News Up 転勤のルール あなたの会社は?
社員の転勤について時期や期間など具体的なルールを定めていない企業は76.4%。先日、厚生労働省の研究会でこんな調査結果が示されました。共働きや介護などの事情を抱え、できれば転勤はしたくないと考えている人にとっては、とても気になる数字です。そこで、転勤にルールは必要ないのか、現状を取材しました。
今月に厚生労働省が開いた転勤に関する研究会。この中で、「労働政策研究・研修機構」が300人以上の労働者がいる企業1万社を対象に行った調査結果が示されました。回答した1852社のうち、引っ越しを伴う転勤を社員にさせている企業は、61.2%に当たる1133社。その一方で、転勤の時期や期間などのルールについては、「定めていない」という回答が76.4%にも上りました。
それでは一体、転勤は何を根拠に命じられているのか?。労働問題に詳しい嶋崎量弁護士によると、転勤に関しては通常、入社の際の契約書をはじめ、就業規則や労働協約によって定められています。そのため、転勤についての定めがない場合は、企業側に転勤を命じる根拠はないことになりますが、実際には多くの企業が、「業務上の必要性がある時には配置転換を命じることができる」といった、いわゆる「配転命令権」を定めた文言を盛り込んでいるといいます。つまり、この文言さえあれば、具体的なルールがなくても社員に転勤を命じることができるのです。
それでは一体、転勤は何を根拠に命じられているのか?。労働問題に詳しい嶋崎量弁護士によると、転勤に関しては通常、入社の際の契約書をはじめ、就業規則や労働協約によって定められています。そのため、転勤についての定めがない場合は、企業側に転勤を命じる根拠はないことになりますが、実際には多くの企業が、「業務上の必要性がある時には配置転換を命じることができる」といった、いわゆる「配転命令権」を定めた文言を盛り込んでいるといいます。つまり、この文言さえあれば、具体的なルールがなくても社員に転勤を命じることができるのです。
ルールがない企業は76.4%
今月に厚生労働省が開いた転勤に関する研究会。この中で、「労働政策研究・研修機構」が300人以上の労働者がいる企業1万社を対象に行った調査結果が示されました。回答した1852社のうち、引っ越しを伴う転勤を社員にさせている企業は、61.2%に当たる1133社。その一方で、転勤の時期や期間などのルールについては、「定めていない」という回答が76.4%にも上りました。
それでは一体、転勤は何を根拠に命じられているのか?。労働問題に詳しい嶋崎量弁護士によると、転勤に関しては通常、入社の際の契約書をはじめ、就業規則や労働協約によって定められています。そのため、転勤についての定めがない場合は、企業側に転勤を命じる根拠はないことになりますが、実際には多くの企業が、「業務上の必要性がある時には配置転換を命じることができる」といった、いわゆる「配転命令権」を定めた文言を盛り込んでいるといいます。つまり、この文言さえあれば、具体的なルールがなくても社員に転勤を命じることができるのです。
それでは一体、転勤は何を根拠に命じられているのか?。労働問題に詳しい嶋崎量弁護士によると、転勤に関しては通常、入社の際の契約書をはじめ、就業規則や労働協約によって定められています。そのため、転勤についての定めがない場合は、企業側に転勤を命じる根拠はないことになりますが、実際には多くの企業が、「業務上の必要性がある時には配置転換を命じることができる」といった、いわゆる「配転命令権」を定めた文言を盛り込んでいるといいます。つまり、この文言さえあれば、具体的なルールがなくても社員に転勤を命じることができるのです。
転勤はなんのため?
では、企業はどんな理由で社員を転勤させているのか。最初に紹介した調査で最も多かったのが「社員の人材育成」で66.4%。次いで「社員の処遇・適材適所」が57.1%、「組織運営上の人事ローテーションの結果」が53.4%などとなっています。
社員の側から見た場合はどうでしょうか。労働政策研究・研修機構が正社員5800人余りから得た回答では、転勤が「職業能力の向上に効果がある」という質問に対し、「そう思う」と「ややそう思う」と回答した割合が69.9%。「人脈形成の機会となっている」が85.6%などとなっていて、社員にとっても一定のメリットを感じていることがうかがえます。
一方で、「できれば転勤したくない」と思うかという質問に対して、「そう思う」と「ややそう思う」と回答したのが39.6%。「家族に与える負担が大きい」は85.8%に上っています。また、女性では転勤によって「結婚しづらい」と感じる割合が38%。「子どもを持ちづらい」が48.8%。「育児がしづらい」が58.7%などとなっていて、人生設計を立てるうえで、転勤が1つの障害となっている現実も浮かび上がります。
社員の側から見た場合はどうでしょうか。労働政策研究・研修機構が正社員5800人余りから得た回答では、転勤が「職業能力の向上に効果がある」という質問に対し、「そう思う」と「ややそう思う」と回答した割合が69.9%。「人脈形成の機会となっている」が85.6%などとなっていて、社員にとっても一定のメリットを感じていることがうかがえます。
