蹴球探訪
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【首都スポ】[大学サッカー]柏大型CB橋口のシンデレラ物語 関東1部出場わずか4試合2017年1月27日 紙面から
無名の存在がJ1の舞台に挑戦する。柏に今季加入したセンターバックの橋口拓哉(22)=流通経大4年=は関東大学サッカーリーグでプレーした実績をほとんどもっていなかったが、J1クラブとのプロ契約を勝ち取った。190センチの高さに加え、キックのうまさで攻撃の起点にもなり得る“影の逸材”。レフティーなのも大きな魅力だ。まだまだ発展途上にあり、さらなる大化けを見せるかもしれない“未完の大器”に聞いた。 (取材・構成、関孝伸) −関東大学1部リーグのピッチに立ったのは4年間で4試合だけです。つらい時期もあったことが想像できます 橋口「1年生のときは全然通用しなかったというのが正直な感想ですけど、それは予想していたことでした。でも、2年生のときはつらさがありました。あとから入ってきた同じポジションの1年生がすぐに試合に出るようになったからです。1年生がプレーするのを観客席から見て、悔しく思っていました」 −2年生の年は9月にケガもしました 「練習中に右膝の後十字靱帯(じんたい)を損傷して、3カ月くらいの間、プレーできませんでした。ただでさえ結果を出せていないときだったので、つらくて気持ちが折れそうになりましたけど、サッカーをあきらめるところまではいきませんでした」 −3年生のときも出番はなく、4年生になっても、シーズンの前半はトップチームに加われませんでした。JFL(日本フットボールリーグ)に参戦している流通経大ドラゴンズ龍ケ崎での登録でした。ドラゴンズは大学のセカンドチームです 「4年生の最初は全然ダメで、ドラゴンズでも試合に出ることができませんでした。その頃はさすがに焦っていました。サッカー選手以外の別の道もそろそろ考えなきゃいけないのかなとも思うようになりました」 −ところが、転機が突然やってきました 「トップチームに高さがないということで、中野監督が190センチの僕をトップの方に引き上げてくれました。去年の9月のことです。そのあと、10月にトップのサブ組がレイソルと練習試合をやって、そこで90分間プレーしました。チャンスだと思って臨みました。高さでは負けなかったと思いますし、守備だけではなくて、左足でのつなぎやロングフィードの部分もある程度できた感じでした。それで、試合後すぐにレイソルから練習参加を要請されました」 −高さだけが特長ではないところを柏にアピールすることができました 「ドラゴンズのサッカーがつなぐスタイルだったんです。もともとの僕はつなぐタイプではなかったんですけど、ドラゴンズで試合に出るにはつなぎもできるようにならなきゃダメだと思って、その部分をすごく意識して練習するようになっていました。つなぐためにはポジショニングも大事で、そこについてもこだわって、それまでよりも頭で考えてプレーするようになりました」 −話はそこからトントン拍子に進みました。柏の練習でも、上々の出来だったわけですね? 「その直前に関東大学リーグで初めて先発させてもらって、早稲田に3−0で勝ったんです。完封できたということで、自信をもってレイソルの練習に行けました。調子が良かったからかもしれないですけど、レイソルの練習でもうまくプレーできて、手応えを感じました。その週末に正式にオファーをいただきました。苦しくてもコツコツとやり続けてきたことが報われました。うれしかったです。でも、大事なのはプロになってから結果を残すことなので、割と冷静にオファーを受け止めました」 −すでにプロとしての生活がスタートしています。現在の状況を教えてください 「パスやポジショニングのスピードをもっと速くしなくちゃいけないということなんかを特に感じながら、毎日の練習に取り組んでいます。今はちょっと苦戦しているんですけど、慣れるでしょうし、今までのようにコツコツとやっていけば大丈夫だと考えています」 −今季の意気込みを聞かせてください 「左右2枚のセンターバックのうち、左には左利きの選手を使いたいというのが下平監督の意向みたいです。今のチームで左利きのセンターバックは僕と(2016年U−19日本代表の)中山雄太のふたり。雄太はU−20ワールドカップが今年行われるので、レイソルの方を離れることがあるでしょう。だから、僕が試合に出るチャンスが来ると思っています。今のレギュラーは雄太かもしれないですけど、雄太がいないときには僕を使いたいと監督から言ってもらえたので、モチベーションが上がっています。カップ戦とかでチャンスをつかんで、最終的には雄太を超えて、リーグ戦にも出られるようになりたいです。競争があった方がチームのレベルが上がっていくので、新戦力の僕がチームを活性化させたいと考えています」 ◆ア・ラ・カルト☆初詣 友人と地元の神社に出かけた。おみくじを引いて大吉。「去年は末吉だったのに、こうしてプロサッカー選手になれました。大吉が出た今年はもっといい年になると思います」 ☆映画鑑賞 好きなのは「ハリーポッター」シリーズで、繰り返して何度も鑑賞している。シリーズの中には10回くらい見た作品もあるという。「魔法が使えるっていいですよね」 ☆最近買った高価な物 トヨタ車を購入したばかりで、現在行われている鹿児島・指宿キャンプ(2月5日まで)終了後に納車される。「それが楽しみなので、キャンプも頑張れます(笑)」 ◆プロでも十分通用流通経大・中野雄二監督の橋口評「体格に恵まれていて、しかも左利きですから、あんまりいない希少価値と言える存在です。パスのセンスもありますし、期待値は高いです。ゲームを読む力や相手との駆け引きの部分をこれからもっと育んでいけば、プロでも十分に通用すると思います」 <橋口拓哉(はしぐち・たくや)> 1994(平成6)年9月27日生まれの22歳。宮崎県川南町出身。190センチ、83キロ。川南町立多賀小2年のときに地元のFC尾鈴でサッカーを始めた。川南町立国光原中から宮崎日大高へ。高校時代の最高成績は県準優勝で、全国大会には進めなかった。流通経大では最終年度の秋にようやく出番を得たものの、すぐに右膝内側付近を故障し、関東大学1部リーグの出場は4年間で先発3戦を含む計4試合にとどまった。今季からJ1柏でプレーする。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。 PR情報
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