宇宙輸送船「こうのとり」 宇宙ごみ除去の実験へ

宇宙輸送船「こうのとり」 宇宙ごみ除去の実験へ
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国際宇宙ステーションに物資を届ける役目を終えた日本の宇宙輸送船「こうのとり」の6号機が日本時間の28日未明、国際宇宙ステーションから切り離されました。「こうのとり」は、これから1週間、深刻化する「宇宙ごみ」を取り除くために開発中の新しい技術の実験に臨みます。
先月9日に打ち上げられた日本の宇宙輸送船「こうのとり」の6号機は、日本製のリチウムイオン電池や宇宙飛行士の食料など、およそ6トン分の物資を、無事、国際宇宙ステーションに届けました。

輸送を終えた「こうのとり」は、日本時間の28日午前0時45分ごろ、ロボットアームを使って国際宇宙ステーションから切り離され、単独での飛行を再開しました。

「こうのとり」は、これから1週間、深刻化する「宇宙ごみ」を取り除くために開発中の新しい技術の実験に臨みます。

実験は、宇宙空間に金属製のワイヤーを700メートル伸ばし電流を流すというもので、地球の磁場と影響しあうことで、進行方向とは逆方向のブレーキをかけるような力を得ることを目指しています。

JAXAでは「宇宙ごみ」にワイヤーを取り付け電流を流すことでスピードを落とし、大気圏に落下させて燃やすという世界初の技術を2020年代半ばまでに実用化したいとしています。

使い終わったロケットや人工衛星などの「宇宙ごみ」は、運用中の人工衛星などに衝突しないか大きな脅威となっていて、今後の宇宙開発を安全に進めるためにも問題を解決できる技術の開発が重要になっています。

宇宙ごみは大きな脅威に

「宇宙ごみ」は、秒速8キロという弾丸の10倍以上の猛スピードで地球の周りを回り続けています。JAXAによりますと、アメリカ軍が地上から行った観測で確認している大きさが10センチ以上の「宇宙ごみ」は2万個以上に上っています。また、大きさが1ミリ以上の「宇宙ごみ」は、1億個を超えると推定されているということです。こうした膨大な数の「宇宙ごみ」は、私たちの生活に欠かせない現役の人工衛星や宇宙船に衝突しないか大きな脅威となっています。

実際、2009年には宇宙ごみとなったロシアの衛星が運用中のアメリカの通信衛星に衝突したほか、2011年には国際宇宙ステーションに宇宙ごみがぶつかる可能性があるとして、当時、長期滞在していた日本人宇宙飛行士の古川聡さんが宇宙ステーションにドッキングしている「ソユーズ宇宙船」に緊急避難する事態も起きています。

宇宙開発をめぐっては、格安な超小型衛星の登場などで民間企業の関心もこれまで以上に高まっていますが、専門家は「宇宙ごみ」の問題を解決できなければ、今後、宇宙開発を安全に進めることが難しくなると指摘しています。

宇宙ごみの問題に詳しい九州大学の八坂哲雄名誉教授は「このまま宇宙ごみが増え続ければ、地球のまわりに宇宙ごみが大量に充満して、新しい人工衛星を打ち上げてもすぐに衝突され壊れてしまうおそれがある。人が乗る宇宙船は、とても危なくて打ち上げられなくなるという事態も考えられる」と話しています。そのうえで、今回、「こうのとり」で行われる実験について、八坂名誉教授は「世界でも初めての実験で非常に期待している。実験がうまくいき、実用化につながることを期待している」と話しています。