一方で、「できれば転勤したくない」と思うかという質問に対して、「そう思う」と「ややそう思う」と回答したのが39.6%。「家族に与える負担が大きい」は85.8%に上っています。また、女性では転勤によって「結婚しづらい」と感じる割合が38%。「子どもを持ちづらい」が48.8%。「育児がしづらい」が58.7%などとなっていて、人生設計を立てるうえで、転勤が1つの障害となっている現実も浮かび上がります。
安心して働ける環境を
今回、厚生労働省が転勤についての研究会を開いた背景には、労働を取り巻く環境や労働者側の意識の大きな変化があります。ワークライフバランスの問題に詳しいニッセイ基礎研究所の松浦民恵主任研究員は「企業にとっては事業展開上の必要性や人材育成などを理由に転勤を行っているので、転勤がなくなることはないが、一方で介護や病気治療などさまざまな事情を抱えている人が増えている。また、若い人の中には、転勤を避けて地元での就職を希望する人もいて、今のままの転勤の在り方でいいのかを考える時期にきている」と指摘します。
そうした中、社員の生活にも配慮して独自にルールを定めている企業もあります。食品メーカーのカルビーでは、就業規則に「転居を伴う転勤及び出向は本人の同意のもとにおこなう」と書かれていて、「本人の同意」がなければ転勤を命じられないと明記しています。カルビーの担当者は「実際にどれくらいの人が同意をしないかは明らかにできないが、例がないわけではない」と話しています。
また、労務行政研究所によると、一部の企業では転勤の期間を労使協定で定めているケースもあるということです。
松浦主任研究員は「企業にとって、フリーハンドで人事権を持つというのは都合がいいように見えるが、長期的に考えると、優秀な人材を確保して、会社を存続させていくためには、従業員が安心して働くことができる環境を作っていくことが必要だ。そのためには、転勤の期間にめどをつけたり、本拠地を設定して、そこから異動した場合に次は本拠地に戻すといったルール化も検討するべきだ」と話しています。
そうした中、社員の生活にも配慮して独自にルールを定めている企業もあります。食品メーカーのカルビーでは、就業規則に「転居を伴う転勤及び出向は本人の同意のもとにおこなう」と書かれていて、「本人の同意」がなければ転勤を命じられないと明記しています。カルビーの担当者は「実際にどれくらいの人が同意をしないかは明らかにできないが、例がないわけではない」と話しています。
また、労務行政研究所によると、一部の企業では転勤の期間を労使協定で定めているケースもあるということです。
松浦主任研究員は「企業にとって、フリーハンドで人事権を持つというのは都合がいいように見えるが、長期的に考えると、優秀な人材を確保して、会社を存続させていくためには、従業員が安心して働くことができる環境を作っていくことが必要だ。そのためには、転勤の期間にめどをつけたり、本拠地を設定して、そこから異動した場合に次は本拠地に戻すといったルール化も検討するべきだ」と話しています。
転勤が難しい場合には
会社員にとって、転勤を断るというのは現実的には難しいことかもしれませんが、何らかの事情で転勤ができない場合はどうすればいいのか。
嶋崎弁護士は「組合活動の妨害や退職を目的としたいやがらせの転勤命令などは拒否することができる。また、子育てや介護の事情は、育児介護休業法という法律で配慮するよう定められているので、事情の程度によっては断れる可能性がある」と話します。
一方で、現状では会社側の権限が強いため、事情があったとしても転勤を断ることはリスクがあると指摘します。嶋崎弁護士は「転勤を拒否した場合、就業拒否だと捉えかねられず、欠勤などを理由に解雇されてしまうケースもある。転勤のことで困った場合は、弁護士や労働組合など専門家に相談してほしい」としています。
共働き世帯や親の介護をしなければならない社員が増える中、厚生労働省の研究会は今年度中に、転勤について企業が配慮すべき点などをまとめたガイドラインを策定することにしています。転勤に限らず、長時間労働の是正やワークライフバランスの実現など、働き方改革が叫ばれる中、企業側にとっても労働者側にとっても、納得できるような制度や指針を打ち出す事ができるのかが注目されます。
嶋崎弁護士は「組合活動の妨害や退職を目的としたいやがらせの転勤命令などは拒否することができる。また、子育てや介護の事情は、育児介護休業法という法律で配慮するよう定められているので、事情の程度によっては断れる可能性がある」と話します。
一方で、現状では会社側の権限が強いため、事情があったとしても転勤を断ることはリスクがあると指摘します。嶋崎弁護士は「転勤を拒否した場合、就業拒否だと捉えかねられず、欠勤などを理由に解雇されてしまうケースもある。転勤のことで困った場合は、弁護士や労働組合など専門家に相談してほしい」としています。
共働き世帯や親の介護をしなければならない社員が増える中、厚生労働省の研究会は今年度中に、転勤について企業が配慮すべき点などをまとめたガイドラインを策定することにしています。転勤に限らず、長時間労働の是正やワークライフバランスの実現など、働き方改革が叫ばれる中、企業側にとっても労働者側にとっても、納得できるような制度や指針を打ち出す事ができるのかが注目されます。