かに北方領土問題における進展はなかったものの、そもそもロシアは日露間に領土問題はないというスタンスをとっており、領土問題を議論するには信頼関係が不可欠だと主張してきた。そのため、経済協力によって信頼関係を醸成し、そこで初めて領土問題を議論する前提が生まれると考えるほうがよさそうである。
そうだとすれば、経済協力を成功させることこそが、今後の日露関係と領土問題の進展の鍵を握るとも言える。安倍首相も4月(日時未定)と9月の訪露を予定しており、今年は日露関係にとって重要な年になり得るだろう。
他方、日本がプーチン訪日で沸いていた頃、米国ではバラク・オバマ前大統領が、米国大統領選挙時に行われたサイバーテロはプーチンが指示したものだという見解を表明し、メディアをにぎわせていた(拙稿「広がるロシアハッキング問題の波紋、オバマがトランプに残した宿題」参照)。
ロシアは根拠がないとして米国サイドがロシアの行為としている内容を否定し続けているものの、その後、ロシアがサイバーテロに加え、様々な情報戦を仕掛けてきたことや、トランプ新米大統領の醜聞をロシアが握っていることなども次々報じられ、ロシアが世界の脅威であるという雰囲気が強まっている。
特に、今年はヨーロッパの選挙イヤーであり、3月のオランダ下院選、4〜5月のフランス大統領選挙と6月のフランス国民議会選挙、そして秋のドイツ連邦議会選挙……と重要な選挙が続く。
これらの結果によっては、昨年の英国国民投票で決まった英国のEU脱退(Brexit)に追従する国が出てくると考えられ、特に、独仏の動向はEUの存続にまで大きく影響しうるため、選挙の推移には大きな注目が集まっている。
そのような状況の中で、ロシアが欧州の選挙にもサイバーテロや情報戦で介入するのではないかという危機感が広がっている。
このように、ロシアに対する国際社会の不信感が高まっているものの、今年のロシアの内政および外交は、去年に比べればポジティブな材料が多いように思われる。